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演舞に込めた想いを全力で届ける──岐阜大学よさこいサークル「騒屋」

岐阜大学よさこいサークル「騒屋」は、夏に名古屋で開催される日本最大級のよさこい祭り「にっぽんど真ん中祭り(どまつり)」のファイナル出場を目標に活動している団体です。週2回の練習を重ね、真夏の炎天下の中でも仲間と声を掛け合いながら演舞を磨いています。

3年前にはファイナル出場を果たし、動画審査部門でも実績を残してきました。未経験からスタートするメンバーが大半を占める中で、どのようにチームをつくり、観る人の心を動かす演舞を生み出しているのでしょうか。

今回は代表を務める小松宙翔さんに、騒屋の活動内容や組織づくりの工夫、そして「演舞に込めた想いを全力で届ける」という想いについてお話を伺いました。

 

 

——サークルの概要について教えてください。

 

私たち「騒屋」は、夏に名古屋で開催される「にっぽんど真ん中祭り」のファイナル出場を目標に活動しているよさこいサークルです。練習の頻度は週2回ほどで、8月末の本番に向けて準備を進めています。暑い時期の開催になるため、熱中症対策なども工夫しながら、みんなで団結して取り組んでいます。

「にっぽんど真ん中祭り(通称:どまつり)」は、高知県や北海道のよさこい祭りに並ぶ日本有数の大規模なよさこい祭りです。全国から多くのチームが集まり、名古屋市内のさまざまな会場で演舞をすることはもちろん、電車で移動しながら演舞を行うこともあります。

 

私たちの実績としては、以下のとおりです。

 

2021年:ファイナル出場
2024年:「テレどま」(動画審査部門)にてセミファイナル進出
2025年:「テレどま」(動画審査部門)にてファイナル進出

 

2026年現在は、1・2年生合わせて約60人で活動しています。多くのメンバーが大学からよさこいを始めており、未経験からスタートしていますが、踊る楽しさや、本番で評価される喜びを大切にしながら活動しているサークルです。

 

 

——入部の決め手となる要素や、よさこいの魅力は何ですか?

 

メンバーの多くは、大学に入るまでよさこいを知らなかったそうです。だからこそ「何だろう?」という興味から入る人が多いです。特に、演舞で着る衣装の華やかさやかっこ良さが入部のきっかけになる要素の一つです。

初心者から入ったとしても、続けていく中で感じるのが、踊る楽しさです。よさこいの魅力は、言葉が通じなくても踊りで気持ちを伝えられるところです。また、演舞中に届く観客の「すごい」という声や表情も、私たちのやる気や大きなモチベーションの一つになっています。練習は本当にきついですし、暑さの中で「やめたい」と思う人もいると思います。それでも、本番で自分たちの演舞が評価される喜びは大きく、よりたくさんの人を感動させたい——その想いで日々練習に励んでいます。

 

——騒屋ならではの強みを教えてください。

 

私たちの強みは「世界観づくり」です。ダンス経験者が多いわけではないからこそ、技術だけで勝負するのではなく、見せ方やストーリー性に強くこだわっています。社会人チームも多い中で、どうすれば観ている人の感情を動かせるかを常に考えています。

たとえば、2024年は岐阜県下呂市の龍神伝説をテーマに、力強さを前面に出した作品をつくりました。「かっこいい」という方向でまず心を動かすことを意識しました。2025年は岐阜県本巣市の人形浄瑠璃をモチーフに、ホラーテイストを取り入れた演舞に挑戦しました。少しゾワッとするようなストーリー性を持たせ、「面白いけれどどこか深い」と感じてもらえるような作品を目指しました。2025年は白い仮面を取り入れた演出も行い、「怖い」「周りと違って面白い」といった感想をSNSでいただきました。そうした声をいただけることも、世界観づくりが伝わっている証だと感じています。

また、どまつりの審査項目には「地元性」も含まれています。私たちは「地元を元気に明るくしたい」というスローガンを掲げており、岐阜の下呂市や本巣市など、地元ならではの文化を学び、それを演舞に落とし込んでいます。地域の文化を広げていくことも、騒屋の大きな強みの一つです。

 

 

——作品はどのように制作しているのですか?

 

作品制作は、まずテーマ決めから行います。その後、毎年楽曲を制作してくださる作曲家の方に希望を伝え、一緒に曲を作っていきます。曲が完成してきた段階で、振付や構成、同時に歌詞の内容や見せ方についてメンバー同士で意見を出し合い、その世界観に合う衣装も並行して考えていきます。制作の中で一番悩むのは、テーマ決めです。2025年も「万人受け」「世界観を尖らせる」「ホラーテイスト」など、メンバー同士でかなり議論しました。「岐阜らしさとは何か」というところから考え直すこともありました。

意見がぶつかることもありますが、最終的には多数決だけで決めるのではなく、まず一人ひとりの意見をしっかり聞き、その上で全員が納得できる形を目指しています。特にテーマのような作品の根本部分は、投票なども活用しながら、できるだけ方向性を揃えた上で制作を進めるようにしています。

 

——代表として組織づくりで工夫していることを教えてください。

 

組織づくりで意識しているのは、「自分ひとりで全員を引っ張ろうとしないこと」です。60人規模の団体になると、自分ができることには限界があると感じています。まずは自分が全員を動かすのではなく、主要なメンバーを動かし、そのメンバーがさらに周りに声をかけて広げていく、という形を大事にしています。ピラミッド型で上から統率するというよりも、「縁」を広げていくイメージです。自分の想いを共有したメンバーが同じ言葉で周囲に伝えてくれれば、最終的には自分の想いが団体全体に広がっていく。そうした形を目指しています。

正直、最初は「一人のリーダーにみんなが従う組織」を作ろうとしていました。しかし、どう人を動かすかを考え続けることが一番苦しかったです。そんなときに先輩やコーチから、「自分が動かそうとするのではなく、周りを動かしなさい。周りが同じ気持ちになれば、組織は自然と動く」と教えていただきました。その言葉をきっかけに、“縁を広げる”という考え方に切り替えられたことが、今の組織づくりの軸になっています。

 

——騒屋での経験は社会でどう活きると思いますか?

 

ここでの経験が一番活きると感じているのは、「切り替え力」だと思います。私たちは、練習前は自由に過ごしていますが、いざ演舞が始まると一気に目の色が変わります。なぜなら審査の場では、学生であっても社会人チームと同じ舞台に立つという覚悟を持ち、力強いところは力強く、表情や動きまで細かく意識して踊る必要があるからです。その“切り替え”の力は、社会に出てからも活きると感じています。普段は和気あいあいとした雰囲気でも、本番や大事な場面ではしっかりと結果を出す——その姿勢は、どんな環境でも求められる力だと思います。

 

 

——今後の目標を教えてください。

 

どまつりで「学生チームの時代を取り戻す」ことが大きな目標です。コロナ禍以前は、学生チームがファイナルに進出することも多くありました。しかし、コロナを経てチーム数や学生の参加人数も減り、現在はファイナルの多くを社会人チームが占めている状況です。だからこそ、もう一度学生チームが本気で上位を目指し、結果を残せる時代を取り戻したいと考えています。見せ方や道具、世界観の完成度でも引けを取らない作品をつくり、「学生でもここまでできる」と証明したい。その想いを胸に、これからも一つひとつの演舞を磨き続けていきたいです。

 

——最後に応援してくれる方々にメッセージをお願いします。

 

いつも応援してくださっている皆さま、本当にありがとうございます。私たちは、社会人チームにも負けない演舞を目指して日々活動しています。学生だからこそ出せる熱量や勢い、そして本気の想いを、作品に込めています。金銭面や準備の面で大変なこともありますが、それでも「見てよかった」と思っていただける演舞を届けたいという気持ちは変わりません。

もし少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ一度、私たちの演舞を生で見ていただきたいです。きっと“よさこいってこんなに面白いんだ”と感じていただけると思います。これからも岐阜を元気に、明るくできるよう全力で踊り続けます。引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。

 

 

日本最大級の舞台を本気で目指す彼らの裏側には、全員で納得するまで話し合う姿勢と、“縁”を広げる組織づくりがありました。炎天下でもやり抜く忍耐力、本番で力を発揮する切り替え力。これらはきっと社会に出ても大きな武器になるはずです。

本気で挑戦を続ける彼らのこれからが、ますます楽しみです。

 

執筆:青木千奈(株式会社Koti)