“挑戦”も“運営”も全部自分たちで。学生主体で磨く“チーム力”──佐賀大学アメリカンフットボール部TOMCATS
1978年に設立された佐賀大学アメリカンフットボール部「TOMCATS(トムキャッツ)」は、“学生主体”を軸に、少数精鋭で日々の練習に取り組むチームです。
自分たちで考え、運営し、成長し続ける組織になるまでに、どのような挑戦があったのか。
今回は、主将の島内昭弥さんにお話を伺い、活動内容や普段の練習で大切にしていること、そして今後の目標についてお伝えします。


——部の概要や練習日程について教えてください。
私たち佐賀大学アメリカンフットボール部は「TOMCATS(トムキャッツ)」という愛称で活動しています。チーム名は「戦闘機」に由来し、1978年の創部当時から使われてきました。他大学からもこの名前で親しまれており、クラブの象徴的な存在になっています。
普段は佐賀大学野球場を拠点に活動しており、練習は火・水・木曜日の18時30分〜21時30分、土日は9時〜12時に実施しています。
直近の戦績は以下のとおりです。
・2023年度秋リーグ2部2位
・2024年度秋リーグ2部4位
今後の目標としては、秋リーグでの上位進出、そして1部昇格を掲げています。
——部員構成や、メンバーの特徴について教えてください。
現在の部員数は、選手とマネージャーを合わせて1年生17名、2年生8名、3年生7名、4年生5名の合計37名です。特に2025年は1年生が多く加入してくれたこともあり、例年以上に活気があります。マネージャーは各学年に2名ずつ、1年生は7名と、運営面でもしっかり支えてくれています。
メンバーの特徴としては、ほとんどが大学からアメフトを始める“初心者”だという点です。経験者は年によって1〜2名いる程度で、ほとんどの部員が大学からアメフトを始める“ゼロスタート”です。私自身も中高はテニス部で、大学で新しいことに挑戦したいと思いアメフト部の新歓に参加したのが入部のきっかけです。経験者との差が少なく、全員が同じスタートラインに立てるスポーツだからこそ、仲間と一緒に成長できる実感があります。人数が多くないので試合に出られる機会も多く、経験が積める点も大きな魅力です。
メンバーの経歴を見ると、これまで取り組んできたことも本当にさまざまです。野球・サッカー・バレーなどの運動部出身者もいれば、高校では文化部だったり、工業高校でロボット制作に打ち込んでいたりするメンバーもいます。だからこそチーム内にはさまざまな個性や魅力があり、その幅広さが私たちの強みになっています。
——佐賀大学アメリカンフットボール部は、“学生主体”の運営が特徴と聞きました。練習で工夫しているポイントはありますか?
私たちは、基本的に学生が中心となってチームを運営しています。時々、OBの方が来てアドバイスをいただく時もありますが、日々の練習メニュー作成や相手チームの分析(スカウティング)などは、自分たちで考えて実行しています。特にスカウティングは、チーム全員で行うことを意識しています。試合に出るメンバーが固定されにくいからこそ、誰が出ても相手の特徴を理解している状態をつくることを大切にしています。
練習づくりで特に意識しているのは、「主体的に課題を見つけ、修正すること」です。

試合や合同練習が終わった後は必ずミーティングを行い、良かった点・改善すべき点を全員で共有します。そのうえで、「次の練習ではどの動きを重点的に修正するか」「この相手に勝つには何が足りないか」などを自分たちで決め、練習メニューに落とし込んでいます。
——チーム内の役職や役割について教えてください。
チームとしての役職と運営としての役職を設けています。
チームの役職としては、主将・副将をはじめ、各ポジションのリーダーを置き、チーム全体の方向性を学生同士で共有できるようにしています。
運営面では以下の役割があります。
・会計
・SNS運用
・協賛担当
・備品管理
部の運営を支える仕事は、すべて学生で分担しています。人数が多いチームでは専門スタッフが担うことも多い部分ですが、専門スタッフに任せるのではなく、自分たちの手で回しているからこそ、一人ひとりが「自分の担当を最後までやり切る」という意識を持てるのが強みです。
チーム面・運営面の両方で多くの役割が存在し、全員がどこかでチームに貢献する仕組みになっています。学生だけで運営する難しさもありますが、その分“主体性”や“自分で考えて動く力”が自然と鍛えられる環境だと感じています。
——主将として大切にしていることは何ですか?
1番大切にしているのは、「まず自分が率先して行動すること」です。練習の雰囲気づくりや姿勢はチーム全体に大きく影響します。自分がやっていないことを、人にだけ求めることはできないと思っています。だからこそ、声を出して雰囲気をつくることや、誰よりも手を抜かない姿勢を見せることを意識しています。小さな積み重ねですが、主将である自分が真っ先にやることで、他のメンバーもついてきてくれると感じています。

また、チーム内に悩んでいるメンバーや、モチベーションが下がっているメンバーがいた時には、必ず話す時間をつくるようにしています。話さずにそのままにしてしまうと、小さなズレが大きな溝になり、チーム全体の雰囲気にも影響してしまいます。
主将という立場がある一方で、自分もメンバーの一員として、自分一人で抱え込まず、必要に応じて先輩や後輩、仲の良いメンバーにも協力してもらうことも意識しています。「一人も取り残さないチームをつくること」。これが主将として目指すゴールです。
——大学生活で部活が与えてくれたものを教えてください。
「仲間」「成長」「経験」の3つです。
まず仲間について、部活は一緒に過ごす時間が本当に長く、練習後にもメンバー同士の交流があり、日常のほとんどを共有しています。試合に勝って喜ぶ日もあれば、うまくいかず悔しい日もある。そのすべてを同じ目標に向かって並走できる存在は、大学生活で何よりも大きな財産になりました。
成長という面では、初心者が多いチームだからこそ、全員が同じスタートラインに立って努力できる環境があります。最初は何もできなかった仲間が、練習を重ねて試合で活躍するようになる。その姿を見るたびに、「自分も負けていられない」と背中を押されてきました。
そして経験。部員数が多いチームでは分担されるような役割も、私たちの場合は一人ひとりに回ってきます。練習メニューの調整、相手チームの分析、試合運営の段取りなど、主体的に動かないとチームが回らない。“責任を持って役割を担う”という経験は、社会に出た後も必ず役立つと感じていますし、部活を通して“主体的に動ける力”が身についたのは、この部活のおかげです。
——最後に、応援してくださる方々にメッセージをお願いいたします。

いつも佐賀大学アメリカンフットボール部TOMCATS(トムキャッツ)を応援してくださりありがとうございます。皆様の支えや温かい応援が日々の練習や試合での大きな力になっています。今後も“勝利”という形で皆様に恩返しができるよう、チーム一丸となって活動に取り組んでまいります。引き続きご声援のほどよろしくお願いいたします。
学生主体で挑戦を重ねる佐賀大学アメリカンフットボール部TOMCATS(トムキャッツ)。自ら考え、運営し、仲間とともに前へ進む姿勢は、競技を越えて未来を切り開く力へとつながっていくはずです。その一歩一歩の積み重ねが、これからどんな結果につながっていくのか。TOMCATSの今後の活躍から目が離せません。
執筆:青木千奈(株式会社Koti)