9割未経験、それでも掴んだ8年ぶりの決勝――チアリーディング部Hearties
部員の約9割が大学から競技を始める未経験者。それでも2024年度の全日本選手権で約8年ぶりの決勝進出を果たしたのが、チアリーディング部Heartiesです。人を持ち上げたり飛ばしたりする「スタンツ」という技を伴う競技だからこそ、仲間への信頼とコミュニケーションを何より大切にしています。応援団のような他競技の応援ではなく、自分たちの演技そのものを追求する競技志向の団体でもあります。中山由菜さんに、未経験者主体のチームづくりと、体育会系でありながら独自の距離感を保つ組織文化について伺いました。

――チアリーディング部Heartiesについて教えてください。
12月に開催される全日本選手権での決勝進出を、1年間を通しての最終目標に掲げています。応援団のように他の部活動を応援する活動ではなく、自分たちが大会やイベントに出演し、演技そのものを披露することがメインの活動です。チアリーディングは、チアダンスの要素に加えて、人を持ち上げたり飛ばしたりする「スタンツ」と呼ばれるアクロバットな技が加わる競技です。人を応援するという根底にある部分はチアダンスと共通していますが、そこに何を組み合わせるかが違うと理解しています。
――直近の成績を教えてください。
2024年度の全日本選手権で、約8年ぶりに決勝進出を果たしました。全日本選手権には毎年およそ20チームが出場し、決勝に進めるのはおよそ10チーム前後です。優勝できれば理想ですが、まずは決勝に進出すること、そして自分たちが納得できる演技を披露することを目標にしています。

――決勝進出のために、今一番必要なことは何ですか。
チーム力です。チアリーディングは仲間を4メートルほどの高さまで持ち上げる場面もある競技で、信頼関係がなければ絶対に成立しません。毎年、大会前の課題として挙がるのがコミュニケーション不足です。コミュニケーションが不足すると、チームの雰囲気だけでなく、信頼関係という面でもどこか足りない空気になってしまいます。だからこそ、明るい雰囲気で練習できることを大切にしています。
――コミュニケーションを大切にするために、意識していることはありますか。
「挨拶」と「感謝」を第一にすることを毎年話し合っています。練習前後の挨拶から、コミュニケーションは始まると考えています。使わせていただいている体育館や機材に対しても、きちんと感謝の気持ちを持つことを大切にしています。こうした基本的なことを積み重ねた先に、信頼関係が生まれると思っています。練習中も学年を問わず意見を言い合える環境をつくることで、大会が近づいて余裕がなくなる時期でも、前向きな空気を保てるようにしています。

――部員の9割が未経験からのスタートだと伺いました。
他大学では、高校などでチアリーディングを経験した人がもう一度大学から始めるケースも多いのですが、私たちの部は経験者がほとんどおらず、全員がほぼ同じスタートラインから挑戦できる環境です。もともと持っている筋力やポテンシャルの差はあっても、経験の有無による差がほとんどないことは、大学から新しい競技に挑戦しやすい環境として、私たちの強みだと考えています。未経験からの成長を支えているのは、入部した時点ですでに1年以上の経験を積んでいる先輩の存在です。後輩を指導するときは、まず安全を第一に考え、そのポジションを経験している人にしか分からない感覚を後輩から丁寧にヒアリングすることを大切にしています。
――未経験からでも成長できる部員が多いのはなぜだと思いますか。
負けず嫌いで向上心の高い部員が多いことが理由の1つだと思います。競技経験がなくても、先輩が上を目指す姿を見て、自分も頑張りたいと感じてついてくる後輩は多いです。練習動画をLINEのオープンチャットに投稿し、過去の自分や先輩の動画と見比べながら課題や改善点をコメントし合う「研究ノート」という文化も、代々受け継がれています。同期同士でもこうした投稿をする部員がいて、その姿を見ると成長への意欲を感じます。
――ハワイでの活動についても教えてください。
毎年、ハワイと日本の文化交流を目的とした「ホノルルフェスティバル」に出演しています。よさこいやフラダンスなど、両国のさまざまな文化が集まるイベントです。4年生の引退時期は基本的に12月の全日本選手権後ですが、ハワイでの出演を最後の活動にしたいという部員がいれば、一緒に演技をする方針を取っています。

――活動を通じて、学んだことを教えてください。
大学生活の中では友人関係が希薄になりがちですが、同期や先輩後輩と深く関わる時間を持てたことが大きかったです。1人の人間として成長できる機会を得られたことと、コミュニケーション能力の向上が、最大の学びだと感じています。高校まではできなかった青春を、この部活を通して味わえていると思います。
――資金面での課題はありますか。
三脚やポンポンといった消耗品の買い替えに悩んでいます。練習動画を撮る三脚は使用頻度が高く、限られた予算の中でなるべく機能が良く丈夫でコストの低いものを選んでいますが、それでも強度に限界があり、何度も買い替えが必要になります。ポンポンも使い込むうちにボリュームが失われていき、大会で他チームのふさふさとしたポンポンと並ぶと見劣りしてしまうこともあります。協会に定められたコーチング費用などが予算の大半を占めていて、道具の購入に回せる予算が限られてしまうのが実情です。以前、支援企業を探すイベントに参加したこともありますが、実績が十分ではないという理由で支援を得るには至りませんでした。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
体育会系ではありますが、礼儀を大切にする一方で、オンとオフをしっかり分けている点が私たちらしさだと思っています。廊下ですれ違うたびに後輩から挨拶しなければいけないような一般的な体育会系のイメージとは少し違い、オフのときも先輩から後輩に声をかけて距離を縮めるようにしています。人としての礼儀を大切にしながらも、少し上下関係が厳しいイメージを持たれがちな体育会系の中で、独自の雰囲気があるチームだと感じています。実力があるかどうかよりも、熱中して取り組んでいることの方が伝わる魅力だと思うので、ぜひ活動の様子を見ていただけたら嬉しいです。
未経験者が9割を占めながら、約8年ぶりの決勝進出を果たしたHearties。「挨拶」と「感謝」という基本を積み重ねて信頼関係を築き、先輩から後輩へと受け継がれる「研究ノート」の文化で技術を磨いてきました。体育会系でありながらオンとオフの距離感にこだわる姿勢は、上下関係の厳しさだけが体育会系の魅力ではないことを教えてくれます。
チアリーディング部Hearties
部員の約9割が大学から競技を始めた未経験者で構成される。12月開催の全日本選手権での決勝進出を目標に活動しており、2024年度の大会では約8年ぶりに決勝へ進出した。挨拶と感謝を軸にした信頼関係づくりと、練習動画をもとに改善点を共有し合う「研究ノート」の文化を大切にしている。毎年、ハワイと日本の文化交流イベント「ホノルルフェスティバル」にも出演している。