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英語で社会と向き合う学びは、どのような未来につながるのか?——日本大学商学部ルーク・ローレンスゼミ

大学のゼミは、専門知識を深める場であると同時に、自身の価値観や将来像と向き合う時間でもあります。日本大学商学部のルーク・ローレンスゼミ(通称:ルークゼミ)は英語と社会正義というテーマを軸に、学生たちが社会課題を自分ごととして考え、言葉にし、発信する力を磨いてきました。SDGs、社会階層の格差、ギグワークといった現代的なテーマを、英語で学び、議論し、発表します。その過程で学生たちは、語学力だけではなく、課題発見力や論理的思考力、そして他者と協働する姿勢を身につけています。今回は、日本大学商学部3年生でルークゼミに所属する金子優さんに、ゼミの成り立ちや学びの特徴、学生たちの成長、そして今後の展望についてお話を伺いました。

 

——ゼミの概要について教えてください。

 

ルークゼミの正式名称は「ルーク・ローレンスゼミ」で、日本大学商学部に存在するゼミです。商学部生のみが所属でき、2年生から参加できます。現在は1期生が6名、2期生が9名の合計15名で活動しています。年間で4単位を取得することができ、4年生になると卒業論文として6単位が与えられます。少人数制のため、一人ひとりが発言する機会も多く、ゼミの時間はかなり密度が高いと感じています。

 

 

——ルークゼミの特徴はどのようなところにありますか?

 

一番の特徴は、「社会正義(ソーシャルジャスティス)」をテーマに、世界で起きている社会課題を英語で学んでいる点だと思います。SDGsや社会階層の格差、資本主義による不平等など、どうすれば世の中のギャップを埋めることができるのかを軸に、世界各地の事例を扱っています。商学部でここまで社会課題に踏み込むゼミは珍しいと感じていますし、またその内容を英語で議論することで、単なる知識としてではなく、自らの考えとしてより深く落とし込める感覚があります。

 

——印象に残っている学習テーマはありますか?

 

特に印象に残っているのは、ギグワーク(雇用関係を結ばずに単発・短時間で仕事を受注する働き方)をテーマにしたプレゼンです。Uber Eatsや出前館などの配達員を例に、彼らの社会的地位や福利厚生の問題を取り上げ、どうすればより公平な仕組みを作ることができるのかを考えました。元々ゼミのメンバーにそのようなアルバイトをしているメンバーがおり、かなりリアルに考えることができました。最終的には、中国で行われているビジネスモデルを参考に、日本に応用する形の提案を英語でまとめ、学部内のプレゼン大会に出場しました。その結果、英語部門で最優秀賞をいただくことができました。大会には5グループほどが参加し、夏休みごろから11月の本番に向けて、準備を進めました。私たちのチームは、中国人留学生を含む3名で構成されており、日中の制度比較や、数字を用いた具体的な提案が評価されました。英語で社会課題を論理的に説明し、ビジネスとして成立する形に落とし込む経験は、自分にとってとても大きな自信となりました。

 

——ゼミに所属して英語力は伸びましたか?

 

正直なところ、かなり伸びたと感じています。これまで日常生活ではアルバイト先の海外のお客様への対応をする際に英語を話す機会があったのですが、以前と比較して、リスニングや簡単な会話であれば自然に対応ができるようになりました。ゼミでは基本的に英語で授業が進むため、英語を必ず話す環境があります。ルーク先生はイギリス出身のため、アメリカ英語ではなくイギリス英語を教えてくださいます。英語を使用しながら、少人数でグループディスカッションを行うことが中心に進んでいくため、受け身になる時間はほとんどありません。先生の質問も鋭く、答えをそのまま求められるのではなく、なぜそう思ったのかや他の観点から見るとどうか、など深掘りされるため、思考力も鍛えられているように感じます。

 

 

——ゼミ生の雰囲気やメンバー構成について教えてください。

 

ゼミ生のほとんどは、英語を本気で学びたいという理由で入っています。ただ、英語力を伸ばすことが目的というよりも、英語を使って何を考え、どう発信するかということに関心を持っている学生が多い印象です。そのため、社会問題というテーマに触れる中で、物事を多面的に捉える視点や、自分なりの意見を持つ姿勢が自然と育まれていきます。ゼミには中国人留学生や、オーストリア人の留学生も所属しており、発音を指摘し合ったり、一つの発言や表現であってもそれぞれの地域ではどのように受け取られるのかという文化の違いについて話したりすることも日常的です。また、ゼミの雰囲気や非常にフラットで、学年や経験の差に関係なく意見を出し合える空気があります。授業中のディスカッションはもちろん、授業外でも食事会を開いたり、プレゼン準備のために集まったり、忙しい時期にはZoomで繋いで意見交換をするなど、自然な形で交流が生まれています。こういった日常的な関わりがあるからこそ、お互いに刺激を受けながら成長できるゼミになっているように感じています。

 

——就職活動や将来についてはどのように考えていますか?

 

ゼミでの経験は、就職活動においても大きな強みになると感じています。特に英語で自らの考えをまとめ、相手に伝えるという経験は、他の学生にはなかなかないものだと感じています。プレゼン大会に向けて取り組んだテーマやプロセスは、そのまま面接などの機会で語ることのできる具体的なエピソードになっていると思います。実際に、社会課題をテーマにしたプレゼンは、単に英語力を競うのではなく、「なぜその問題に関心を持ったのか」「どんな解決策を考えたのか」「それはビジネスとして成立するのか」といった点まで深く掘り下げて考えました。こうした思考の積み重ねは、論理的思考力や課題解決力の向上につながっているように感じています。

また、ゼミではディスカッションの場が多く設けられているため、自分の意見をその場で言語化し、相手の意見を受け止めながら議論を進める力も身につきました。これは面接の場だけではなく、将来どのような職業についたとしても必要になる力だと思います。英語で議論を行う分、最初は戸惑うこともありましたが、その分、完璧ではなくてもまずは伝えてみるという姿勢が自然と身についていきました。将来についても、ゼミでの学びを通して視野が広がったと感じます。外資系企業や海外と関わる仕事に興味を持つようになったメンバーも多く、海外で働くことやグローバルな環境でビジネスに関わりたいといった点を考えるきっかけにもなっています。

 

 

——卒業論文では、どのようなテーマを取り扱う学生が多いですか?

 

卒業論文のテーマは限定されておらず、学生それぞれの関心に基づいて、かなり幅広いテーマが扱われています。ゼミ全体の軸としては社会正義がありますが、必ずしもその枠に収める必要はなく、自分が本当に向き合いたいテーマを深掘りできます。実際には、貧困や格差、労働環境といった社会課題を扱う学生もいれば、AIやテクノロジーが社会に与える影響をテーマにする学生、さらには独身男性の生き方や価値観といった、身近な社会現象を切り口に研究を進める学生もいます。商学部という枠組みの中で、経済やビジネスの視点と社会問題を結びつけて考える論文が多い印象です。ルークゼミでは、テーマの設定の段階から先生との対話の機会があり、関心や問題意識を言語化しながら、なぜこのテーマに取り組むのかという動機を重要視しながら研究を進めていきます。その過程を通して、自らの価値観や視点を見つめ直す機会にもなっているように感じます。

 

——今後、ゼミとして取り組んでいきたいことはありますか?

 

個人的には企業との連携や交流の機会をもっと広げていきたいと考えています。ルーク先生は、日本企業で語学コンサルティングをしていた経験もあるため、企業との接点を一緒に模索してくださる可能性もあると考えています。社会課題をテーマに英語で議論し、アウトプットできる学生は、企業にとっても価値を感じていただけるのではないかと感じているため、実践的な学びの場を一緒に作っていけたら嬉しいです。

英語というツールを使いながら、社会と真剣に向き合うルークゼミ。学生たちが積み重ねてきた学びは、ゼミの教室にとどまらず、これから先の社会や企業との新しい接点を生み出していくはずです。

 

 

ルーク・ローレンス教授

日本大学商学部准教授。専門は批判的応用言語学及び言語教師アイデンティティ研究。言語教育と社会正義の関係性に着目し、英語教育を通じた思考力・表現力の育成に取り組んでいる。ゼミではSDGsや社会格差といった現代的なテーマを題材に、英語で考え、議論し、発信する実践的な学びを提供している。