環境の不利を超えて、西日本からカーリングを広げる理由ー京都大学カーリングサークル「Brush Up!!」
カーリングと聞くと、北海道や東北の競技というイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、西日本にも本気でカーリングに挑み続ける学生たちがいます。京都大学カーリングサークル「Brush Up!!」は、西日本エリアを拠点に、全国大会を目指して活動する学生主体のカーリングサークルです。専用リンクの少なさや遠征費といった制約を抱えながらも、学生主体で試行錯誤を重ね、競技力向上に向き合ってきました。今回は、京都大学カーリングサークル「Brush Up!!」会長の野上奏人さんに、チームの成り立ちや活動環境、大切にしている考え方、そして西日本から全国を目指す思いについてお話を伺いました。
——サークルの概要を教えてください。
京都大学カーリングサークル「Brush Up!!」は、西日本では数少ない大学カーリングチームとして活動しています。主な活動拠点は京都市内のスケートリンクで、週1回のオンアイス練習を中心に、ミーティングや映像分析なども行っています。西日本にはカーリング専用のアイスリンクがほとんどなく、公式戦と同じ条件で練習することは簡単ではありません。そのため、年に数回、軽井沢や北海道などへの遠征を行い、実戦形式での練習や合宿を実施しています。制約がある中で、今できる最大限を考え続けることが私たちのスタイルです。

——部員構成や、メンバーの特徴を教えてください。
部員は京都大学の学生を中心に、他大学の学生も含めて構成されています。競技経験者はほとんどおらず、メンバーの大半が大学入学後にカーリングを始めています。バックグラウンドは様々で、高校まで別のスポーツに取り組んでいた人もいれば、大学で初めて本格的な競技に挑戦する人もいます。共通しているのは、「大学生活の中で何かに本格的に打ち込みたい」という思いです。学年や経験に関係なく意見を出し合いながら、チームを作っていく雰囲気が今の組織の特徴だと感じています。
——未経験からカーリングを選ぶ人が多い理由は何でしょうか?
一つは、大学からでも全国を目指せる競技であることです。カーリングは技術や戦術、コミュニケーションの要素が大きく、単純に競技歴の長さだけでは結果が決まらない奥深さがあります。
その点に魅力を感じて入ってくる人が多いです。もう一つは、競技を通してチームで考え、対話しながら進めていく文化です。一投一投に戦略があり、全員で状況を共有しながら意思決定をしていきます。このプロセスにおもしろさを感じ、この競技なら本気になれると思ってくれる人が多いように感じます。

——チームとして大切にしている価値観は何ですか?
私たちが大切にしているのは、「考え続けること」と「更新し続けること」です。環境面ではどうしても不利な部分がありますが、それを理由にするのではなく、この条件でどのように勝ちに近づくかを考え続けることを大切にしています。サークル名の「Brush Up!!」にも、常に自分たちをアップデートしていくという意味を込めています。結果だけではなく、そこに至るまでの過程をチーム全員で共有し、次に繋げていく姿勢は代々受け継がれているものです。

——年間のスケジュールについて教えてください。
私たちの年間の活動は、大きく分けて
①基礎づくりの期間、②実践経験を積む期間、③成果を試す期間の三つで構成されています。
新年度が始まる4月は新歓を中心に活動し、5月から本格的に新体制での練習がスタートします。春から夏にかけては、オンアイス練習に加え、戦術理解やコミュニケーション力を高めるためのミーティング、試合映像の分析にも力を入れています。西日本では氷上での練習機会が限られているため、限られたオンアイス練習を最大限に活かすためのオフアイス準備を重視している点が特徴です。
夏から秋にかけては、競技力を一段引き上げるための重要な時期になります。この時期には、軽井沢を中心とした合宿や遠征を行い、公式戦に近い環境で集中的に練習を行います。実際の試合を想定した練習や、他大学・社会人チームとの練習試合を通じて、自分たちの戦術がどこまで通用するのかを確認していきます。
秋以降は、これまで積み重ねてきた取り組みの成果を試す期間です。全国規模の大会や交流試合への参加を視野に入れ、チームとしての完成度を高めていきます。試合後には必ず振り返りのミーティングを行い、良かった点だけではなく、課題も言語化し、次の練習に繋げています。遠征については、単なる試合の場ではなく、自分たちの現在地を知るための重要な機会だと捉えています。西日本では対戦相手や練習環境が限られるため、北海道や関東・中部地方への遠征は欠かせません。移動や費用の負担は大きいですが、その分、全国レベルを肌で感じることができ、チームとしての意識も大きく変わります。こうした年間の活動を通じて、私たちは一過性の結果ではなく、長期的に成長し続けるチームづくりを目指しています。
——全国を目指す上で、現在の課題は何ですか?
一番の課題は、やはり練習環境と資金面です。全国レベルで結果を残しているチームの多くは北海道に拠点を置いており、練習頻度の高さや、安価で質の高いアイスリンクを日常的に確保できる環境に恵まれています。一方で、西日本に拠点を置く私たちは、良質なアイスリンクで練習するために遠征が不可欠であり、時間面・資金面の負担が常にあります。継続的に遠征や合宿を行い、全国レベルのスピード感や精度に触れ続けるためには、安定した資金基盤が必要です。そのため、現在は企業協賛の獲得にも取り組んでいます。具体的には競技の特性や西日本唯一のカーリングサークルという立ち位置を丁寧に伝えながら、ユニフォームやウェアの提供、遠征費の一部負担など、形に残る部分で関わっていただける企業様を探しています。また、協賛を通じて、簡易的に見えて実際は非常に難しくハードなカーリングという競技をより身近に感じていただくために普及活動や体験会を企業様と行うなど、単なる資金提供にとどまらない関係づくりも意識しています。限られた環境だからこそ、自分たちの挑戦の価値を言葉にし、外に向けて発信することを積み重ねることで、競技力向上の土台にしていきたいと考えています。

——最後に、応援してくださる方々へメッセージをお願いします。
私たちは、西日本というカーリングという、カーリングを行う上では決して恵まれているとは言えない環境の中で日々試行錯誤を重ねながら活動を続けています。仲間と共に同じ目標を見据え、厳しい状況にも前向きに向き合うことができるのは、日頃から応援してくださる方々の存在があるからです。特に、全国大会という大きな舞台で北海道の強豪チームに挑むことは、私たち西日本のチームにとって大きな意味を持ちます。そこで結果を残すことができれば、私たちの自信になるだけではなく、西日本全体のカーリングの可能性を広げるきっかけにもなると感じています。これからも簡単な道のりではありませんが、一つ一つの挑戦を大切にしながら、前に進みます。私たちの歩みに共感し、見守り、支えてくださる方々と共に、この挑戦を続けることができれば嬉しいです。今後とも、温かいご声援をよろしくお願いいたします。
限られた環境の中でも、自分たちで考え、選び、前に進んできた「Brush Up!!」。学生主体で挑戦し続けてきた彼らはこれから西日本のカーリングを自らの手で広げていく強い意志を持ち、確かに形になり始めています。彼らの挑戦は、競技の枠を超えて新しい可能性を西日本に残してくれるように感じました。