お問い合わせ

教科書1冊から生まれる「ウィン・ウィン」の仕組み――学生団体STUDY FOR TWO

Uncategorized

大学生から使い終わった教科書を回収し、半額で再販売する。その販売で得た利益の8割以上を、開発途上国の子どもたちの教育支援に充てる。そんな仕組みを全国約40支部、500人以上の学生が活動しているのが、学生団体STUDY FOR TWO(SFT)です。

 

2010年に活動を開始したSFTは、「勉強したいと願うすべての子どもたちが勉強できる世界に」「FOR ME, FOR TWOのボランティアが身近になる世界に」という2つの理念を掲げ、支援を受ける子どもたちだけでなく、教科書を安く買える大学生にもメリットがある「ウィン・ウィン」の関係を大切にしています。今回は、学生代表の田邊愛果さんと、学生副代表の長坂健吾さんに、事業の仕組みや500人規模の組織づくりについて伺いました。

 

 

――STUDY FOR TWOは、どのような団体か教えてください。

 

田邊さん:現在、タンザニアの子どもたちへの教育支援を行っています。大学生から使い終えた教科書を回収して半額で再販売し、その売上を途上国の教育支援に充てるのが活動の柱です。ボランティアというと、支援を受ける側へのメリットが注目されがちですが、SFTは大学生にも教科書を安く買えるという金銭的なメリットを組み込んでいます。誰もが恩恵を受けられる仕組みをつくっている点が、SFTならではの特徴だと考えています。

 

――組織の規模や活動体制について教えてください。

 

田邊さん:私が学生代表、長坂が学生副代表です。全国にメンバーが500人以上いて、全国各地に約40の支部があり、関東が最も多いです。

 

長坂さん:各支部で週1回、10人前後の規模でミーティングを行うのが基本です。回収・販売の施策や振り返りに加え、大学への許可申請や支部内のコミュニケーションを深める役割も担っています。

 

――教科書の回収・販売は、具体的にどのように行っているのですか?

 

長坂さん:回収は、大学内への回収ボックス設置、許可を得た場所で学生に直接呼びかける「露店回収」、メンバー個人のネットワークを通じた回収の3つの形態があります。販売も路地での対面販売に加え、近年はオンラインで予約し、対面で受け取れる仕組みを整えています。回収ボックスは、一目で目的が伝わるデザインを意識し、教科書回収と支援のつながりが一目で伝わるようにしています。

 

フリマアプリなどでも中古教科書を売買できますが、SFTは半額で買える金銭的な価値に加えて、国際支援に貢献できたという自己肯定感も提供できることが強みです。

 

 

――全国500人規模の組織をまとめる上で、大切にしていることを教えてください。

 

田邊さん:メンバー一人ひとりに自分なりの目標を持ってもらいつつ、その先にSFTの理念という軸を置いてもらうことを意識しています。売上金額や回収数といった活動量を示す数字に意識が向きやすいため、現在は、目標を考える際に「支援できた人数」を重視しています。日々の活動の中で、教育の機会を広げるという原点を自然と意識できる構造をつくりたいと考えたためです。

 

長坂さん:500人全員を代表2人だけでマネジメントしているわけではありません。学生代表・副代表だけでなく、事務局や地区代表、各支部の支部長がそれぞれ役割を担い、規模が大きくても各支部まで情報や方針を共有できる仕組みになっています。

 

――長坂さんがSFTに入ったきっかけを教えてください。

 

長坂さん:将来自分の事業や会社を持ちたいと考えていて、そのために必要なスキルが得られると思ったのがきっかけです。実際に活動する中で、SFTの理念や社会的意義にも共感するようになり、副代表になりました。教科書の回収・販売という事業の性質上、マーケティングや課題解決のスキルが求められる場面が多く、自分で考えて行動したことが成果につながったときに、特にやりがいを感じます。

 

 

――SFT創設の背景を教えてください。

 

長坂さん:創設者が途上国を訪れた際、勉強できる環境が十分に与えられていない子どもたちを目にしたことがきっかけです。帰国後、大学の教科書が高額で入手しづらいという大学生自身の悩みにも直面し、日本の大学生にも「高額な教科書を入手しづらい」という課題があり、開発途上国では教育機会そのものを得にくい子どもたちがいることに着目しました。大学生が安価に教科書を手に入れられる仕組みをつくると同時に、その利益の一部を途上国の子どもたちへの教育支援につなげる。この発想からSFTが始まりました。

 

――支援が届いていると実感する瞬間はどんなときですか。

 

長坂さん:連携しているNPO法人Room to Readの支援プログラムでは、一定額の寄付によってどの程度の教育支援につながるかが示されています。寄付した金額から何人の子どもが学べる環境を得られたかを計算したときに、実感が湧きます。

 

田邊さん:私は支援先調査チームで、これまでの支援人数を確認する機会があります。教科書の回収・販売という地道な活動が、1人の「勉強したい」を「勉強できた」に変えていると実感すると、活動の意義を強く感じます。

 

 

――発信の面で意識していることや、今後の課題を教えてください。

 

田邊さん:SNSでは団体のトーン&マナーを統一し、投稿を見た人がSFTだと分かるようにしています。ホームページでは、活動内容や実績を継続的に発信する取り組みも進めています。SNSでは短尺動画なども活用し、メンバー自身が大学生というユーザーでもあるため、同世代の感覚を取り入れながら発信できることも強みです。

 

一方で、日本で教科書の回収・販売を行うメンバーからは、支援先の状況を直接実感しにくいという課題もあります。長坂さんも、教科書のデジタル化が進むなか、紙の教科書を前提とした現在の活動を今後どう発展させるかを議論しています。意見が分かれる場面も多いですが、反対意見が出ることは当たり前だと最初に伝え、誰もが意見を言いやすい空気をつくることを意識しているそうです。

 

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 

田邊さん:「支援する側にもメリットがある仕組み」は、SFTならではの魅力です。支援は継続してこそ大きな力になると考えているので、500人一人ひとりが誇りを持って活動できる団体を目指していきたいです。使い終わった大学の教科書があれば、1冊でも寄付していただけたら嬉しいです。

 

長坂さん:SFTは、大学生が挑戦を重ねることでこれからも成長していける団体です。応援してくださる方や、活動に参加したい大学生や、取り組みに共感してくださる企業の方がいらっしゃれば、ぜひ力を貸していただけると嬉しいです。

 

学生から集めた1冊の教科書が、日本の大学生の学びを支え、その利益が途上国の子どもたちの教育機会につながっていきます。数字ではなく「支援できた人数」を軸に据える姿勢や、階層構造で組織全体にマネジメントを行き届かせる仕組みからは、学生主体で、支援と事業性を両立させてきたSFTならではの強みが伝わってきます。

 

STUDY FOR TWO

学生代表:田邊愛果(奈良女子大学)

学生副代表:長坂健吾(金沢大学)

2010年に活動を開始した学生団体。使い終わった教科書を大学生から回収し、半額で再販売した利益の8割以上を、NPO法人Room to Roadを通じて途上国の教育支援に充てている。全国に約40支部、500人以上のメンバーが所属し、年間の寄付額はおよそ300万〜400万円規模。