限られた環境こそ、最強の土台に——九州大学アメリカンフットボール部Palookas(パルーカス)
九州大学アメリカンフットボール部Palookas(パルーカス)は、競技だけにとどまらず、人と組織が成長し続ける部活のあり方を体現するチームです。部員の多くは未経験からのスタート、資金や人員も限られており、決して恵まれた環境を持つチームではありません。それでも彼らは「全国ベスト8」という高い目標を掲げています。
今回は主将の中村翔大さんに、なぜここまで本気で勝利を追い求められるのか、学年を超えたコミュニケーション、協賛活動や地域との関わり、そしてチームとして描く来シーズンの姿を伺いました。

——部の概要について教えてください。
九州大学アメリカンフットボール部Palookasは、国立大学である九州大学を拠点に活動しているアメフト部です。「Palookas(パルーカス)」という名前は、「へぼ選手たち」「未熟者」という意味を持つ言葉で、決して恵まれた環境ではない中でも、上を目指して挑戦し続ける姿勢を表しています。
活動拠点は九州大学伊都キャンパス総合グラウンドで、練習は主に平日の火・水・木曜日の17〜21時、土日は主に14〜21時を中心に活動しています。部員数は計41名。内訳は、1年生17名(マネージャー3名)、2年生13名(同1名)、3年生11名(同2名)です。アメフト経験者よりも未経験者の方が多いのが特徴です。そんな環境だからこそ、一人ひとりが役割を持ち、チーム全体で成長していくことを大切にしています。
——部の目標と、現在の立ち位置について教えてください。
部で掲げている目標は、「全国ベスト8」に進出することです。特に意識しているのが、「打倒・東海」という、中京大学アメリカンフットボール部への挑戦です。中でも中京大学は長年全国で結果を出してきた存在で、私たちにとっては一つの象徴的な目標でもあります。九州リーグの中では上位に位置していますが、全国レベルで見ればまだまだ挑戦者です。だからこそ、「地方の国立大学だから仕方ない」とは考えず、本気で全国を目指す姿勢をチームとして共有しています。

——なぜ多くの学生がPalookasを選ぶのでしょうか?
一つは、「九州大学の中で一番、本気で勝ちを目指している部活」だと感じてもらえているからだと思います。「練習がきつい」というだけではなく、どのレベルを目指すのか、どうやってそこにたどり着くのかを常に言語化しながら、チーム全体で共有している。その姿勢や覚悟が、新歓の段階から伝わっていると感じています。「本気で何かに挑戦したい」「中途半端では終わりたくない」と思っている学生にとって、私たちの部は魅力的に映っているはずです。
また、新歓への取り組みも私たちが選ばれる理由の一つだと思います。いきなりアメフトをやらせるのではなく、サッカー大会や運動会、ご飯会などを通して、まずは人となりや雰囲気を知ってもらうことを大切にしています。競技の説明だけでなく、「どんな人たちがいるのか」「どんな価値観で活動しているのか」を実際に体感してもらうことで、安心して飛び込める環境をつくっています。部員数が決して多くない分、一人ひとりと丁寧に向き合えるのも強みです。先輩・後輩の距離が近く、質問や相談がしやすい雰囲気があるといった“人間関係のあたたかさ”と、“勝利を本気で追い求める厳しさ”の二軸があるからこそ、私たちの部を選んでくれるのだと思います。
——部の強みとして「学年を超えたコミュニケーション」を挙げていましたが、詳しく教えてください。
正直、学年を超えたコミュニケーションを促すための特別な制度を設けているわけではありません。しかし2026年以降は、これまで学年ごとに行っていたミーティングを見直し、学年を越えて全体で集まる形にしようと考えています。チーム全体として同じ方向を向くためには、より多くのコミュニケーションが必要だと感じているからです。また、学年を越えて話すこと自体は、部の中ではすでに“当たり前”になっています。私たちは部員数が決して多くなく、他大学のように学年ごと、あるいは2学年分でチームを組める規模ではありません。だからこそ、「全員でやらないと勝てない」という意識が自然と根付いています。そのため、練習や試合、ミーティングでも学年に関係なく意見を出し合いますし、必要であれば遠慮なく声をかけ合います。人数が少ない分、一人ひとりの役割や存在感も大きく、誰か任せにすることはできません。学年の壁を作らず、全員で支え合いながらチームを動かしていく。その姿勢が、私たちのコミュニケーションの強さにつながっていると思います。

——中村さんご自身の競技歴について教えてください。
私は、いわゆる「ずっとスポーツ一本」というタイプではありませんでした。小学校から高校まで、継続して本格的に取り組んできた競技はなく、いろいろ試してきたという感覚が近いです。中学校ではソフトテニスを始め、高校に入ってからは一度陸上部に入り、投てき種目でやり投げをしていました。その後、高校の途中で再びソフトテニスに戻る形になりました。競技は変わってきましたが、「これだ」と思えるものにはなかなか出会えていなかったと感じています。そんな中で、大学でアメリカンフットボールと出会いました。正直、最初は「とりあえず1年間やってみようかな」という軽い気持ちでしたが、これまでの競技経験が点ではなく線につながるような感覚がありました。体の使い方やチームで戦う感覚など、過去にやってきたことが無駄ではなかったと初めて思えたんです。結果的に、未経験から始めたアメフトが自分に一番しっくりきて、今も続けています。いろいろ回り道をしてきたからこそ、今の競技に本気で向き合えているのかなと思います。
——来シーズンに向けた目標やチーム像はありますか?
来シーズンの目標は、はっきりと「打倒・東海」です。その目標に向かって、どんなチームであるべきかは、主将である僕一人で決めたわけではなく、学年を超えてみんなでしっかり話し合って決めました。その中で見えてきたチーム像は、大きく三つあります。一つ目は、目標に対して全員が一貫した姿勢を取り続けることです。辛いことも楽しいことも含めて、「東海に勝つ」という目標からブレないことを大切にしたいと考えています。二つ目は、アメフトを心から楽しむことです。本気で勝ちを目指すからこそ、苦しい場面も多くなりますが、その中でも競技そのものを楽しめるチームでありたいと思っています。三つ目は、メリハリを持つチームであることです。やるときは全力でやる、オフの時間はしっかり切り替える。そのメリハリがあれば、長いシーズンを戦い抜けると考えています。
こうしたチーム像を土台にして、ポジションリーダーを中心に少しずつ動き出している段階です。トップダウンではなく、全員で話し合いながら決めてきたからこそ、これからの取り組みも全員が当事者意識を持って進めていける。そんなチームで、来シーズンは本気で目標に挑みたいと思っています。

——協賛活動に力を入れている背景を教えてください。
最大の理由は、国立大学であるため大学からの支援が限られていることです。私たちは全国レベルを目指していますが、他大学と比べると資金面では厳しい状況にあります。遠征費や部費の負担も大きく、平日は練習やミーティングで忙しく、アルバイトの時間もなかなか取れません。その中で、協賛金や物資支援はチーム運営を支える重要な存在です。プロテインやお米、飲料などの支援は日々の活動に直結していますし、金銭的な支援は遠征や大会出場に欠かせません。また、協賛活動を通じて企業や地域の方々とのつながりが生まれ、将来的なご縁につながることもあります。私たちにとって協賛活動は、資金集めのためだけのものではありません。多くの方に支えられながら活動しているという実感を持ち、その期待に応えるために全力でプレーする。その循環を生み出すために、これからも協賛活動に力を入れていきたいと考えています。
——地域との関わりについて教えてください。
地域との関わりは、地元後援会の方々とのつながりがきっかけになって広がりました。後援会の皆さんは、食事会や決起集会を開いていただいたり、試合に応援に来ていただいたりと、日頃から密な関係があります。具体的な関わりは、朝の挨拶運動を定期的に行ったり、地元の小学校のお祭りにボランティアとして参加したりしています。また、夏休みには小学生に勉強を教える取り組みも行っており、部員が一対一で向き合う形で関わっています。こうした活動は、部として無理にやらされているものではなく、部員自身が楽しみながら参加しているのが特徴です。企業だけでなく、地域の方々を含めて本当に多くの人に支えられていると感じていますし、その関係性を大切にしながら活動を続けていきたいと考えています。
——最後に、日々応援してくださる方々にメッセージをお願いします。
私たち九州大学アメリカンフットボール部Palookasは、資金面での制約がある中でも、それぞれが工夫して費用を捻出し、全国ベスト8を目指しています。この環境下で恵まれた大学に勝つことの難しさを感じつつも、この環境だからこそやれることを模索し続ける日々です。必ず結果を出し、大きな感謝を伝えたいと思いますので、引き続き温かい応援をよろしくお願いいたします。

勝つことに本気で向き合いながらも、人とのつながりや支えへの感謝を忘れない。その姿勢こそが、彼らの強さの根幹にあります。目標を掲げ、仲間と対話を重ね、困難な状況でも工夫を重ねて道を切り拓いていく。その姿勢は、競技の枠を超え、これからそれぞれが歩んでいく社会の中でも、確かな土台になっていくはずです。
執筆:青木千奈(株式会社Koti)