優しい集団から戦う組織へ。「なぜ」を問うミーティング改革——大阪教育大学男子ハンドボール部
教育を軸に多様な学びを深める学生たちが集う大阪教育大学。同大学の男子ハンドボール部は現在、スポーツ推薦入学者を多数抱える私立大学がひしめく関西学生ハンドボールリーグ2部で戦っています。所属する選手はわずか10名で、マネージャー2名を含めても12名という小規模な組織です。しかし、彼らは今「2部リーグ全勝優勝、そして1部昇格」という高い目標を掲げ、春のリーグ戦で結果を残せなければ引退するという覚悟を持って日々練習に打ち込んでいます。優しい性格の学生たちが、いかにして勝負の世界で戦うための厳しさを身につけ、強靭な組織へと変貌を遂げたのでしょうか。キャプテンの秦野勇輝さんにお話を伺いました。
——貴団体について概要を教えてください。
現在は選手10名とマネージャー2名の計12名で活動しています。各学年に平均4名ほどが在籍する構成です。もともと週4日だった活動日数を、自分たちの代から週5日に増やし、月曜日と金曜日以外は1回およそ3時間の練習に取り組んでいます。
私たちの目標は、2部リーグで全勝優勝して1部へ昇格すること、そして2部で3位以上に入り西日本インカレに出場することです。春のリーグ戦で3位以内に入れなかった場合は、そこで引退すると決めています。これは単なる決まり事ではなく、「結果を出せなければ意味がない」と自分たちを追い込み、それほど強い覚悟で日々の練習に取り組んでいるということです。

——他大学にはない、貴団体ならではの強みとは何でしょうか?
部員の真面目さと、継続して物事に取り組める姿勢です。教育大学という環境もあり、温厚で真面目な学生が集まっています。強豪校のようにスポーツ推薦で入学した選手はおらず、チーム全体としても小柄な選手が多いため、体格面での不利な部分はあります。
しかし、その差を自分たちの強みである「運動量」で補っています。例えば、練習のウォーミングアップでもミスの回数に応じてペナルティを課し、40mを7秒で戻るダッシュを10本行うなどのメニューを取り入れています。また、大学構内の長い坂道や階段を活かし、そこで階段ダッシュを行うこともあります。人数は少ないですが、体力面や走る量では他校に負けない自信があります。足を動かし続けるディフェンスから速攻へつなげるスタイルが、私たちの最大の武器です。
——チームを率いる中で、どのような壁に直面しましたか?
自分たちよりも上位の強豪チームと合同練習を行った際、精神的な壁に直面しました。私たちは少人数のため、実践形式の練習を求めて私立の強豪大学に合同練習をお願いすることがあります。しかし、強豪校ならではの熱量の高さや、勝負に対する厳しさに直面した際、多くの部員がその気迫やプレッシャーに圧倒され、自信を失ってしまう時期がありました。
もう一つは、チーム内に厳しく指摘し合える環境がなかったことです。心優しい部員が多いため、ミスがあっても雰囲気が悪くなることを恐れ、直接指摘せずに曖昧なまま場が流れてしまう傾向がありました。私自身、過去に周囲との熱量の差を感じて意欲を落とした時期がありましたが、勝つためには互いに本音でぶつかり合い、課題を突き詰める必要があると強く感じていました。

——その壁を乗り越えるため、具体的にどのような改革を行いましたか?
新チームが始動した10月頃から、あえて厳格な雰囲気をつくるように努めました。一つのミスや規律違反に対して、まずは私から明確に指摘するようにしました。優しい部員たちにとっては、本来避けたいことかもしれませんが、そこを乗り越えなければ勝利は掴めません。現在では、私だけでなく部員全員で互いに要求し合える空気をつくれています。
また、試合に出場できずに意欲を失うメンバーはほとんどいません。ハンドボールは選手交代が自由にできる競技であり、私たちは人数も限られているため、ほとんどの選手が試合に出場します。スターティングメンバーであるか否かに関わらず、全員がチームに対して明確な役割を持てている環境が、現在の前向きな組織作りにつながっています。
——ミーティングの質を高めるための工夫を教えてください。
ミーティングでの抽象的な発言を減らし、「なぜそうなるのか」を深く掘り下げるようにしました。以前は「もっと速攻に行きたい」といった漠然とした意見が多かったのですが、「では、どのようにすれば速攻の回数を増やせるのか」と問い返し、具体的な解決策まで突き詰めて議論することを徹底しています。
具体的には、土日の練習試合で出た課題を火曜日のミーティングで全員に共有する時間を設けています。単に口頭で話すだけでなく、動画を活用したり、スライド資料にまとめたりして発表を行います。それに対して全員で疑問点を出し合い、内容が抽象的であれば、「もっと具体的にしてほしい」と私からフィードバックを行います。こうした積み重ねにより、着実にミーティングの質が向上していると感じています。

——これらの活動を通じて、組織運営についてどのような学びを得ましたか?
厳しさと優しさのバランスを見極めることの重要性です。私は先頭に立って組織を引っ張る役割を担うことが多いのですが、単に厳しく接するだけでは部員との間に溝ができ、協力は得られません。一方で、曖昧な態度のままでは結果は伴いません。その最適なバランスを実践の中で学んでいます。
そして、部員全員が「逆算思考」を持てるようになったことも大きな成果です。全勝優勝という目標から逆算して、「いつまでに、どのチームに勝つために、どのような能力が必要か」を選手自身が考える状態を構築しました。指導者が不在である分、全員が試合日から逆算して「今日までにこれを達成しなければ時間が足りない」と互いに声を掛け合えるようになったことは、チームの確固たる自信に繋がっています。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
私たちはスポーツ推薦の制度がなく、少人数で活動しているチームですが、だからこそ、他大学よりも貪欲に、そして真摯にハンドボールと向き合っています。大教大ハンドボール部の強みである「継続して取り組む姿勢」や「最後まで走り抜くプレースタイル」をこれからも大切にし、応援してくださる方々に誇れる組織であり続けたいと考えています。
一方で、毎回のリーグ登録費やテーピング代など、資金面での負担が大きく、それを理由に活動の継続を断念する学生がいることも事実です。今後、こうした金銭的な負担を少しでも軽減し、より競技に専念できる環境づくりも進めていきたいと考えています。これからも、大阪教育大学男子ハンドボール部への温かいご声援をよろしくお願いいたします。