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完成されていないから面白い。指導者がいない環境で学生たちがつくる勝つための仕組み——長崎大学ヨット部

長崎大学ヨット部は、大村湾を拠点に活動しています。2人乗りの小型ヨットに乗り、風や波を読む力、艇を扱う技術、レースでの判断力を磨いています。

現在の目標は、全日本インカレ団体戦への出場です。常任の指導者がいないため、練習の振り返りや艇の整備、ヨットに関する情報収集まで、部員自身が考えて進めています。

チームとしてはまだ成長の途上にあり、チーム全体のまとまりや資金面には課題もあります。しかし、2026年春には多くの1年生が入部し、部は変化の時期を迎えています。チームの現状や目標、指導者がいない中での取り組みについて、副将の繁田凰聖さんに話を伺いました。

 

 

——長崎大学ヨット部について、概要を教えてください。

 

普段は大村湾で活動しています。大学ヨットは、小型ヨットを使う2人乗りの競技です。レースでは、艇を動かす技術だけでなく、風や波を見て判断する力も必要になります。

部員は、1年生12人、2年生2人、3年生9人、4年生5人です。理系の学生が多く、学業と両立しながら活動しています。テスト期間には休みを設け、学業との両立ができるよう配慮しています。

活動は土日の9時から18時です。年間では、4月に新歓、5月に西日本インカレ、7月に全日本インカレ個人予選、9月に全日本インカレ団体予選があります。10月には全日本インカレ個人戦、11月には全日本インカレ団体戦があります。

練習では、操船技術や艇速を意識しながら艇に乗り、実戦形式の模擬レースを行うこともあります。ヨットは艇の状態やセッティングによって走りが変わるため、乗るだけでなく整備も大切です。

 

——チームの目標を教えてください。

 

私たちの目標は、全日本インカレ団体戦に出場することです。そのためには九州予選で上位2校に入る必要があります。しかし、私たちにとって簡単な目標ではありません。直近の大会では、個人予選での24位が最高順位でした。現時点では、九州予選で上位を争う位置にはまだ届いていません。

ただ、今は部としての転換期だと感じています。2026年春には例年の数倍となる1年生12名が入部し、部内に「もっと強くなりたい」という空気が生まれてきました。まだチーム全体で練習への取り組み方がまとまりきっているわけではありません。それでも、ここで正しい方向に取り組み続ければ、チームは大きく成長できるはずです。

 

 

——チームの特徴や大切にしている価値観を教えてください。

 

他大学と比べて「これが強みです」と胸を張って言えるものは、まだ多くありません。ただ、その分、一人ひとりの行動で部が変わる余地は大きいと思っています。私たちは今、まさに成長段階にあります。

自分たちらしい魅力は、上下関係が厳しすぎず、やりたいことがあれば自分から動ける環境があることです。協賛企業とのやり取りを始めたのも、部員の提案がきっかけでした。

勝利はもちろん大事です。ただ、部員がいてこそ成り立つ組織なので、私たちは楽しさも大切にしています。新歓では、まずヨットで遊ぶ楽しさを知ってもらうことを意識しています。

 

ヨットに対して「難しそう」「怖そう」というイメージを持つ人もいます。私自身も最初はそう感じていました。だからこそ、競技としての面白さだけでなく、まずは気軽に海に出る楽しさを知ってもらい、ヨットへのハードルを下げたいと考えています。

 

——指導者がいない中で、練習をどう工夫していますか?

 

私たちには特定の指導者がいません。そのため、練習後のフィードバックは自分たちで行っています。艇の走らせ方やセッティング、スタートの判断、風の読み方などで足りない部分は、インターネットで調べたり、他大学の部員に聞いたりして改善しています。

最近は、艇の整備についても共有方法を見直しています。以前は一人ひとりが個別に整備していました。しかし、整備の記録をつけて共有すれば、艇の状態をそろえやすくなり、自分たちの技術面の課題も見えやすくなります。

他大学の部員と自然に話せる関係も、情報収集に役立っています。大会で会う部員はライバル同士ですが、艇のセッティングや速く走るための工夫を聞くことがあります。こうした関係づくりが情報収集につながり、チーム全体の成長にもつながっていると感じています。

 

 

——チームが抱える課題を教えてください。

 

最も大きな課題は、部としてのまとまりです。部の目標はありますが、個人レベルの目標まで全員で共有し、すり合わせるところまではできていません。目標を共有できれば、部員それぞれが同じ方向を向いて練習や運営に取り組みやすくなり、チーム全体の力も発揮しやすくなると思っています。

運営面では、会計などの仕事を積極的に担う人がまだ少ないことも課題です。まずは、部にどのような仕事があり、何をしなければならないのかを全員で把握することが大事だと思っています。

現在は月に2回ミーティングを行い、LINEでも日常的に連絡を取り合っています。ミーティングでは、練習内容の振り返りや大会に向けた準備、艇の整備状況などを共有しています。部員から「こういう練習を増やしたい」「この役割を担当したい」といった提案を出すこともできます。

ただ、部員が固定化してしまうこともあります。今後は、会計や大会運営、整備などの状況も共有し、より多くの部員が意見を出しやすい環境を作っていきたいです。

 

——印象に残っている出来事は何ですか?

 

印象に残っている出来事の一つは、2026年5月の大会で6隻を大会に持っていけたことです。これまでは輸送手段の都合で、3隻しか持っていけませんでした。今回は、部員一人ひとりと話し合った結果、それぞれが試合へ出たいという強い思いを持っていることが分かり、OBの方々に相談して6隻を運ぶことができました。より多くの部員に出場機会を提供できたことは、大きな前進だったと思います。

ヨットは実際のレース経験がとても重要な競技です。練習だけでは得られない判断力や駆け引きがあります。そのため、多くの部員が大会に出場できたこと自体に大きな意味がありました。輸送や準備には多くの人の協力が必要でしたが、部員だけでなくOBの方々にも支えていただきながら実現できました。結果だけでなく、「みんなで大会に出るために動く」という過程を経験ができたことも印象に残っています。

 

——大学ヨットで学んだことは何ですか?

 

私自身が学んだのは、相手に合わせて伝える力です。私はヨットの経験者だったため、1年生の頃から他の部員に教える機会がありました。

最初は、相手がうまくできない原因を、自分の教え方ではなく相手の理解力や能力の問題だと考えてしまうこともありました。でも、それでは相手に上手く伝わりません。相手がどこでつまずいているのかを見て、なぜその動作が必要なのかを説明するようにしました。

強風で艇が転覆したときも、落ち着いて指示を出すことで、相手が状況を理解し、落ち着いて練習を再開できたことがありました。そうした経験を重ねる中で、相手に合わせて伝え方を考えるようになり、以前よりも部員とのコミュニケーションが取りやすくなりました。

教えることを通じて、私自身も状況を整理して考える力が身についたと感じています。

 

 

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。

 

私たちは、全日本インカレ出場という目標を持って活動しています。ヨットは競技人口が多いスポーツではなく、出場枠も限られています。九州地区のレベルも高く、簡単に予選を突破できるわけではありません。それでも、今の部には、より強くなろうとする意識があります。

レースや遠征で実戦経験を重ねることは、競技力の向上につながります。一方で、艇の輸送費や整備費、宿泊費などには多くの費用がかかります。6隻を長崎から福岡へ運んだときは、往復の輸送費だけで約30万円かかりました。OBの方々には、これまでもさまざまな面で支えていただいてきました。だからこそ、今後は資金面の基盤も自分たちで作っていきたいと考えています。

入部を考えている学生には、まずヨットの楽しさを知ってほしいです。経験がなくても大丈夫です。自ら手を挙げれば、さまざまなことに挑戦できる環境があります。競技として上を目指したい人も、新しいことに取り組みたい人も、一緒にヨット部を作っていきましょう。