部員8名から再建へ。監督不在でつくる「自走する組織」——神戸大学ハンドボール部
かつての部員はわずか8名。
いつ活動が止まってもおかしくない状況から、神戸大学ハンドボール部の再建は始まりました。
監督やコーチは不在。練習メニューや戦術も、すべて自分たちで考えなければならない環境です。それでも彼らは、他大学との交流や合同練習の機会を積極的に作りながら学びを重ねてきました。さらに、高校生向け大会「神大カップ」を立ち上げるなど、学生主体で組織を立て直してきました。
現在、部員は28名。
廃部の危機にあったチームは、関西学生リーグ2部で西日本インカレ出場を目指す組織へと成長しました。指導者がいない環境で、彼らはどのようにチームを再建したのか。今回は、主将の藤原蒼太さんに、組織づくりの背景を伺いました。

——神戸大学ハンドボール部の概要について教えてください。
私たちは現在、選手24名、マネージャー4名の計28名で活動しています。主な練習拠点は神戸大学鶴甲第1キャンパスの体育館です。週3回の全体練習を行っています。目標は、関西学生リーグ2部で3位以内に入り、「西日本インカレ」への出場権を勝ち取ることです。
2年前、私が入学した当初は部員が8名しかおらず、いつ活動が止まってもおかしくない状況でした。そこから、自分たちで高校生向けの大会「神大カップ」を立ち上げて直接勧誘を行ったり、サッカー部やラグビー部、テニス部とInstagramでコラボして新入生への認知を広げたりと、地道な活動を続けてきました。その結果、今の1年生(新2年生)が15名入部し、2年前とは比較にならないほど活気のあるチームへと成長しました。

——指導者がいないという不利な環境を、どう解決していますか?
神戸大学ハンドボール部には常駐の監督やコーチがいないため、戦術や練習メニューは自分たちで考えなければなりません。私たちはこの状況を「外部とのネットワーク」で補っています。
例えば、私の小学校時代からの繋がりを辿り、他大学へ合同練習や練習試合を依頼したり、県外遠征に出向いたりしています。「自分たちには指導者がおらず、チームの課題について指導していただきたい。ディフェンスの強度を高めたいので教えていただきたい。」と率直に頼み込み、トップレベルの理論を肌で感じてチームに持ち帰るようにしています。また、練習の意図や試合の振り返りをPowerPointにまとめて全員に配布しています。周囲からは「パワポキャプテン」と呼ばれていますが、映像を分析し、理論を言語化して全員で共有することで、指導者がいなくても高いレベルの共通認識を築けるようにしています。
——組織が拡大する中で、主将としてどのような「壁」に直面しましたか?
部員が急増し、2年前の数倍の規模になったことで、それまで少人数だからこそ成り立っていた「阿吽の呼吸」が通用しなくなった時期がありました。主将になった当初は、責任感から練習メニューの作成から細かな事務作業まで、すべてを一人で抱え込もうとしていました。しかし、自分一人の視点だけで組織を動かそうとすると、どうしても部員一人ひとりの声にまで目が届かず、リーダーとしての重圧を感じることもありました。
転機となったのは、一人で背負うことの限界を認め、仲間に役割を任せるようになったことです。それぞれに責任ある役割を託したことで、部員の当事者意識が高まり、私自身も組織全体をより広い視野で見られるようになりました。全員が同じ目標に向かって主体的に動けるチームになってきたことを、とても心強く感じています。仲間の力を信頼することの大切さを学んだこの経験は、私自身にとっても大きな成長になりました。
——全部員と個別で対話を行うなど、コミュニケーションにこだわる理由は何ですか?
秋のリーグ戦が終わった後、28人全員と一人30分ずつ、Zoomで個別ミーティングを行いました。これは、組織が大きくなったからこそ、一人ひとりがチームをどう見ているか、何を課題と感じているのかを正確に把握するためです。
上級生からは「運営のここがいい、ここが課題だ」という視点をもらい、下級生からは「もっとこうしていきたい」という意欲を引き出します。学年が離れていると、どうしても意見を言い出しにくい空気が出ますが、この密な対話があるからこそ、1年生でも対等に意見を言える「風通しの良さ」が生まれています。ハンドボールは交代が自由なスポーツであり、ベンチ入りメンバー全員の団結力が試合結果を左右します。だからこそ、誰一人取り残さないコミュニケーションを徹底しています。

——神戸大学ハンドボール部ならではの「文化」や「空気感」を教えてください。
私たちは、オンとオフの切り替えを非常に大切にしています。週3回の練習は全力で取り組みますが、一歩コートを出れば学年を問わず非常に仲が良いのが特徴です。
例えば、旧帝大との定期戦である「八大戦」では、試合後のレセプション(懇親会)で、関西の大学として「笑いのセンス」を期待されます。新入生が入部してまだ数か月のタイミングですが、全力で出し物を企画し、会場を盛り上げる経験を通じて、チームの団結力が一気に高まります。また、沖縄遠征の最終日に全員で打ち上げに行ったり、冬にはバーベキューやボーリング大会を開催したりと、思い出を作る機会も多いです。マネージャーに対しても、遠征の際にお礼のプレゼントを贈ったり、試合前の円陣には必ず28人全員で入ったりと、プレーヤーと分けることなく、同じ部員として考えています。

——これからの組織運営において、どのような課題を感じていますか?
現在、私たちが感じている課題は大きく二つあります。
一つは、活動を継続していくための「資金面」です。28名という大人数での遠征費や体育館の使用料、さらに高校生向け大会「神大カップ」の開催費用など、活動規模が大きくなるにつれて必要なコストも増えてきています。これまでは部員の自己負担に頼る部分もありましたが、今後は企業との連携にも挑戦しながら、経済的な理由で活動の幅が狭まらないような仕組みを模索しています。
もう一つは、次世代への「文化の継承」です。現在の2年生(新3年生)は非常に落ち着いた安定感のある代ですが、今の私のように強く牽引するタイプとはまた違った個性を持っています。そのため、活気のある1年生のエネルギーを活かしながら、勝負に対する厳しさや「自分たちで考えて動く組織」としての姿勢をどう引き継いでいくかが大切だと感じています。単に仲が良いだけのチームに留まらず、目標に向かって努力し続けられる組織であるために、今のうちから後輩たちに役割を任せ、当事者意識を育てていくことを意識しています。それらが、私が残りの任期の中で取り組んでいきたいことです。
——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
日頃より神戸大学ハンドボール部を応援いただき、心より感謝申し上げます。2年前に廃部の危機にあった私たちが、今こうして28名で活動できているのは、OB・OGの皆様や遠征費の確保などでご支援くださっている企業の方々の支えがあったからです。
2025年のチームテーマは「Passion」です。人数が増えた今だからこそチームとしての一体感を大切にし、気持ちで負けないチームを作りたいと考えています。チームミーティングを増やすなど、日頃からコミュニケーションを大切にしながら、全員が同じ方向を向いて戦えるチームを目指しています。
私たちは、春のリーグ戦で目標である西日本インカレ出場を果たし、結果で恩返しができるよう全員で戦い抜きます。これからも、私たちの挑戦を見守っていただければ幸いです。
