降格候補から下剋上を果たし中国リーグ制覇。全員野球で挑む全国大会——山口大学準硬式野球部
中国地区一部リーグに所属し、春季リーグを制して全日本大学準硬式野球選手権への出場を決めた山口大学体育会準硬式野球部。飛び抜けた選手に頼るのではなく、一人ひとりの力を高めること、投手を中心に粘り強い守備を大切にしています。限られた練習環境のなか、学生主体でチームを前進させてきました。今回は、主務の福光湘太さんに中国地区制覇までのチームづくりや、全国大会に向けた課題について伺いました。
——山口大学体育会準硬式野球部について概要を教えてください。
私たちは、春季リーグで優勝し、全日本大学準硬式野球選手権への出場を決めました。全国大会ではベスト8を目標にしています。中国地区のリーグは1部と2部に分かれており、1部は6チームで構成されています。春と秋で大会の位置づけは異なり、春は全国大会につながる重要な大会です。秋リーグは新チームで臨むことが多く、次の春リーグに向けて1部に残るためにも大切な大会です。
全国大会では強豪校が多いですが、挑戦者として下馬評を覆し、ダークホースとして旋風を巻き起こせるよう、一戦一戦全力で戦うことを大切にしています。

——チームとして意識していることはありますか?
学年に関係なく全員で戦うことを意識しています。1年生がレギュラーを務めることもあり、年次に関係なく選手を起用しています。キャプテンや学生監督を中心に、チーム全体で戦う姿勢を大切にしています。
私たちの代は、特定の選手に頼るのではなく、全員で補い合わなければ勝てないと考えています。そのため、一人ひとりが自分の役割を考えて行動しています。
——全国大会に向けた課題は何ですか?
課題は守備力の向上です。私たちのチームには、甲子園出場経験を持つ選手や、突出した実績を持つ選手が多くいるわけではありません。中国地区の中でも、突出した個の力で押し切るタイプのチームではないと考えています。
準硬式野球は、硬式野球と比べて長打が出にくく、点が入りにくい競技だと感じています。だからこそ、1点を守る力が重要です。全国大会で勝つためには、ロースコアの展開に持ち込む必要があります。
そのため、私たちは基礎練習を改めて重視しています。特別なことに取り組む前に、まずは基本的なプレーを確実に行うことが重要です。守備で簡単に失点しないことが、全国で戦うための土台になると考えています。
——守備面では、具体的にどのようなことを意識していますか?
私たちは、ポジショニングに強くこだわっています。1球ごとにサインや状況を確認しながら、外野が前に出たり、内野がライン際に寄ったりと、細かく位置を調整しています。監督からの指示をもとに動く場面もありますが、選手自身の判断で対応することも大切にしています。攻撃面では全国大会出場校との差もあると感じています。だからこそ、打ち勝つことだけを目指すのではなく、相手に簡単に得点を与えない試合運びを重視しています。守備で1点を防げるかどうかが、試合の結果を左右すると考えています。

——悲願の全国大会出場につながった要因は何だと思いますか?
選手を兼任しない、専任の学生監督がいることです。
大学の準硬式野球では、選手が監督を兼任するチームもあり、試合に出場しながらサインを出したり、選手交代を考えたりするのが一般的でしたが、私たちの代から体制を変更しました。そのため、選手としてのコンディション管理と監督としての判断を同時に求められます。
一方で、私たちのチームには専任の学生監督がいるため、試合を外から客観的に見ることができます。これにより、選手一人ひとりの状態を把握しやすくなりました。実際には、先発メンバーを固定するのではなく、打順やポジションを柔軟に変えながら戦っています。調子や役割に応じた采配ができている点は、大きな強みだと感じています。
——学生監督はチームにとってどのような存在ですか?
私たちにとって、学生監督は欠かせない存在です。もともとは投手としてプレーしていましたが、けがでボールを投げられなくなり、監督に専念する形になりました。
その姿を見て、同級生だけでなく後輩も「この人のためにも頑張りたい」と感じるようになったと思います。
選手一人ひとりをよく見て、必要な声かけをしてくれます。試合前には一人ひとりと握手をしていて、それも本人が大切にしている習慣です。
優勝決定後に行われたリーグ戦では、学生監督が代打として出場する場面もあり、チームとしても盛り上がりました。普段から監督として支えてくれている同級生が公式戦の打席に立ったことは、とても印象に残っています。同級生でありながら監督でもあるという珍しい関係ですが、お互いに信頼し合い、それぞれの立場でチームのために全力を尽くしています。

——チームの雰囲気について教えてください。
良い意味で上下関係が強すぎない雰囲気があります。いわゆる厳格な体育会系というより、穏やかな雰囲気の部員が多いと感じています。高校時代に全国大会を経験していない選手も多く、強豪校出身の選手ばかりというチームではありません。
そのため、トップダウンで強く引っ張るよりも、部員の意見を引き出しながら、全員でチームをつくるリーダーシップが合っていると思います。キャプテンや監督も、部員に寄り添いながらチームをまとめていくタイプです。
後輩でも意見を言いやすい雰囲気は、先輩を中心に築いてきました。学年単位ではなく、部全体としてまとまることを意識しています。
——チームをまとめる上での工夫を教えてください。
一人ひとりとコミュニケーションを取ることを大切にしています。
部員は4学年で50人を超える部員がいるため、全員の状態を把握することは簡単ではありません。そのため、名前を覚えることはもちろん、部員一人一人と野球の話以外もするなど、キャプテンや監督を中心に積極的に声をかけることを意識しています。
監督は選手の起用について個別に話をしていて、キャプテンも「最近、調子がいいね」といった前向きな声かけを通して、選手の状態を見ています。
——限られた練習時間の中で意識していることを教えてください。
練習の効率を重視しています。理由の一つは、グラウンドを複数の部で共有していることです。そのため、使用できる時間が限られています。長時間の練習ではなく、限られた時間で質の高い練習をすることが大切だと考えています。
具体的には、集合時間を守るなど、当たり前のことを徹底しています。練習メニューも、その場で突発的に決めるのではなく、練習前に「今日は何をするのか」を全員に伝える習慣があります。そうすることで、選手も目的を持って練習に取り組めます。

——1部残留も簡単ではないと感じていた中で、リーグ優勝できた背景を教えてください。
私たちの代は、降格してもおかしくないと見られていた世代だったと思います。先輩の代には甲子園を経験した選手や実績のある選手がそろっていた先輩の代でも、リーグ戦で勝ち切る難しさを目の当たりにしました。
その姿を見たことで、私たちの代では危機感が強まりました。先輩が引退した後のミーティングでは、「負けられない」「降格したくない」という思いを共有し、そのために全員で努力していこうと話しました。
——活動を続けるうえで、運営面の課題はありますか?
最大の課題は、資金面です。私たちは他県へ移動して試合をすることが多く、多額の交通費がかかります。
今後は全国大会や中国地区の大会なども控えており、短期間に複数の大会が続きます。そのため、学生の負担だけでは難しいと感じています。
そこで、OB会への支援のお願いに加え、企業からの協賛獲得にも取り組んでいます。支えてくださる方がいるからこそ、私たちは全国の舞台に挑戦できます。今後、協賛や応援を通じて活動を支えていただけましたら、大変ありがたく思います。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
日頃から応援してくださっている皆さまに、心より感謝申し上げます。悲願の全日本大学準硬式野球選手権大会という目標を達成できたのは、温かく支えてくださる皆さまのおかげです。中国地区の代表として、全国の舞台でも一戦必勝で全力を尽くします。
遠征費をはじめ、学生だけでは簡単に乗り越えられない課題もあります。それでも、応援してくださる方々の存在があるからこそ、私たちは目標に向かって挑戦し続けることができます。これからも変わらぬご支援とご声援をいただけますと幸いです。
入部を考えている学生には、野球だけでなく、チームを自分たちで動かす経験ができる場所だと伝えたいです。学年に関係なく意見を出しやすく、一人ひとりが役割を持って関われるチームです。少しでも興味がある方は、ぜひ見学にお越しください。