廃部危機を乗り越え、理論で勝つボウリング部へ――弘前大学ボウリング部
2024年ごろ、部員が5人ほどまで減り、廃部の危機にあった弘前大学ボウリング部。そこから部員を増やし、現在は40人規模で活動し、全国大会でのベスト8進出を目標に掲げるまでになりました。
活動拠点までは徒歩で1時間かかり、積雪時は移動手段が限られる環境の中、SNSでの発信と体験会を軸にした勧誘、そして理論に基づいた練習で力をつけてきた弘前大学ボウリング部。今回は部長の加藤さんに、組織再建の道のりと、理論や座学を重視する競技への向き合い方について伺いました。

――弘前大学ボウリング部について教えてください。
弘前大学のある弘前市は積雪が多く、、活動場所までは歩いて1時間ほどかかります。雪が降ると徒歩でしか移動できなくなるため、活動を続けられる部員がどうしても限られてしまう環境です。2024年ごろは活動人数が5人ほどまで落ち込み、活動をさらに広げたい部員と、現在のペースを維持したい部員との間で、方針に違いが生まれ、活動を継続すること自体が難しくなりかけた時期がありました。
――そこからどのように部員を増やしていったのですか。
当時の代表や先輩たちが、自分たちの活動の楽しさが伝わる発信に力を入れてくれたのがきっかけです。Instagramで月々の活動や大会の様子をこまめに投稿するようになり、それを見て興味を持ってくれる新入生が増えました。加えて、大学の勧誘イベントでブースを出すだけでなく、その場でボウリング場に案内して無料体験会を行う取り組みを始めたところ、入部につながるケースが大きく増えました。現在は部員が約40人で、弘前大学の学生にスクール生を合わせた構成です。

――スクール生というのは、どのような制度なのですか。
大学生以外にも、高校生などが部員と一緒に練習できる仕組みです。1人で黙々と練習していた高校生から「一緒に投げたい」と声をかけられたことをきっかけに、2026年度に始めた取り組みです。今は5人が参加していて、イベントなども部員と合同で行っています。今後も希望者がいれば受け入れを続けていきたいと考えています。
――全国大会に向けた目標を教えてください。
年末の全国大会で、予選を突破してベスト8に進出することを目標にしています。部員の8割が未経験者からのスタートということもあり、全国大会では、まだ予選突破に届いていません。
上大会経験を積んでもらうため、Aチームでは3年生を積極的に起用し、大会までしっかり練習を積んでもらう方針です。
――底上げのために、具体的にどのような取り組みをしていますか。
経験者の先輩が講師となり、ボウリングの知識を学ぶ講習会を開いています。未経験者が多い部だからこそ、経験者の有無にかかわらず、全員のレベルを底上げしたいという考えからです。加えて、3カ月に2回ほど、OBのプロボウラーを招いて指導を受けているほか、インストラクター資格を持つ経験者の先輩からも日常的にアドバイスをもらっています。片手投げと両手投げでプレースタイルが異なるため、両者から異なる視点のアドバイスを得られることも力になっています。

――座学がボウリングにとって重要だと伺いました。
ボウリングは年齢を重ねても続けやすい競技で、経験や状況判断が結果を大きく左右する競技でもあります。差がつくのはレーンに塗られたオイルの状態を読み取り、状況に応じて投げ方を調整する思考力の部分です。たとえば立ち位置や狙う位置をどの程度ずらせばボールの軌道が変わるのかを理解することで、スペアの成功率向上にもつながります。。スペアを安定して取れるようになれば、スコアも大きく安定し、それだけで予選の上位を狙えるようになります。感覚だけで投げ続けるよりも、まず理論を理解してから練習した方が、上達のスピードが上がると感じています。
――部の運営で工夫していることはありますか。
上級生の学業や就職活動との両立を考え、2年生から運営の中心を担う体制にしています。上級生になるほど学業や就職活動で忙しくなるので、下級生が主体的に運営に関わる経験を積んでおくことが、長い目で見て組織にとってもプラスになると考えています。3・4年生には、2年生が困ったときや迷ったときに相談できる存在として関わってもらっています。また、練習に来られる部員と来られない部員の間に差が生まれないよう、文化祭での出店や食事の機会をつくって関係性を築くことも意識しています。無理に練習に誘うのではなく、まずは一緒に過ごす時間を増やすことを大切にしています。
――部の運営を通して、学んだことを教えてください。
先輩の意見を参考にしつつも、自分の意見や決断を自信を持って伝えることの大切さを学びました。周りに経験豊富な先輩が多かった分、以前は「先輩ならどうするか」を基準に考えてしまい、それがかえってプレッシャーになっていた時期もありました。今は、自分の代のことは自分で決めて行動することも大事だと考えるようになっています。もう一つ、部の運営でも競技面でも、自分たちの行動を振り返って課題を洗い出し、修正して次に活かすというサイクルを回すことの重要性も実感しています。実際、以前は新入生の勧誘に力を入れすぎて、1人ひとりに十分に対応しきれなくなった経験がありました。その反省から、翌年以降は事前申し込みの仕組みを導入し、参加人数を把握するなど、運営方法を見直しています。

――活動を続けるうえで、資金面の課題はありますか。
全国大会は関西や関東で開催されることが多く、遠征では、1人あたり1大会で7万円ほどかかることもあります。チーム戦と個人戦の両方に出場すると、年間で15万円から20万円ほどの負担になります。部費自体はそれほど高くないのですが、遠征のたびにかかる費用の多くを部員個人が負担しているのが実情です。企業イベントをきっかけにつながった企業から、現在は継続的に協賛をいただいていますが、遠征費の負担を軽減するため、外部からの支援も広げていきたいと考えています。
――最後に、意気込みをお願いします。
積雪という環境の制約や、部員のほとんどが未経験者からのスタートという条件は変えられません。だからこそ、感覚だけに頼らず理論を学び、経験者と初心者が教え合いながら全員で底上げしていくスタイルが、自分たちらしい戦い方だと思っています。まずは全国大会でベスト8に進出すること。そこに向けて、部全体で取り組んでいきます。
活動拠点までの距離や積雪など、決して活動しやすいとはいえない環境の中で、SNSでの発信と体験会を通じて部員を増やし、座学と理論で競技力を底上げしてきた弘前大学ボウリング部。2年生が部長を務める運営体制や、振り返りを重ねて仕組みを改善していく姿勢からは、課題を一つずつ見直し、仕組みを変えることで組織を立て直してきた過程が伝わります。
弘前大学ボウリング部
部長:加藤さん
2024年ごろに部員数が大きく減少した状態から、SNSでの発信と体験会形式の勧誘を通じて部員数を約40人まで拡大。座学を重視した練習と、OBのプロボウラーや経験者の先輩による指導を通じて競技力の底上げに取り組んでいる。年末の全国大会でのベスト8進出を目標に活動している。