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学生主体で急成長する組織を動かす方法とは——名古屋大学体育会ヨット部

名古屋大学体育会ヨット部は、学生主体で近年大きく成長を続けているチームです。1932年に創部した歴史ある部でありながら、過去には休部期間も経験しています。約9年前に再始動をし、それ以降は監督やコーチが常駐しない環境の中で、練習の計画から組織づくり、遠征や資金管理までを学生が担っています。少人数ながら、全国の舞台に挑み続けています。今回は部の特徴や日々の取り組み、そして資金と人員のリアルな課題について主将の北川峻也さんにお話を伺いました。

 

 

——名古屋大学体育会ヨット部の活動概要について教えてください。

 

名古屋大学体育会ヨット部の活動拠点は、愛知県蒲郡市にある海陽ヨットハーバーです。蒲郡市が用意してくださっている合宿所が近くにあり、練習日は基本的にそこで宿泊しながら活動しています。活動日程は、授業期間と長期休暇で大きく変わり、授業期間は、土日に泊まり込みで、朝8時ごろから会議も含めて21時ごろまで活動します。平日は授業があるため、週末に泊まり込みで練習をするスタイルが基本です。朝は6時20分に起床し、8時ごろから海に出て練習を開始します。夏場の場合は、17時ごろまで、冬の期間は15時半ごろまで練習をします。長期休暇の場合は、木曜日から日曜日まで合宿所に泊まり込みで太陽の出ている時間帯に練習をします。入部後は、基本的に土日は泊まり込みで練習を行うため、部員にとって土日は部活動に時間を投資するスタイルが当たり前になっています。

——部員構成やチームの雰囲気について教えてください。

 

2026年度時点での部員構成は現在、2年生10名、3年生3名、4年生5名です。1年生についてはこれからの新歓で何名入ってくれるかという状況です。名古屋大学の特性もあり、文理の比率は文系3:理系7で、理系が多い形です。また、ヨット経験者はほとんどおらず、部内で経験者は3名のみです。ほとんどが未経験からのスタートでバックグラウンドも様々です。それでも入部者が集まるのは、ヨットに乗る体験の新鮮さと海で活動する開放感だと感じています。実際に私自身も、新歓で海に出た際に感じた爽快感が強く印象に残っています。未経験のスポーツではありましたが、その体験をきっかけに入部を決めました。部の雰囲気を一言で表すのであれば「自由」です。ただし、放任主義であるということではなく、自由であるからこそ、自分で考え責任を持つ文化が根付いていると思います。

 

 

——練習内容で特に工夫していることはありますか?

 

ヨットは動作が勝敗を左右する競技です。そのため、練習メニューは単にレース形式ではなく、動作を分解して磨く時間が多く組み込まれています。授業期間の土日での練習は、基礎練とレースを想定した練習を中心にしています。長期休暇になると、時間を多く確保できるため、より細かい練習が可能になり、例えば、スタート練習のみ徹底をすることや一つの動作のみを反復練習するなど、技術を分解したトレーニングに時間を割き、一つ一つを着実にスキルアップできるように意識しています。海での練習時間は限られているため、練習中は部員全員が集中し、練習前後のミーティングは綿密に行うことが名古屋大学のスタイルです。

 

——名古屋大学体育会ヨット部の強みはどこにありますか?

 

最大の強みは、学生が主体となって行動していることです。名古屋大学体育会ヨット部は過去に休部期間があり、再始動からまだ約9年しか経っていません。伝統校のようにOBOGやコーチのネットワークが厚いわけではなく、自然と教えてもらえる環境ではありません。

さらに、監督やコーチも常駐ではなく、大会の時に来てくださることが年に数回ある程度なので、他大学のように監督の方針を忠実に行う形ではなく、何を練習するか、どう強くなるかを自分たちで決める必要があります。だからこそ、私たちは外部との関わりも大切にしており、全国大会で技術力の高い選手がいれば、直接声をかけたり、実業団の方や他大学の方とも積極的にコミュニケーションをとったりしています。そうして知識を吸収しながら、徐々に自らの力でネットワークを開いています。そのような姿勢を続けることで少しずつ力がついていき、大会でも成績が残せるようになってきています。

 

 

——部として大切にしている価値観や文化は何ですか?

 

大切にしているのは、ヨット競技の楽しさ、集中、同じ目標に向かう一体感、そして「1チーム」の意識です。それを最も表しているのが練習後に行うミーティングだと感じます。主に練習後18時ごろから開始し、時間制限は設けず、長い場合は2〜3時間行うこともあります。その日の反省だけではなく、上手い選手の動画を見て分析し、動作や思考を言語化して、共有します。また、下級生が質問を投げ、上級生が答えるだけで終わるのではなく、下級生同士で考え合い、その疑問の解消を上級生がサポートしていくような工夫をしています。常に疑問に対して答えをすぐに伝えるのではなく、チーム内で一緒に考えることで常に思考する習慣を育てることができるようにしています。年代関係なく、フラットに意見を述べることができるように常に質問をしやすい場作りも心がけています。

 

——これまでで印象的であった出来事は何ですか?

 

印象的であったことは、2025年度に両クラスでのインカレ出場を達成できたことです。ヨットでの全国大会では大きく団体戦と個人戦の二種類があり、そのどちらでも達成することができました。休部後としては初めての全日本インカレ出場で、何十年ぶりの快挙でもあります。前年の新人戦では思うような順位が取れなかったことから、このままでは秋に全日本に行くことができないという危機感がチーム全体に広がり、そこで部員全員で「素直に、謙虚になること」を再度意識して練習に取り組むようにしていました。ヨットは自然条件で運良く勝てることもあります。しかし、そこで満足せず、なぜ良かったか、それは再現性があるかを徹底的に考えるようにしました。うまくいきそうな方法はプライドを捨てて、全て取り入れてきました。この姿勢を取ることができたことが急成長につながった部分だと感じています。

 

 

——現在感じている課題を教えてください。

 

課題は大きく分けて二つあり、人員と資金の面です。まず、人員については休部の過去があるからこそ、部として最も重要視していることは人員を減らさないことです。新歓で1年生が入ってくれた後も丁寧にフォローし、下級生が孤立しないように工夫しています。ミーティングで横のつながりを作っていることもその一環です。最も深刻な課題は資金面の部分だと考えています。ヨット競技は用具が高価でセイル(帆)のセットだけでも約100万円します。毎年買い換える大学も多いですが、仮に2セットを交換する場合、250万円規模になります。さらに艇そのものは新しいもので約400万円です。簡単に更新できる金額ではありません。本来なら強化のために必要な投資であっても、現実的に買うことができないため、工夫するようにしています。部費を有効活用するために、艇が壊れても業者を呼ばず、可能な限り自分たちで修理するなどの努力をしています。必要な資金は莫大な一方で練習は土日に泊まり込みとなってしまうため、学生がアルバイトの時間を増やすことも難しく、部員個人が資金を補うことにも限界があります。また、長年の歴史の中でOBOG支援やつながりからスポンサー支援が自然に集まるケースもありますが、休部期間があった影響もあり、支援の土台がまだ薄く、今後は部として協賛をいただける企業様へのアプローチを強化していきたいと考えています。

 

 

——今後の目標を教えてください。

 

今後は両クラスで全日本インカレの出場を継続しながら、全日本で10位以内に入ることを目指していきたいです。また、新歓で部員数を増やし、より大きく強い部活動にしていきたいと考えています。今年は上級生の主力メンバーが抜け、若手が中心になります。下級生を育てながらも、4年生が広いキャパシティを持って組織を前に進めていきたいと考えています。

 

——最後に、応援してくださる方々へメッセージをお願いします。

 

名古屋大学体育会ヨット部は、部員一同、高い目標に向かって成長し続けている部活です。休部の歴史があるからこそ、私たちは続けること・残すこと・次の世代に繋ぐことを強く意識しています。その上で、全日本の舞台で結果を残し、名古屋大学のヨット部が全国で戦えることを証明したいと考えています。もし今後何かしらでご支援をいただけるのであれば、それは単なる金銭的なサポートではなく、部の未来を大きく変える力になります。ぜひ応援よろしくお願いします。

 

 

名古屋大学体育会ヨット部は、恵まれない環境にあっても、思考と対話で練習を続け、自ら外に出向き、また自分たちと向き合うことで結果を出してきました。学生が競技と運営を同時に背負い、試行錯誤しながら前に進む姿は、一つの組織モデルとしても、十分に価値がある取り組みだと感じました。