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3部残留から「負ける気がしないチーム」へと変貌を遂げた逆転の舞台裏——神戸大学サッカー部

「あと一歩で、いつも手が届かなかった。」

3年連続の3部残留。国立・神戸大学体育会サッカー部の主将、西岡優悟さんは、ここ数年のチーム状況を正直な言葉で振り返ります。プロの指導者が常駐しているわけでも、潤沢なスカウト網があるわけでもありません。そうした環境で、彼らが唯一の武器として磨き上げたのは、徹底した“思考”と“言語化”の積み重ねでした。

なぜ、学生だけの自治組織がここまでストイックに勝利を追い求められるのか。きれいな成功談ではない、試行錯誤の中で見つけた独自の「チームの動かし方」と、その裏側にある西岡さんの熱い本音に迫ります。

 

 

——まずは神戸大学サッカー部がどのような団体なのか教えてください。

 

私たち神戸大学サッカー部は、現在、関西学生リーグの3部に所属しています。約60名の部員が主体となり、日々のメニュー作成、戦術決定、メンバー選定まで行っています。

目標とする舞台は多岐にわたります。3月の天皇杯予選(兵庫県選手権)を皮切りに、6月の関西選手権予選、一橋・大阪公立・神戸の3校で競う伝統の「三商戦」、国公立リーグ、そして夏に行われる慶應義塾大学との定期戦など、年間を通して多くの真剣勝負に挑んでいます。しかし、私たちが何よりも圧倒的に重きを置いているのは「リーグ戦」です。

私が1年生として入部した年に3部へ降格して以来、3年連続で「3部リーグ優勝と昇格」を掲げながらも残留という結果に終わってきました。

私立の強豪校のように、プロの指導者が「答え」をすぐに与えてくれる環境ではありません。しかし、だからこそ自分たちで考え、正解を創り出すプロセスそのものが、私たちのアイデンティティであり、社会へ出る前に磨き抜くべき独自の武器だと信じています。

 

 

——なぜ「2部昇格」という壁に3年間も跳ね返されてきたのでしょうか?

 

目標が「昇格」から「残留」へとすり替わってしまった、自分たちへの「妥協」がどこかにあったからだと思います。昨年の前期リーグは非常に苦しい状況でした。勝てない日々が続き、怪我人も続出しました。自分たちが信じている形が全く機能せず、「本当に昇格なんてできるのか」という不安がチーム全体に広がり始めていました。

気づけば「昇格」を追っていたはずが、頭の片隅で「降格しないためのポイント計算」を始めている自分がいました。その妥協が何よりも苦しかったです。しかし、どん底で踏みとどまれたのは、私たちが「やらされている」のではなく「自分たちが選んでここにいる」組織だったからです。このままでは終われない——その意地が、私たちを突き動かしました。

 

——どん底の前期から一転、なぜ「負ける気がしない」連勝街道を突き進むことができたのでしょうか?

 

既存の戦術やシステムを一度解体し、今の自分たちに最適なかたちへ「再構築」し続けたからです。前期リーグと後期リーグの間に、1か月ほどのリーグ切り替えのための中断期間があります。その期間を利用して、学生コーチや幹部を中心に、戦術、システム、人の並びに至るまで、何が機能していないのかを徹底的に議論しました。

この試行錯誤の結果、後期リーグではチームの戦い方が大きく変わりました。前期に完敗した相手にも次々と競り勝ち、連勝を重ねる中で、ピッチには「今は負ける気がしない」という強い自信が生まれていきました。自分たちの手で「答え」を探り当て、波に乗れたあの流れは、学生主体だからこそ味わえる最高の瞬間でした。

 

 

——なぜ、入部したばかりの1年生全員にも役割を割り振っているのでしょうか?

 

これまでは「4年生がチームを動かし、下級生はプレーだけに専念する」という、ある種の甘えが許される空気がありました。しかし、少人数の国立大学が私立の強豪に勝つためには、全員が組織の一部であるという、強い当事者意識を持たなければなりません。

そこで今年、私は「組織図」を完全に作り変えました。スポンサー・渉外、広報、企画、会計、用具、フィジカルという6つの係を設置し、1年生から3年生までの全員に役割を割り当てました。

誰が何の仕事をしているかを可視化したことで、1年生も「自分たちがこのチームを動かしている」という自覚を持つようになりました。ピッチ外で責任を持つ経験が自信となり、それがピッチ内でも「4年生の不甲斐ないプレーに下級生が怒鳴る」などといった、学年を超えた対等なコミュニケーションを生んでいます。

 

——練習の質を最大化するために、どのような思考を繰り返しているのでしょうか?

 

身体能力や練習時間で勝る私立大に対抗するには、練習の密度を、1秒単位で限界まで高めるしかありません。そのためのカギが「言語化」です。ただ、実を言うと、私はこの部活に入るまで「考えてサッカーをする」ことの本当の意味を知りませんでした。

大学に入り、練習の前後で3〜4人のグループを作り、その日の課題と言語化したフィードバックを共有する習慣に触れた時、「サッカーがこれほどまでに言語的なスポーツなのか」と衝撃を受けたのを覚えています。

なんとなく練習に来て汗を流すだけ、という時間はありません。90分という限られた時間の中で、課題を言葉にし、仲間に伝え、即座に修正していきます。理系の学生がテスト期間にヒーヒー言いながらも、先輩から代々引き継がれるボロボロの原付の上で戦術を反芻するような日常が続いています。

 

——私立大学との「圧倒的なリソース差」を、どう独自の戦略で埋めようとしているのでしょうか?

 

国立大学が直面する最も深刻なボトルネックは「新入部員の確保」です。どんなに有望な選手がいても、受験の壁に阻まれたり、合格してもアメフトやラクロスといったカレッジスポーツに流れてしまいます。

そこで私たちは、ただ待つのではなく「攻めの新歓」を構想しています。その施策として、在籍部員の母校へアプローチし、神戸大学を志望する高校サッカー部員に勉強のアドバイスを行っています。受験期から関係性を築き、合格と同時に私たちの仲間として迎え入れる仕組みを作るのです。リクルーティングもまた、私たちにとっては一つの「戦術」です。受動的な姿勢を捨て、自分たちの手で未来の戦力を手繰り寄せる——こうした主体的な姿勢が、神戸大学サッカー部の特徴です。

 

 

——応援してくれている方々へのメッセージをお願いします。

 

最後になりますが、ご支援いただいているスポンサーの皆様、そして地域の皆様へ。

私たちがピッチで全力で走り抜けることができるのは、皆様からの応援があるからこそ、自分たちのためだけにサッカーをしているのではないと、改めて強く実感できるからです。

私たちは、ただ支援を受けるだけの存在で終わるつもりはありません。自走する組織として、皆様の思いにしっかりと応えられるよう、最大限のリターンと敬意を持って活動していきます。

今年のスローガン「結実」は、勝利という結果だけを指すものではありません。私たちが提供できるリターンや社会貢献活動を通じ、地域の熱量を1度上げるような価値を形にすることを目指しています。

「3部優勝・2部昇格」という最高の結果で、皆様に恩返しをさせてください。これからも長くパートナーとして、私たちの挑戦を共に支えていただければ幸いです。