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「アナライザー」が導く勝利の方程式。データドリブンな組織改革とは?——九州大学女子ラクロス部

九州大学女子ラクロス部は、2025年の「七大戦」で歴代初の優勝を達成し、存在感を高めています。強さの背景にあるのは、大学スポーツではまだ珍しい「アナライジングスタッフ(AS)」の配置と徹底したデータ分析にもとづく戦略立案。学生主体の組織でありながら、役割分担と意思決定が高度に機能する“データドリブンなチーム”へと進化を遂げています。本記事では、その組織運営の仕組みと強さの源泉に迫ります。

 

——怪我の功名から生まれた「アナライジングスタッフ(AS)」

 

 

九州大学女子ラクロス部の大きな特徴は、マネージャーとは別に「アナライジングスタッフ(AS)」という専門のチームスタッフが存在することです。この制度は、怪我でプレイヤーを断念せざるを得なかった部員が「別の形でもチームに貢献したい」と強く願ったことをきっかけに生まれました。ASは、自チームと相手チームの選手一人ひとりを徹底的に分析し、そのデータをもとに戦術幹部がゲームプランを策定します。分析内容は練習にも反映され、相手チームの動きを再現した“想定練”を実施。より実戦に近いトレーニングを可能にしています。。あるメンバーの個人の情熱から生まれた新たな役割が、今やチームの勝利に欠かせない“頭脳”として機能しています。

 

——「全員が主役」を実現する班制度とマネジメント

 

 

部員全員が主体性を持って活動できるよう、チームは緻密な組織設計を行っています。プレイヤー、AS、マネージャーといった役割に加え、全員が「育成班」「経理備品班」「SNS班」などの班に所属し、運営に携わります。特徴的なのは、新入生の配属プロセスです。各班が企画書を用いて業務内容をプレゼンし、新入生はそれを踏まえて希望を提出。その後、希望と適性を考慮して配属が決まります。配属後も定期的に希望調査を行い、上級生を含めて再編成することで、「やりたいことに挑戦できる環境」を維持しています。

さらに、月1回のリーダーズ会議や運営幹部のフォローによって、組織全体にモチベーションが循環する仕組みを整えています。

 

——本音でぶつかるファミリー制度とメンタルトレーニング

 

 

九州大学女子ラクロス部では、組織の心理的安全性を高める取り組みも徹底しています。ファミリー制度やバディ制度を導入し、学年を超えて本音を共有できる関係づくりをサポート。さらに、月1回のメンタルトレーニングでは、コーチとともに個人の目標設定やチーム全体の土台を確認しています。。以前は、モチベーションの差や遠慮が課題になることもありましたが、これらの施策により互いの価値観を理解し合い、同じ方向を向いて進む“強い集団”へと変化しました。「楽しく、本気で勝ちにいく」という軸を共有しながら、信頼関係を築いています。

 

——輝く個がチームを照らす「ALL STAR」という理念

 

 

チームの理念である「ALL STAR」には、一人ひとりが芯を強く持って輝き、「日本中を魅了し愛され続ける存在であれ」という思いが込められています。日々の練習での復唱や、目標の言語化と共有など、地道な行動が理念の浸透を支えています。個々の成長志向が合わさることで、チーム全体に明確な方向性が生まれ、組織としての一体感が強まりました。九州大学女子ラクロス部は、学生スポーツの枠を超え、自律した個が連携して成果を出す組織のモデルケースと言えるでしょう。

 

——最後に

 

「絶対に全国大会に出場します」と力強く語るキャプテンの佐藤さん。データに基づいた戦略、緻密な組織マネジメント、そしてメンバー全員の情熱。九州大学女子ラクロス部の挑戦は、これからも多くの人に勇気と感動を届けていくはずです。