ステージの先へ。D-mcで培う“社会で通用する力”立教——立教大学ダンスサークルD-mc
立教大学の非公認インカレダンスサークル「D-mc」は、1996年に設立された団体です。所属人数は約600名と大規模で、ストリートダンスの主要な大会で結果を残し続けています。
多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まる中、どのように組織をまとめ、目標に向かって進んでいるのでしょうか。
今回は、30代目会長を務める河内俊之介さん、31代目会長の長谷川凱士さんに、D-mcの組織運営の実情や、大人数をまとめ上げる大変さ、そこで培われる力についてお話を伺いました。

——貴団体の概要を教えてください。
河内さん:D-mcは、立教大学所属の非公認インカレダンスサークルです。1996年に設立され、2026年で設立30年になります。所属人数は1年生171名、2年生134名、3年生137名、4年生約140名の合計約600人と、関東でもトップレベルの規模を誇る団体です。メンバーのうち立教大に所属しているのは3〜4割ほどで、専門学生や社会人など、多様なメンバーが在籍しているのが特徴です。大学の枠を越えて、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。
大会実績も長年積み重ねてきており、主に出場しているのは「全日本ストリートダンス選手権(通称:オールジャパン)」と「Japan Dancers’ Championship(通称:JDC)」の2大会です。2026年度はJDCで優勝した実績もあります。今年度はオールジャパンには出場せず、JDC一本に絞って挑戦しています。2026年は、JDC予選を1位通過で本戦に進出。2025年はオールジャパン団体戦で準優勝を果たしました。また、1年生大会である「First Challenge〈ファッチャ〉」では2020年から6連覇中です。そのほかクルーバトルでも優勝するなど、結果を残し続けています。
規模だけでなく、実績の面でも関東トップクラスを目指しており、「優勝を狙う」が前提にあるダンスサークルだと考えています。

——メンバーには未経験者も多いのでしょうか?
河内さん:はい、ダンス未経験で入ってくるメンバーも多いです。入部のきっかけはさまざまで、D-mcが多くの大会で優勝しているサークルだから「自分も優勝したい」と強いモチベーションを持って入ってくる人もいれば、知り合いがいたから、立教のサークルだったから、という理由で入る人もいます。そのため、最初から全員が優勝を本気で狙っているわけではありません。しかし、D-mcという環境の中にいることで、徐々に大会や優勝に対するモチベーションが上がっていくのだと感じています。
活動頻度も人によって異なります。複数ジャンルのダンスに取り組むメンバーは週4〜5回練習がありますが、ジャンルを絞ったり、イベントを一部休んだりする人は週1回程度の参加です。全員が同じペースで活動するわけではなく、それぞれのスタイルで関わることができる点も魅力です。
ダンスの練習以外に、合宿などのイベントがあるため、メンバー同士での交流も自然と生まれています。ダンス未経験から入っても、環境の中で刺激を受けながら成長できる点もD-mcの大きな強みです。
——部での役割体制について教えてください。
河内さん:役割は細かく分かれており、主に下記の係があります。
・会長、副会長
・SNS係
・広報係
・営業係
・施設係
・イベント係
・飲み会・合宿係
・会計係
・忘れ物係
・3年生マネージャー
・2年生マネージャー
・メモリー係
中でも少し珍しいのが「忘れ物係」です。ダンスは帽子や小物などを落としやすいので、メンバーの持ち物を保管したり、持ち主を探したりする役割があります。600人規模の組織になると、会長一人では運営が回りません。だからこそ、それぞれの役割が機能していることが大切になります。
役割の決め方は、自分が会長になる頃にはすでにある程度組織として完成していました。しかし、何か問題が起きたときに「こういう係があった方がいい」「この係にはこういうサポートが必要」とフィードバックを重ねながら、少しずつ改善してきた結果、今の体制になっています。状況に応じて組織をアップデートし続けている、というのがD-mcの役割体制の特徴だと思います。

——600人規模の組織運営で難しいことは何ですか?
河内さん:一番難しいのは、全員を納得させることです。10人規模であれば「仕方ないよね」で通る理由でも、600人いると価値観や判断基準がさまざまで、同じ説明でも受け取り方が人によって異なります。全員にとって筋の通った行動や理由を示すのは、本当に大変です。私が意識しているのは、意見の衝突やすれ違いがあったときは、できるだけ対面で話すようにすることです。「ちょっと今いい?」と呼んで、自分がどう感じていたか、伝え方が悪かったなら謝る、など本音で対話することを大事にしています。
もし自分一人では手が届かない場合は、考えに賛成してくれているメンバーに思いを共有し、そこから広げてもらうこともあります。ルールは特別厳しいものではなく、挨拶や施設の使い方など一般常識の範囲内です。ただ、その当たり前を徹底することが、大きな組織を維持するうえでは重要だと感じています。
——会長として辛かった経験はありますか?
河内さん:あります。会長が対応する仕事は他の係よりも多く、決定に関わる仕事も多いため、反発を受けて「みんなのためにやっているのに」と迷うこともありました。正直、心が折れかけたこともあります。そんな時、副会長が私の異変に気づき、「最近どう?」と声をかけてくれました。そこで本音を話せた経験が、諦めずに続けてこられたと感じています。
一度気持ちを切り替えて、改めて自分たちの活動やメンバー全体を見直しました。すると、決定に対して不満そうだったメンバーも、本番を通して「良かった」と思ってくれていたことに気づいたんです。笑顔や「ありがとう」という言葉を改めて受け取れたことで、「もう一回頑張ろう」と思えました。
——2026年どういう組織にしたいか、目標やビジョンはありますか?
長谷川さん:私たちD-mcはダンスの上手さが強みのひとつなので、その強みをもっと前面に出していきたいです。公演などでも、ダンスの上手さそのもので人を沸かせられる組織にしたい。クオリティで圧倒できるチームでありたいという思いがあります。
その第一歩が、いま挑戦しているJDCでの全国優勝です。幹部の中でも、優勝を明確な目標にしています。大会で結果を出すことが、D-mcの実力を示す一番分かりやすい形だと思っています。600人規模の組織になると、どうしても色が薄まってしまう団体もあると思います。しかし、D-mcとしての強みや熱量をしっかり持ち続けながら、真剣に目標に向かって取り組む組織でありたい。その積み重ねが、2026年のD-mcをつくっていくのだと思っています。

——D-mcで培った力は、社会でどう活きますか?
河内さん:まず一番大きいのは、緊張しなくなったことです。最近は就活イベントに参加することもあるのですが、いつも600人の前に立って話してきた経験があるので、面接官が一人であればほとんど緊張しません。その度胸は確実についたと思います。また、D-mcの活動を通して、社長や経営者の方とお話しする機会が多かったため、コミュニケーション能力や、自分から切り込んでいく力は以前よりも身についたと感じています。会長の仕事は、ダンスだけではありません。会計のことを考えたり、今後の方針を決めたりと、ほとんど経営者のような立場です。運営や経営に関する知識や視点は、この経験を通して多くを学べたと感じています。
まだ知らないことも多いですが、何も経験していない学生と比べれば、社会に出てからもより強く貢献できる土台はできているのではないかと感じています。現在は就活イベントに参加しながら、自分の視野を広げて、「自分は何をやりたいのか」「今のうちに準備すべきことは何か」を考えている段階です。D-mcでの経験は、その判断軸をつくる大きな材料になっています。
——最後に、支えてくれている方々へメッセージをお願いします。
日々応援いただいている皆さまのおかげで、私たちD-mcはここまで続けることができています。いつも温かい声援やサポートをありがとうございます。これからも、当たり前を当たり前と思うことなく、日々感謝の気持ちを持ち活動してまいります。また、これからもD-mcは多くの人に感動を届けられるよう精進し、皆様にも還元できるよう努めてまいりますので、これからも何卒D-mcをよろしくお願いいたします。

600人規模の組織をまとめ、全国優勝を本気で狙い続ける。その過程で求められるのは、ダンスの技術以上に、対話する力や決断する覚悟、そして多様な価値観を受け止める視点でした。D-mcでの経験は、ステージの上だけで終わるものではありません。組織を動かし、人と向き合い、結果に責任を持つという日々の積み重ねは、社会に出た後も確かな力として活きていくはずです。
執筆:青木千奈(株式会社Koti)