「尊敬され、愛される集団」に。サッカーの枠を超えた価値を生む——成蹊大学体育会蹴球部
100年以上の歴史を持ちながら、今もなお進化を続ける成蹊大学体育会蹴球部。競技力の向上にとどまらず、学生主体の運営やスポンサー企業・地域との連携など、サッカーの枠を超えた取り組みに挑み続けています。
今回は主将の梶谷一晴さんにお話を伺い、チームが掲げる目標や学生主体での組織運営のリアル、大切にしている価値観をお伝えしています。
——部の概要や、年間スケジュール、メンバー構成について教えてください。
成蹊大学体育会蹴球部は、1918年に設立された長い歴史を持つ体育会サッカー部です。活動拠点は成蹊大学サッカー場で、メンバー構成は選手69名、マネージャー9名、アナリスト2名、レフリー1名の合計81名です。文理比率は「文系1:理系1」となっています。学年ごとにバランスよくメンバーが在籍しており、競技面だけでなく運営や組織づくりにも学生主体で取り組んでいる点が特徴です。

——練習日程や年間スケジュールについて教えてください。
チームはA・Bに分かれており、それぞれ練習日程が異なります。全体練習は基本90分で、1週間の練習日程は以下のとおりです。
月:OFF
火:A18:50~/B7:00~
水:A17:00~/B18:50~
木:A7:00~/B17:00~
金:A7:00~/B18:50~
土日試合(時間は不定)
年間スケジュールは公式大会と定期戦を軸に進めています。4月から7月にかけては東京都・神奈川リーグ前期が行われ、チームとしての完成度を高めていく期間です。8月の学習院大学・甲南大学との定期戦では、交流をしつつも競技力向上を目指しチームの質をより深めます。9月から10月はリーグ後期戦で、ここが4年生の引退時期となります。11月には東京都サッカートーナメントや京レジカップに参加し、12月はオフ期間として次シーズンに備えます。
また、1月2月には「MOTHERS CUP」や「成蹊フェスティバル」を通して地域や高校生と関わる大会を企画し、競技外の活動も積極的に行っており、サッカーを通じた人間的成長を大切にしています。
——部として掲げている目標を教えてください。
部として掲げている目標は、東京・神奈川リーグ2部優勝、そして関東リーグ昇格です。これまで4年間、「関東昇格」を大きな目標に掲げて取り組んできましたが、今季(2025年)は思うような結果が出ず、降格という現実も経験しました。2026年はその悔しさと向き合いながら、まずは2部で確実に優勝し、1部へ復帰することを現実的な第一目標として据えています。目標設定については、まだ整理しきれていない部分もあります。だからこそ今は、一人ひとりが現状を受け止め、チームとして何を積み上げるべきかを考える段階にあります。結果から逃げず、もう一度這い上がる──そのプロセス自体を大切にしながら、チームづくりを進めています。

——学生主体の運営体制をしている点が部の特徴だと伺いました。どのような役割分担を行っていますか?
学生主体の運営体制は、成蹊大学体育会蹴球部を語る上で欠かせない要素です。会計や広報、スポンサー対応といった役職はすべて学生が担っており、日々の意思決定も学生同士で行っています。ただ役割を分担するだけでなく、「自分たちのチームは自分たちでつくる」という意識を全員が持ち、どうすれば部としてより良い方向に進めるのかを常に考えながら活動しています。その根底にあるのが、『尊敬され、愛される集団でありたい』という価値観です。特に、スポンサー企業と連携した大会運営は、その姿勢が最も表れている取り組みで、学生が主体となって企画・調整・運営までをやり切る経験は、部の象徴的な活動だと言えます。
——スポンサー企業を絡めた大会の運営について詳しく教えてください。
マザーズカップとは、成蹊大学体育会蹴球部が主催・運営に関わる3日間の高校生向けの大会です。吉祥寺を拠点とするイタリアン企業「株式会社MOTHERS」様と共催しており、2025年で3回目の取り組みです。この大会は単なる勝敗を競う大会ではなく、人とのつながりや感謝の気持ちを大切にする場として位置づけられています。部の価値観である「尊敬され、愛される集団」を体現する象徴的な取り組みともいえます。
さらに2025年は「大会運営」そのもの以上に、部全体の意識や姿勢を問い直す場として向き合う場にもなりました。スポンサーであるMOTHERS様からは、これまで継続的に関わっていただく中で、「本当に関東昇格を目指すチームなのか」「その覚悟や雰囲気が、部員全体にまで浸透しているのか」といった点を率直に指摘されてきました。この大会では、地域の方々やスポンサー企業の方々と直接顔を合わせる機会が生まれます。その中で、自分たちの行動や姿勢がそのまま評価につながることを実感しています。試合だけでなく運営面でも役割が明確になることで、「自分はこの組織の一員として何を担っているのか」を考えるきっかけになっています。

——チーム内のコミュニケーションを強化するために行っている取り組みはありますか?
チーム内のコミュニケーションを強化するために、今年から新たに取り入れているのが主に2つの取り組みです。
1つ目が、練習内で導入している「ポジティブリーダー」の制度です。毎週2名のリーダーを選出し、練習前後に「今日どんな意識で取り組んだか」「プレーや雰囲気の中で感じたこと」を言葉にして全体に共有してもらっています。発信する側は自分の考えを整理する力が養われますし、聞く側も受け身ではなく、意図を汲み取りながら練習に向き合う姿勢が自然と身につきます。実際に、発信の難しさや聞く姿勢への意識が変わったと感じる部員も多いです。
2つ目は、「3人1組のグループ制度」です。3年生・2年生・1年生がそれぞれ1人ずつで1グループを組み、月に1回ミーティングを行います。内容は堅いものばかりではなく、目標設定やこれまでの取り組みの振り返りに加えて、「最近チームをどう感じているか」といった率直な意見交換を、昼ご飯を食べながらフランクに話す場になっています。グループ制度を始めた背景には、昨年(2024年)の反省があります。関東昇格を狙える位置にいながら、最終的に10位に沈んでしまった大きな要因の一つが「学年間のコミュニケーション不足」です。仲は良いものの、チームとして一体になりきれなかった。その課題を解決するために、今年から本格的にスタートしました。
——これまでの取り組みを通して、梶谷さん自身が成長したと感じる点はありますか?
1番の成長は、「発信すること」と「人の話を聞く姿勢」の両方が大きく変わった点だと感じています。特に、ポジティブリーダーの取り組みを通じて、練習前後に自分の考えや感じたことを言葉にして全体に伝える機会が増えました。最初はうまく言語化できず難しさを感じていましたが、続ける中で「どう伝えれば相手に届くか」を考えるようになり、発信する責任感も強くなったと思います。
同時に、話す側になることで、聞く側としての姿勢も大きく変わりました。ただ指示を待つのではなく、「この人は何を伝えようとしているのか」「自分はどう行動すべきか」を考えながら聞けるようになり、練習への向き合い方も能動的になったと感じています。また、上の学年が抱え込みすぎず、下の学年に任せていくことの大切さにも気づきました。引き継ぎの仕組みづくりなどを通して、個人ではなく組織として成長する視点が身についたことも、自分自身の大きな成長だと思っています。
——最後に、企業・地域の方、そして入部を考える学生へメッセージをお願いします
2025年は関東昇格を目標に掲げてきましたが、結果として2部降格という悔しいシーズンとなりました。だからこそ今、組織として何が足りなかったのか、目標に向けた熱量を本当に全員で共有できていたのかを、改めて真剣に見つめ直しています。関東で「最もタフに走り、闘うチーム」になることを目指し、一つひとつの課題に向き合いながら、勝ち続ける集団へと生まれ変わります。必ず1年で1部へ昇格し、その先にある関東昇格という目標を達成できるよう、日々努力を重ねていきます。今後とも応援のほど、よろしくお願いいたします。

サッカー競技だけでなく、“自分たちのチームは自分たちでつくる”という姿勢を大切にする成蹊大学体育会蹴球部。部員一人ひとりが当事者意識を持ち、発信と聴く力を磨きながら、仲間と共に高みを目指す姿は、社会でも強く活きる経験です。目標に向かって挑戦し続ける彼らのこれからが楽しみです。