お問い合わせ

衝突を乗り越え、データで支えるチームへ――立命館アジア太平洋大学ラクロス部

創部以来、「九州ファイナル3」への進出を目標に掲げている立命館アジア太平洋大学(APU)ラクロス部。主力選手の卒業後、2年連続でリーグ最下位となる苦しい時期も経験しましたが、2025年は1年生チームが全国大会に出場するなど、上向きの兆しが見えています。主将の西山泰世さんは、感情的な衝突を経験した反省から、データに基づく指導への転換を進めています。

大分県内では数少ない大学ラクロス部として、限られたリソースの中で工夫を重ねてきたAPUラクロス部。西山さんに、チームの目標と指導方針の転換、そして運営面での課題について伺いました。

 

 

――チームの目標を教えてください。

競技面での目標は、創部当時から突破できていない「九州ファイナル3」に進出し、その先へ勝ち進むことです。それに加えて、「リスペクトを持って楽しんでラクロスに勝つ」というスローガンを部員に共有し、理念として掲げています。

 

――直近の成績はいかがでしたか。

2023年のリーグ戦で4位という成績を収めましたが、そこから主力だった先輩たちが抜けて戦力が落ち、2年連続で最下位という苦しい時期が続きました。それでも2025年は1年生が1年生大会で全国大会に出場するなど、チームとして上向いてきている実感があり、次のシーズンこそ目標を達成したいと考えています。

 

――「リスペクトを持って楽しむ」というスローガンは、どのような経緯で掲げたのですか。

なかなか結果が出ない時期、結果が出ないもどかしさから、部員同士で言葉がきつくなってしまう場面がありました。自分が3年生だったとき、1つ上の代の先輩がいるという安心感から自分自身が競技を楽しむことに意識が向き、チーム全体に目を向ける意識が十分ではなかったという反省があります。だからこそ主将になってからは、お互いへのリスペクトを持つことをチームづくりの最重要事項として伝えるようにしています。

 

 

――指導方針にも変化があったそうですね。

感情的な衝突を避けるため、現在は、データや事実に基づいて伝えることを重視しています。シュートの成功率や、クリアやパスの成功率といった定量データをトレーナーに測定してもらい、その結果をもとに部員と改善点を共有するようにしました。感覚だけで改善点を伝えるよりも、数値を示した方が意図を共有しやすいと感じています。

 

――今、チームが抱えている一番の課題は何ですか。

2年連続の最下位という結果から、プレー中に互いを信頼して任せきれない場面があることです。データによってチームや個人の得意な部分と改善点を可視化することはできましたが、それでもミスを恐れてしまう選手はまだいます。改善したい課題がある選手には個別にアドバイスをしたり、自主練習に誘う回数を増やしたりしながら、同じミスを繰り返さないよう取り組んでいます。九州ファイナル3への道のりは決して簡単ではありませんが、技術面だけでなく戦術理解の面でも着実に力がついている実感があります。

 

――大分県という環境で、指導者やリソースの面での課題はありますか。

大分県内では、大学ラクロスを継続的に指導できる経験者を見つけることが難しい現状があります。現在は、東京で働くOB2人にオフェンスとディフェンスのコーチをお願いし、定期的にオンラインでミーティングを重ねています。それでも直接プレーを見てもらえる機会は限られるので、マネージャーに撮影してもらった練習動画をもとに、良かったプレーと改善点をコーチに確認してもらうようにしています。また、高い競技力を持つ他大学の選手とつながりのある部員から練習メニューの情報を共有してもらうなど、限られたリソースの中でも情報を集める工夫を重ねています。百聞は一見にしかずと言われる通り、オンラインだけで技術を伝えるのは簡単ではありませんが、それでも情報を取りに行く姿勢を大切にしています。

 

 

――他大学と比べて、活動がハードだと伺いました。

APUには長期休暇中に活動量を抑える部活動もある中、自分たちは長期休暇中も基本的に練習を続けています。特に夏休みはリーグ戦の時期と重なるため、東京や大阪など県外出身の部員も大分に残って活動を続けています。夏場は防具を着用して長時間練習するため、暑さへの対応も必要です。主力が抜けてチームが弱くなった時期には、厳しい暑さの中で練習を重ねても結果につながらず、苦しさを感じることもありました。それでも、現状と理想のギャップを埋めようと努力を続けることに価値があると考えていますし、同期がSNSで自主練習の様子を共有し合うなど、励まし合える環境が支えになっています。

 

――運営面ではどのような課題がありますか。

APUは国際性を大切にする大学で、海外の文化を学びたいという学生も多くいます。チームとして一定の練習参加を求める一方で、そのバランスをどう取るかという難しさがあります。海外出身の学生が在籍していた時期には、言語の違いがある中で戦術を共有する難しさに向き合ったこともありました。文化や言語の壁を越えて意思疎通する経験は、チームにとって大きな学びにもなっています。

 

――資金面の課題について教えてください。

大分県内で大学ラクロスの対戦機会が限られているため、リーグ戦のたびに福岡まで遠征する必要があります。防具やクロス、給水用のタンクなどの荷物も含めてレンタカーで運ぶ必要があり、レンタカー代やガソリン代、高速料金などを部員で割っても、1回の遠征で1人あたり4,500円ほどかかります。年間6試合に加えて、開幕式や閉会式、1年生大会、委員会活動での会議なども合わせると、遠征費だけで1人あたり年間7万円から8万円ほどの負担になります。防具代なども考えると、経済的負担が、活動を続ける上での課題になることもあります。以前は大学の団体運営に関するルール上、企業との連携が難しい時期もありましたが、今はその制約もなくなり、企業との連携や支援の可能性を探っています。

 

 

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

限られたリソースの中で、遠くにいるOBのコーチや他大学とのつながりを頼りながら、自分たちなりに努力を重ねてきました。大分でラクロスに取り組む大学チームとして、これからも地元企業とのつながりを含めて活動を広げていきたいと考えています。

 

結果が出ない時期に生まれた部員同士の衝突を教訓に、感情だけに頼るのではなく、データも活用して改善点を伝える指導へと変えてきたAPUラクロス部。大分県内に指導者がほとんどいないという制約の中でも、OBや他大学とのつながりを活かして情報を集め、国際色豊かな環境で異なる文化的背景を持つ仲間と意思疎通を図ってきました。指導環境や資金に制約がある中でも、自分たちに必要な情報や支援を外部から取り入れながら改善を重ねる姿勢は、これから社会に出ていく学生にとっても参考になるはずです。

立命館アジア太平洋大学ラクロス部

主将:西山泰世

創部以来の目標である「九州ファイナル3」の突破を目指して活動している。大分県を拠点に、東京在住のOBによるオンライン指導や他大学とのネットワークを活用しながら競技力の向上に取り組んでいる。国際性豊かなAPUの環境の中で、異なる文化的背景を持つ学生と活動してきた経験があり、今後は地元大分や福岡の企業とのスポンサー関係の構築も模索している。