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感覚ではなく、論理で走る。“考えるセーリング”で目指す全国の舞台——徳島大学ヨット部

徳島大学ヨット部は、1954年に設立された歴史あるチームです。監督やコーチなどの指導者はおらず、練習メニューの作成から組織運営までを学生だけで担っています。チームの目標は、コロナ禍以降遠ざかっている全日本インカレ団体戦への出場です。「凡事徹底」をスローガンに掲げ、感覚に頼らない論理的なセーリングと、限られた時間を生かす練習の効率化に取り組んでいます。今回は、主将の長久虎太郎さんに、学生主体で組織を運営する工夫や、競技を通じて磨かれる思考力について伺いました。

 

 

 

——徳島大学ヨット部について、概要を教えてください。

徳島大学ヨット部は、1954年に設立された歴史あるチームで、徳島県鳴門市の日出湾を拠点に活動しており、部員は1年生から4年生、大学院生まで合わせて28名です。そのうち約9割が理系の学生であり、データや理論を重視する文化が根付いています。

ヨット競技は、主に2人乗りの艇で行います。風を読みながら操船技術を競い、いかに速く艇を走らせるかを追求するマリンスポーツです。

現在の大きな目標は、コロナ禍以降遠ざかっている全日本インカレ団体戦に出場することです。直近では、中四国地区新人戦で団体2位、前年度の全日本インカレ中四国予選で3位という結果を残しました。全日本インカレに出場するには予選で1位になる必要があるため、現状に満足せず、日々の練習に取り組んでいます。

 

——チームの特徴は何ですか?

 

私たちの最大の特徴は、監督やコーチなどの指導者がいないことです。強豪大学には、OBからの手厚い支援や外部コーチによる指導がある場合もあります。しかし、私たちは練習メニューの作成から日々の組織運営まで、毎週授業終わりに部会を開いて、すべて自分たちで考え、決めています。

この環境は、私たちにとって大きな強みでもあります。誰かの指示を待つのではなく、勝つために何が必要かを自分たちで考え、行動する習慣が身につくからです。正解が用意されていないからこそ、主体的に試行錯誤を重ねる姿勢がチームの土台になっています。

技術面では、先輩から後輩へ知識を引き継ぐだけでなく、強豪選手の動画なども全員で研究し、自分たちの練習に取り入れています。自分たちで学び、考え、改善していく姿勢が、徳島大学ヨット部らしさだと思います。

 

 

——ヨットをするうえで大切にしていることはありますか?

 

ヨットを論理的に分析しながら競技に取り組むことです。

ヨットは自然を相手にするスポーツであり、風や波のコンディションによって状況が刻一刻と変化します。そのため、その場の感覚に頼るだけでは、安定して上位の順位を維持することはできません。

だからこそ、風の向きや強さがどう変わったからその判断をしたのかを、自分の言葉で説明できることが重要だと考えています。判断の理由を明確にすることで、判断に再現性が生まれ、次のレースにも活かせるようになります。

同じ順位帯を走る艇に負けないためにも、どこで、どのような判断をしたのかを言葉で説明できるセーラーであることが大切です。論理的に考え、再現性のあるセーリングを積み重ねることが、インカレ出場を目指すうえで欠かせないと考えています。

 

 

——チームの課題は何ですか?

 

課題は、団体戦で求められるチームとしての連携と、戦術的な判断力を高めることです。

直近の大会を振り返ると、団体戦は3艇で戦うにもかかわらず、海上での連携が十分に取れていない場面がありました。特に、相手艇が方向転換をした際に、自艇がどの進路を選択すべきかという戦術的な判断に課題があると感じています。

その背景には、知識や戦術を共有する機会の不足があります。本拠地での活動が制限される時期もあり、ミーティングの機会も減っていたため、座学による知識共有が十分にできていませんでした。

そこで新たに始めたのが、週に1回の戦術勉強会です。現在は上級生を中心に行っていますが、今後は1年生も含めて戦術を共有していく予定です。座学を通じて共通理解を深め、海上での判断や連携をチーム全体で強化していきたいと考えています。

 

——スローガンである「凡事徹底」には、どのような思いが込められていますか?

「凡事徹底」には、当たり前のことを徹底することで、限られた練習時間の質を高めたいという思いが込められています。

これまでのチームには、時間を守る意識や活動の効率に課題がありました。土日を中心とした限られた練習時間で成果を出すためには、技術練習だけでなく、日常の行動から見直す必要があると考えています。

そのため、挨拶をする、時間を守る、艇庫をきれいに使うといった基本的な行動を徹底しています。一つひとつは当たり前のことですが、それを積み重ねることでチーム全体の意識が高まり、練習の質や競技力の向上にもつながると考えています。

また、楽しむときは楽しみ、集中するときは集中するというメリハリも大切にしています。その切り替えをチーム全体で意識するために、試合や練習の前後には部独自のエールを全員で行っています。

日常の行動を徹底し、限られた練習時間を最大限に生かせるチームを目指しています

 

 

——練習の質を上げるための工夫を教えてください。

 

練習の質を高めるために、レスキューボートを活用した指導体制を整えています。

これまでは、練習中の部員がヨットの上から指示を出すことが多く、海上全体の動きや各艇の課題を客観的に把握しにくいという課題がありました。そこで、練習内容を事前に共有した上級生がレスキューボートに乗り、全体を見ながら練習を進行する仕組みを取り入れました。

この仕組みによって、各艇の動きを客観的に確認し、その場で具体的なフィードバックができるようになりました。練習全体の流れも整理しやすくなり、限られた時間をより有効に使えるようになっています。

一方で、部員数が限られているため、一人が複数の役割を担う場面も少なくありません。主将として組織運営と競技を両立するためにも、役割分担を見直し、効率的に練習を進められる体制づくりを進めています。

今年は多くの1年生が入部したため、今後は新しい部員も含めて組織をさらに活性化させ、運営と競技の両面で成長できるチームをつくっていきたいです。

 

——ヨットを通じて学んだことは何ですか?

 

論理的思考力と言語化能力、そしてメンタルコントロールです。

私たちの部には指導者がいないため、練習内容や課題を自分たちで考える必要があります。その中で、自分が考えたことを整理し、言葉にして周囲に伝える力が求められました。

特に後輩に技術を教える際には、感覚的な動作を分かりやすく説明しなければなりません。たとえば、初心者は方向転換をするときに、どの方向へ艇を向ければよいのか分からず戸惑うことがあります。そのため、自分が海の上で何を見て、何を根拠に判断しているのかを言語化し、後輩にも理解しやすい指標として伝えるよう工夫してきました。

また、自然を相手にする競技だからこそ、結果に一喜一憂しすぎない姿勢も身につきました。どれだけ考えても読みが外れ、順位を落とすことがあります。しかし、大会は1レースで終わるわけではありません。結果を引きずらず、次のレースに向けて気持ちを切り替える力も、ヨットを通じて得た大きな学びの一つです。

 

 

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。

 

いつも応援してくださり、ありがとうございます。

私たちは監督やコーチがいない環境の中で、練習計画の立案から組織運営までを学生だけで行っています。全日本インカレ出場という目標に向けて、一人ひとりが主体的に考えながら日々活動しています。

こうした挑戦を支えてくださる企業の皆様、そして日頃から応援してくださっているOB・OGの皆様には、心から感謝しています。皆様の期待に応えられるよう、これからも「凡事徹底」を大切にし、当たり前のことを一つひとつ積み重ねながら活動を続けていきます。

また、ヨットは初心者からでも始められるスポーツです。上級生が同じ艇に乗って丁寧に指導するため、競技経験がない方でも安心して取り組むことができます。

ヨットを通じて、考える力や、自分の判断を言葉で伝える力、気持ちを切り替える力を養うことができます。新しいことに挑戦したい方や、大学生活で何かに本気で打ち込みたい方は、ぜひ私たちと一緒に充実した大学生活を送りましょう。