雪上だけでは終わらない。夏の努力でつかむ総合優勝への道——東北大学学友会スキー部
東北大学学友会スキー部は、アルペン、クロスカントリー、コンバインドなど複数の競技部門を持ち、国立十大学スキー選手権大会での男女総合優勝を目標に活動しています。雪上競技でありながら、部員の約半数は大学からスキーを始めています。個人の努力が競技成績に反映されやすい環境と、合宿生活を通じて育まれる部員同士の近い関係性が、チームの土台です。
一方で、高額な用具費や維持費、雪のない夏場に練習への意欲を保つ難しさなど、スキー部ならではの課題もあります。今回は、主将の前川舜馬さんと広報の関口豊萌さんに、競技への向き合い方やチームづくりについて話を聞きました。
——東北大学学友会スキー部について概要を教えてください。
前川さん:私たちは、「国立十大学スキー選手権大会(十大戦)」での男女総合優勝と、「全日本学生スキー選手権大会(インカレ)」での男子2部上位入賞、女子1部残留を目標に活動しています。
競技は大きく3つに分かれています。斜面を滑り降りる「アルペン」、雪上を走る「クロスカントリー」、ジャンプとクロスカントリーを組み合わせた「コンバインド」いわゆるノルディック複合です。
関口さん:部員は約50名で、近年は新入部員も増えています。最近では、フリースタイルのモーグルやスノーボードクロスに取り組む部員も増えており、従来の3部門に加えて、新たな活動枠を設ける準備も進めています。部では、全員がそれぞれの競技でポイントを獲得し、チームの総合順位に貢献することを目指しています。競技に取り組むときはしっかり追い込み、楽しむときは思いきりで楽しむ。その切り替えを大切にしていることも、私たちの特徴です。

——未経験から始める学生が多いと伺いましたが、競技の魅力を教えてください。
前川さん:部員の約半数が未経験者です。アルペンは技術的な要素が大きいため経験者の割合が比較的高いですが、クロスカントリーやコンバインドは、大学から始める学生がほとんどです。
クロスカントリーは体力面が結果に大きく影響するため、陸上部出身の学生などが力を発揮しやすい競技です。走り込んだ分だけタイムの短縮につながりやすく、自分の成長を実感しやすい点が魅力があります。
関口さん:コンバインドに含まれるスキージャンプは、最初は「怖い」というイメージを持たれやすく、競技人口も多くありません。ただ、夏に1年生全員がジャンプを体験する企画があり、そこで楽しさを知って競技を始める部員もいます。競技人口が限られている分、未経験から始めても大会で上位を狙い、チームのポイント獲得に貢献できる可能性があります。自分の努力が部の成績という明確な結果につながる点は、大きな魅力です。
——活動環境や、部員同士のコミュニケーションに特徴はありますか。
関口さん:活動拠点が充実していることは、大きな強みです。アルペン部門は山形県の蔵王に、クロスカントリー部門は長野県の白馬に宿泊施設を持っています。施設の宿泊費がほとんどかからないため、他大学と比べても合宿を実施しやすい環境が整っています。冬のシーズンだけでなく、夏にも部全体で合宿を行い、全員が一つの場所に集まって練習します。
前川さん:合宿中は、2週間ほど共同生活を送ります。一緒に食事を作り、温泉に行き、厳しい練習も共に乗り越えるため、部員同士の距離は自然と近くなります。
実家を離れて一人暮らしをしている学生が多いこともあり、部活のメンバーは、家族のように身近な存在です。練習中は用具について情報交換をしたり、技術面で率直に指摘し合ったりしますが、練習を離れれば和やかな雰囲気があります。

——自由な雰囲気でありながら、実力主義の側面もあるのですね。
関口さん:普段の練習では、遅刻や欠席に対して厳しく叱るような文化はありません。無理に練習へ参加させるのではなく、自分で考えて行動することを大切にしています。
ただし、努力を怠れば、その結果は競技成績にそのまま表れます。大会の出場メンバーも、学年に関係なく、タイムや実力をもとに決まります。先輩だから優先的に出場できるという仕組みはありません。
前川さん:自主性を重視しているため、練習メニューも自分たちで考えて実行しています。早く結果を出して大会に出場したいという思いが強い学生ほど、自主的に朝早くから練習に取り組んでいます。
関口さん:1年生は特に意欲が高く、早朝練習にも先輩より早く集まる姿が見られます。厳しい規則で縛らなくても、努力が結果や出場機会に直結することを理解し、自然と競技への意欲が高まっていると感じています。
——オフシーズンの練習において、難しいと感じる部分はありますか?
前川さん:雪がない夏場に、練習への意欲をどう保つかが最も大きな課題です。冬の雪上練習は競技そのものの楽しさを感じやすい一方で、オフシーズンは筋力トレーニングや走り込みなど、地道で体力的に厳しいメニューが数カ月続きます。そのため、他大学や他の競技者の練習風景をブログやSNSなどで確認し、互いに刺激を受けながら乗り越えるようにしています。
関口さん:上級生は冬のシーズンを経験しているため、自分に足りない部分を理解したうえで夏の練習に取り組めます。しかし新入生は、雪上で競技をする楽しさを知る前に、厳しい陸上トレーニングを続けなければなりません。
競技を体験するために遠方の雪山へ行くにも、リフト代や交通費がかかるため簡単ではありません。競技の魅力に触れる前に、練習の厳しさから離れてしまう新入生もいるため、夏合宿などのイベントを通じて、部への一体感を高める工夫をしています。

——用具の維持や活動資金といった運営面の課題について教えてください。
関口さん:スキーは用具に費用がかかる競技であり、維持費や活動資金の確保は常に大きな課題です。たとえばジャンプ競技で使用するブーツは非常に高価で、現在は破損した部分を補修しながら使っています。
ほかの部門でも、ファスナーが壊れたウェアを使い続けているケースがあります。用具の不備がけがにつながる可能性もあり、安心して競技に取り組める環境を整える必要があると感じています。
前川さん:資金面では、OB・OGの方々からの寄付金が大きな支えになっています。ただ、それだけで安定的に活動を続けることは簡単ではないため、新しい取り組みも始めています。
関口さん:現在は複数の企業に協賛をお願いし、練習着にロゴを掲載する形でスポンサー契約を結んでいます。さらに、大学対抗のギビングキャンペーンにも参加し、さまざまな方法で運営費を確保しようとしています。部員の費用負担を少しでも減らし、安全に競技へ集中できる環境を整えていきたいです。
——大学での部活動を通して、どのような学びや成長がありましたか?
前川さん:高校までは、顧問の先生が決めた練習メニューに取り組むことが普通でした。しかし大学の部活動では、方針やスケジュールをすべて自分たちで決めます。特に主将という立場になってからは、自分たちで組織を動かし、方向性を定めていく難しさを痛感しています。過去の先輩方のように、競技の結果でチームを引っ張りながら、周囲を広く見て的確に判断できるリーダーが理想です。その理想に少しでも近づけるよう、日々試行錯誤しながら学んでいます。
関口さん:私は中高生の頃、学校の運動部には所属せず、地域のクラブで個人としてスキー競技を続けていました。そのため大学でスキー部に入り、チームでスポーツに取り組む意味や難しさを初めて実感しました。一人では諦めてしまいそうな厳しいトレーニングでも、仲間と励まし合いながら取り組むことで、最後までやり切れることがあります。現在は広報として、スポンサー対応にも関わっています。
資金面で支援してくださる企業に対して、どのように価値を還元できるのかを考えながら活動しています。競技の結果や日々の発信を通じて応えていきたいという責任感も、大学の部活動を通じて強くなりました。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
前川さん:東北大学学友会スキー部は、日頃から応援してくださる皆様への感謝を忘れず、これからも全力で競技に取り組んでいきます。
私自身、主将としてまだ未熟な部分もありますが、部員全員が充実した環境で日々の練習に打ち込めるよう努めていきます。そして、最大の目標である十大戦での男女総合優勝と、インカレでの目標達成に向けて、チーム一丸となって進んでいきます。
関口さん:ご支援いただいている企業の皆様、OB・OGの方々には、多大なご協力をいただき、心から感謝しています。皆様からの温かいご支援があるからこそ、私たちは高価な用具を維持し、充実した合宿環境のもとで競技に集中できています。
いただいたご厚意に応えるためにも、それぞれの部門で部員一人ひとりが全力を尽くし、大会でのポイント獲得や総合順位という目に見える結果で恩返しをしたいと考えています。これからも東北大学学友会スキー部の挑戦を応援していただけますと幸いです。