本気で勝ちたい女子が集まる場所。北海道発・全国への挑戦——北海道大学女子ラクロス部
北海道大学の広大なキャンパスの一角で、厳しい自然環境と向き合いながら日々練習に励むのが、北海道大学女子ラクロス部です。
雪に覆われたグラウンドや、限られた屋内施設という決して恵まれているとは言えない環境の中でも、彼女たちは「学生主体」というスタイルを大切にしながら、全国大会での勝利を目指しています。
今回は、北海道大学女子ラクロス部の前主将、高野杏菜さんにお話を伺い、チームの成り立ちや大切にしている価値観、学生主体で組織をつくる難しさ、そして北海道から全国を見据える想いについて深堀りしていきます。

——部の概要を教えてください。
北海道大学女子ラクロス部は、1990年に設立されたチームで、活動拠点は北大構内のグラウンドです。練習は月・水・金曜日の6時15分〜9時30分、土曜日の7時〜10時に行っています。
私たちの強みは、限られた練習場所で試行錯誤を重ねながら、工夫して練習を積み重ねている点です。北海道なので、冬はグラウンドが雪で使えなくなります。その時期には体育館や屋内競技場を借りて練習することもありますし、施設が取れなかった日は、雪の積もったグラウンドでトレーニングだけをすることもあります。正直、環境が整っているとは言えません。ただ、私たちにとってはそれが当たり前です。その中でできることを見つけ、ただひたすらに勝利を求めて技術を磨いています。
——部員構成やメンバーの特徴を教えてください。
メンバー構成は合計41名(取材当時)です。内訳は、1年生16名、2年生9名、3年生2名、4年生14名。文理比率は文系:理系=2:8です。
ほとんどの部員が、大学からラクロスを始めた初心者です。2025年のメンバーも、経験者は4年生に1人のみでした。高校まで別のスポーツをしていた子もいれば、これまで部活にあまり力を入れてこなかった子もいます。さらに、メンバーのほとんどが関東出身で、北海道出身は2〜3人ほどです。その影響もあって、部員の9割くらいは一人暮らしをしており、練習終わりにそのまま誰かの家に行ったり、ご飯を一緒に食べたりすることも多く、部活以外での関わりも大切にしています。
——なぜ、未経験からでも女子ラクロスを選ぶ人が多いのでしょうか?
理由は大きく2つあります。
1つは、「本気で打ち込める女子の体育会」が意外と少ないということです。メンバーの中には、バスケやバレーをやっていた人もいますが、大学だと人数が少なかったり、競技レベルの関係で続けにくかったりすることがあります。また、サッカーやハンドボールをやっていたメンバーは、そもそも大学内に該当の部活がないこともあるんです。そんな中で、「もう1回、本気でスポーツをやりたい」という気持ちが、ラクロスを選んでくれる理由になっているのだと思います。
2つ目は、部の雰囲気やメンバーの人柄です。メンバーは真面目で明るい人が多い印象です。私たちの部を選んでくれる人の中には、今まであまり部活をやってこなかったけど、「大学では何か始めたい」「友達が欲しい」という理由で入ってくることもあるのかなと。競技だけでなく、人とのつながりを大事にしているところは、私たちの強みです。

——チームが大切にしている価値観は何ですか?
「勝利・仲間・楽しさ」の3つです。私たちは「全国大会一勝」という目標を掲げているからこそ厳しい練習に取り組んでおり、実現するための道は、楽しいだけではありません。きつい時に踏ん張れるのは、仲間との関係があるからです。そして、“楽しさ”があるからこそ、最後までやり切ることができます。そのバランスは、世代が変わっても変わらない私たちの大切な価値観です。人数が多い代も少ない代もありましたが、明るい雰囲気の中で、本気で競技に向き合う空気感は、ずっと共通して持ち続けていました。
——部の年間活動スケジュールを教えてください。
年間スケジュールは、2月にまず「武者修行」と呼ばれる遠征があります。これは北海道外の大学に行って、実戦経験を積むことが目的です。4月は新歓、5〜6月にどさんこリーグ、6月に七帝戦があります。秋になると秋季リーグが始まり、8月に関東遠征、11月に東北遠征を経て11月の全国学生選手権に臨む、という年間スケジュールです。
北海道にいると、どうしても道外の大学と試合できる機会が限られます。2025年には初めて東北遠征も実施しました。今後も一つひとつの遠征を貴重な経験として積み重ねていきたいと思っています。
——「武者修行」や遠征では、どのような経験を積んでいますか?
武者修行は、私たちにとって大切な成長の機会だと思っています。北海道にいると、どうしても道外の大学と試合できる機会が限られてしまいます。その中で武者修行は個人単位で実力を測ることができ、全国のレベルを肌で感じられる数少ないチャンスなんです。
基本的には、武者修行は個人単位で行き先を決めています。上級生になると、自分の課題や今の実力を考えながら、「このレベルの大学で一度やってみたい」「ここなら今の自分を試せそう」という視点で、関東や関西の1部・2部リーグの大学を選ぶことが多いです。地元が関東の子は、帰省を兼ねて行くこともあります。
一方で、1年生はまだラクロス自体も分からないことが多いので、上級生が間に入って調整しています。大学同士でDMを送り合って、「この大学なら受け入れてもらえそうだよ」と紹介したり、過去に武者修行でお世話になった大学さんにお願いしたりしています。
実際に道外の大学と試合をすると、「北海道では通用していたことが、全然通用しない」という場面に何度も出会います。スピード感や1対1の強さ、判断の速さなど、細かいところで差を感じることもあります。しかしその“差”を実感できること自体が、武者修行の一番の価値です。
——北海道内では“一強”と言われる中で、全国をどう見据えていますか?
北海道内では、ありがたいことに「一強」と言ってもらえるような結果を残してきました。しかし「北海道優勝」と「全国大会で1勝する」という目標の間には、想像以上に大きな差があります。
目標を設定するときも、正直すごく悩みました。北海道優勝を目標にするのは現実的ですが、それだと全国を見据えた成長にはつながりません。しかし、いきなり「全国で勝つ」という目標を掲げると、現実とのギャップが大きすぎて、チーム全体がしんどくなってしまう可能性もあります。だからこそ、段階的な進化を意識した目標設定をしています。七帝戦や遠征での結果を中期的な目標として設定し、徐々に全国レベルを体感しながら、少しずつ差を埋めていく、という考え方です。

——学生主体のチーム運営で、難しかったことは何ですか?
難しかったのは、部員一人ひとりの“熱量の差”との向き合い方です。学生主体でやっているからこそ、「全国を強く意識しているメンバー」と、「そこまで気持ちが追いつかないメンバー」が出てきてしまう時期がありました。
部活以外にも、学業やアルバイトなど、それぞれ事情がある中で、全員が同じ温度感でいるのは簡単ではありません。監督やコーチが強く方向性を示してくれるわけではない分、「最終的にどうするのか」を自分たちで決めなければなりません。意見が割れた時に、どこに落としどころを作るのか、誰がどう責任を持つのか。その一つひとつが、想像以上に重たく感じることもありました。
——その課題を、どのように乗り越えてきたのでしょうか?
正直に言うと、「これをやれば一気に解決した」というわけではありません。一つひとつ、時間をかけて向き合っていった、というのが正直なところです。何度もミーティングを重ね、それだけじゃ足りないと、1対1で話す時間も増やしました。
それでも解消できない場合は、コーチに相談して組織面のミーティングを見てもらい、それぞれが「自分はこのチームでどう貢献するのか」を言葉にする機会を作りました。これまでチームでは、「組織のことは学生だけでやる」という気持ちが強かったのですが、今回はあえて外からの視点を入れてみよう、という判断をしたことで、それぞれの役割がはっきりし、練習に向かう姿勢も前向きになったと感じています。
——現在の課題や外部からのサポートについて教えてください。
現在の課題は、費用面のサポートですね。チーム全体の年間予算は約100万円で、主な収入は部費とOGの方々からの支援です。しかし、それだけではどうしても足りない部分があります。特に遠征費は大きく、基本的には交通費や宿泊費を個人で負担しています。北海道から道外に出るとなると、「行きたいけど、金銭的に厳しい」という声が出ることも正直あります。
もし外部からサポートしていただけるとしたら、もちろん金銭的支援はありがたいですし、それだけではなくて、食品やサプリメント、プロテイン、トレーニング器具やスポーツ用品などの物品提供もチームの支えになります。日々の練習の質が上がれば、部員の負担を少しでも減らすことができるからです。
北海道から全国を目指すには、どうしても個人の力だけでは限界があります。だからこそ、私たちの挑戦に共感して、一緒に応援してくださる方が増えたら、本当に心強いと思っています。
——最後に、日々応援してくださる方々にメッセージをお願いします。
私たちは、ほぼ全員が初心者から始めるラクロスというスポーツで目標達成に向けて取り組んでいます。人数の規模や練習環境など他地区に比べて不利な部分もありますが、全国レベルへの意識を絶やさず練習しています。これからも切磋琢磨して実力を磨き続けていきますので、北海道大学女子ラクロス部の応援をよろしくお願いいたします。

限られた環境の中でも、「できない理由」ではなく「どうすればできるか」を考え続けてきた北海道大学女子ラクロス部。学生主体でチームを運営し、対話を重ねながら前に進む経験は、競技を超えて、社会に出た後もきっと生きていくはずです。
執筆:青木千奈(株式会社Koti)