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頭で勝ち、絆でつなぐ――広島大学体育会サッカー部

広島大学体育会サッカー部は、中国大学サッカーリーグ1部に所属し、「頭で相手を上回るサッカー」を掲げて全国大会出場を目指す学生主体の部活動です。フィジカルの面で相手に優位性を持たれる場面でも、戦術理解と判断力で局面を打開します。そんなチームを率いるのが、主将を務める中尾誉さんです。戦術面での工夫や約90名の組織づくり、被爆地・広島ならではの取り組みについて、、中尾さんに話を聞きました。

 

 

――「頭で相手を上回るサッカー」とは、具体的にどのような戦い方なのでしょうか。

 

私たちは南グラウンドを拠点に、平日は16時30分から18時、週末は試合を中心に活動しています。1日の練習時間は限られているので、限られた練習時間の中で相手を上回るため、戦術理解や状況判断を磨くことに力を入れています。2018年の新体制以降は、戦術的ピリオダイゼーションの考え方をベースに、フットサルや実戦形式のトレーニングも取り入れた、独自のトレーニング体系づくりにも取り組んできました。2026年度からは田部井祐介監督のもと、毎週のミーティングで対戦相手を分析し、その内容に応じた練習メニューを組み立てています。相手の特徴に応じて複数の戦い方を使い分けられることが、自分たちの強みだと考えています。2025年12月のインカレでは、明治大学を相手に、前半には自分たちが主導権を握る時間帯もつくることができました。この対応力の高さは、近年一貫した強みになっていると感じています。シーズン中はリーグ戦や天皇杯県予選、総理大臣杯予選、インカレなど複数の大会が続きます。その中でも、チームでは前期リーグの戦いをシーズン全体を左右する重要な期間と位置づけています。

 

――部員数は約90名とのことですが、組織運営はどのように行っているのですか。

 

部員数は取材時点では約90名が所属しています。うち約8割が一般入試で入学した学生です。監督はいますが、運営の中心は学生自身が担っています。SNS運用や試合運営など複数の部門があり、最上級生が各部門のまとめ役となり、下級生が希望する部門に所属する仕組みです。所属部門は基本的に4年間固定で、1つの役割を継続して担う中で専門性を高めています。チームはA・B・Cの3つのカテゴリーに分かれ、夏季は入れ替えが比較的多いです。カテゴリー間の入れ替えは監督・コーチの話し合いで決まり、幹部が意見を求められた際に助言する形で関わることもあります。主将になってからは、自分の声かけの量を増やしたことに加えて、自分のカテゴリーだけでなく、下位カテゴリーの試合も見に行くようにしています。2026年度は立候補した2名の中から投票でキャプテンが選ばれました。自分としては、日頃のプレーへの向き合い方を評価してもらった部分もあるのではないかと感じています。

 

 

――学年を越えてつながる「ファミリー制度」について教えてください。

 

部内の一体感を高める取り組みが「ファミリー制度」です。定期的に、各学年の部員を組み合わせた6〜7人ほどのグループを組み、食事やボウリングに出かけます。メンバー構成はほぼランダムで決まり、普段はカテゴリーや学年が異なり、接点の少ない部員同士が交流するきっかけになっています。ある回では、それまで話したことのなかった部員同士が初めて会話を交わす場面もあり、こうした機会そのものに価値を感じています。ファミリー制度以外にも、オフの日にはサッカーボールを使った学年対抗のキックベースを実施しました。飛んだボールをノーバウンドでキャッチすればアウトになるルールで、普段の練習とは異なる形で、学年を越えて交流する機会になりました。サッカーへの熱量や関わり方は部員によって幅があり、それぞれのモチベーションをどう引き出すかは、主将として向き合い続けている課題です。こうした交流の場を増やすことで、部全体としての一体感を育てていきたいと思っています。

 

――被爆地・広島の大学として、サッカーを通じてどのような想いを発信していますか。

 

私たちが力を入れる取り組みの一つが、長崎大学サッカー部と共に行う「ピースマッチ」です。被爆地である広島と長崎に所在する両大学の学生が主体となって企画するスポーツイベントで、2024年に広島で初開催され、2025年は長崎大学が主催し長崎スタジアムシティで開催されました。2026年は再び広島で開催されました。私自身は岡山県出身ですが、広島大学に進学してから、大学のシンボルマークに込められた平和への意味を意識する機会が増えました。被爆地・広島の象徴を背負って戦っているという意味合いはあると思っています。授業などを通じて平和について考える機会が多いことも、広島大学で過ごす日々ならではの経験だと感じています。

 

 

――スポンサー企業とは、どのような関係を築きたいと考えていますか。

 

活動資金には限りがあり、特に遠征費の確保が課題になっています。全国大会に出場する年は、選手個人の負担を抑えるために部としての支出も増える傾向があります。現在は株式会社アイグランとスガナミ物産株式会社がスポンサーとして支援してくださっており、地域の幼稚園・保育園児を対象にしたサッカースクールを企業と共催するなどの取り組みも行っています。企業に期待するのは、資金面の支援だけではありません。スポンサー企業にも、単なる協賛という関係だけではなく、広島大学サッカー部の活動そのものを応援していただける関係が理想的だと思っています。実際に支援先の企業からリーグ戦の様子を気にかけていただく機会もあり、気持ちが本当にうれしかったです。採用活動を含め、企業側の目的に応じた連携についても企業の意向に応じて柔軟に対応していきたいと考えています。

 

――後期シーズンに向けて、どのようなことが課題だと感じていますか。

 

2023年度・2024年度は中国大学サッカーリーグ1部で2年連続優勝を果たしましたが、2025年度は4位に順位を落としました。2026年度は前期終了時点で3位につけているものの、総理大臣杯予選では敗退し、インカレ出場枠も限られており、厳しい状況にあります。前期にチームとして苦しい状況の中で、チーム全体を前向きな方向へ十分に導ききれなかったことは、4年生としての自分の課題だと思っています。この夏を後期に向けた重要な強化期間と位置づけ、チームとして立て直しに取り組んでいるところです。

 

 

――最後に、応援してくださる方へメッセージをお願いします。

 

部員一人ひとりが、少しでも成長しようと練習に取り組んでいます。後期は一つでも上の順位を目指して、チーム全員で努力してまいりますので、ぜひ会場やSNSで、広島大学体育会サッカー部の戦いを応援していただけたら嬉しいです。

 

学生主体で約90名規模の組織を動かし、資金集めや対外的な関係構築にも向き合ってきた経験は、社会に出た後の組織運営やコミュニケーション力にも通じるものです。ピッチの内外で意思決定を重ねてきた部員たちの姿は、採用を検討する企業にとっても、今の大学生の主体性や粘り強さを知る手がかりになるはずです。