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経験者ゼロから始まった、東北の頂点への挑戦――秋田大学アメリカンフットボール部

東北ではアメリカンフットボールに触れる機会が限られており、大学入学前からの競技経験者も多くありません。そんな環境の中、秋田大学アメリカンフットボール部は所属グループで1位となり、東北リーグの決勝へ進むことを目標に活動しています。2025年シーズンはグループ最下位となりましたが、7位・8位決定戦に勝利し、東北7位という結果でした。1年生から4年生まで合わせても15人(取材当時)という限られた人数の中で、新入部員の確保と定着に知恵を絞ってきたチームでもあります。

SNS担当の高倉史弥さんに、部員確保という最大の課題への向き合い方と、少人数だからこそ得られた学びについて伺いました。

 

 

――チームの目標を教えてください。

東北のアメフトリーグは2つのグループに分かれていて、まずは自分たちのグループで1位になることを目指しています。1位同士が当たる決勝に進むことが、最終的な目標です。グループ分けはシーズンごとに変わるため、対戦相手に応じて準備を進めています。前シーズンは自分たちのグループで最下位となり、最終戦の7位・8位決定戦で勝利して、東北全体では7位という結果でした。1つのグループには4チームが所属しており、9月から始まるリーグ戦に向けて、日々の練習を積み重ねています。

 

――現在、一番大きな課題は何ですか。

人数の確保です。東北では、アメリカンフットボールを身近に経験できる機会が限られており、経験者もごくわずかしかいません。部活動紹介で勧誘しても、なかなか興味を引きつけられないのが現状です。他の競技を選ぶ新入生も多く、アメリカンフットボールの魅力をどう伝えるかが課題です。アメリカンフットボールは1チーム11人でプレーしますが、ポジションの種類が多く、複数のポジションを安定して編成するためにも、一定の人数が必要です。部員数が増えれば、ポジションごとの選択肢や戦術の幅も広げやすくなるため、まずは人数を確保することを最優先課題に置いています。関東や関西と違って身近にアメリカンフットボールを知る機会自体が少ないことも、東北ならではの難しさだと感じています。

 

――新入部員の勧誘で、具体的にどのような工夫をしましたか。

東北リーグで継続的に実績を残している東北大学に相談し、新歓のノウハウを共有していただきました。東北大学自身が東北のアメフトリーグ全体を盛り上げたいという思いを持っていて、新歓の進め方や、新入生へのフォロー方法を整理した資料を共有してもらったことがきっかけです。そこから、大食い大会やビンゴ大会といったイベントを増やし、部活の雰囲気をまず知ってもらうことを意識しました。食事会でもただ食事に行くだけでなく、連絡先を交換し、次に参加できるイベントをその場で案内するところまで、その場でしっかり決めるようにしました。新入生の情報はExcelで一元管理し、興味のあるポジションや参加状況、入部にあたっての不安などを記録し、一人ひとりに継続して声をかけられる体制を整えました。結果として、新歓イベントの参加者は前年度の約10人から約20人に増え、2026年は1年生を7人迎えることができました。

 

 

――部員の離脱を防ぐことも課題だと伺いました。

週4回の練習と学業やアルバイトとの両立の難しさ、高校時代に競技経験がないことで、未経験から競技を覚えるまでに時間がかかることが、継続する上で負担になりやすい要素です。加えて、部費が月5,000円、防具代として初期費用が約12万円かかり、防具代については、分割で負担できるようにするなどの対応も行っています。人数が少ない分、リーグ参加にかかる費用も1人あたりの負担が大きくなってしまいます。実際、入部後に人数が半分ほどまで減った学年もありました。せっかく防具代を払って始めても、練習量や費用の負担が重なると続けるモチベーションを保つのが難しくなってしまうのが実情です。

 

――チームの強みを教えてください。

少人数だからこその学年を越えて意見を言いやすい雰囲気、文化です。下級生が上級生にプレーについて意見を伝える場面もありますが、学年に関係なく意見を受け入れる文化があります。近年は競技経験者も加入したことも大きな変化です。そのうち1人は高校時代に全国優勝を果たした強豪校の出身で、動画で練習や試合を記録して振り返る仕組みや、練習中の水分・栄養補給方法の見直し、けが防止を意識したストレッチ方法など、新しい取り組みを積極的に提案してくれています。以前は代々受け継がれてきたスタイルを守るチームでしたが、今は戦術を大きく変えることも含めて、みんなで話し合いながら新しいことに前向きに取り組めるチームに変わってきました。人数の少なさは弱みでもありますが、変化を受け入れやすい身軽さにもつながっていると感じています。

 

 

――秋田ならではの取り組みはありますか。

冬は雪でグラウンドが使えなくなるため、大学のジムを使った週4回のウェイトトレーニングに力を入れています。私自身も、入部当初と比べてベンチプレスの重量を大きく伸ばすことができました。体格の大きい選手だと120kg近く挙げる部員もいます。アメリカンフットボールやラグビーの経験者でない限り、多くの部員が、大学に入ってから本格的なウェイトトレーニングを始めます。グラウンドを使える時期には、必要に応じて雪かきを行い、できるだけ早く屋外練習へ移れるようにしています。近年は、OBにも試合や合宿、普段の練習へ参加してもらい、チームとの関わりを増やしています。

 

――活動を通じて学んだことを教えてください。

人数が少ないからこそ、一人ひとりが何らかの役割を担うため、責任感と協調性が身についたと感じています。高校時代は人数の多いサッカー部に所属していて、同じ学年で固まって過ごすことが多かったのですが、今のチームでは少人数だからこそ学年を超えて仲良くなり、下級生を支え、声をかける姿勢も自然と身につきました。人数が少ないチームだからこそ得られた人間関係の築き方だと感じています。

 

 

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

一番伝えたいのは、少人数でもチームを続けていくためには、多くの工夫や支えが必要だということです。チームの現状や取り組みを、入部を考えている新入生や、応援してくださる企業の方にも知っていただければと思っています。人数が少ない分、1人が抜けることの影響は大きいからこそ、まずは今いる仲間を大切にしながらチームを続けていきたいです。

 

経験者が少ない地域で、東北大学からノウハウを学び、新歓情報の一元管理と地道な声かけを重ね、7人の新入生を迎えた秋田大学アメリカンフットボール部。少人数だからこそ生まれる責任感と、上下関係にとらわれず新しい取り組みを受け入れる柔軟さは、限られた人数でチームを動かす難しさと可能性の両方を教えてくれます。費用や練習時間の負担も踏まえながら、入部した学生が活動を続けやすい環境をつくろうとする姿勢は、限られた人数や資金の中で組織を運営する難しさに直面している人にとっても、示唆に富んだ事例といえます。

秋田大学アメリカンフットボール部

SNS担当:高倉史弥さん

東北リーグでの1位と決勝進出を目標に、部員確保と定着の両面に力を入れながら活動している。冬季は大学のジムでのウェイトトレーニングに注力し、近年加入した競技経験者の提案も取り入れながら、動画分析やOBとの交流など新しい取り組みも積極的に導入している。企業からのスポンサー支援も含め、活動資金の確保にも力を入れている。