太田川の水面で磨いた対応力を、全国で通用する力に変えるために——広島大学ボート部
広島大学ボート部は、広島市内を流れる太田川の河口付近を拠点に活動しています。潮位や風の影響を受けやすく、練習時間が限られることもありますが、荒れた水面でも力を発揮できる対応力を強みにしています。インカレで舵手付きフォアの入賞を目標に掲げ、関西選手権での上位進出も目指しています。週8〜11回に及ぶ練習、高額な活動費、部員のモチベーション維持など、学生だけでは簡単に解決できない課題にも向き合いながら、競技と組織づくりを続けています。今回は、副務の松谷桂太さんに話を聞きました。

——広島大学ボート部について概要を教えてください。
広島大学ボート部は、2026年現在、約35名で活動しています。大学院に進んだ先輩も数名在籍しています。部全体の男女比はおよそ3対2で、2026年は1年生に女子部員が多く入り、男女比の差も少しずつ縮まっています。
練習場所は、広島市内を流れる太田川です。授業期間中の平日は16時から19時ごろまで練習し、土日は朝から夕方まで、2部練習を行うことが多くあります。オフは基本的に月曜日のみで、練習回数は週8〜11回ほどです。
時間も体力も必要な部活動ですが、ボートが好きで上達したいという思いを持つ部員が多く、最後までやり切る姿勢を大切にしながら活動しています。

——2026年は、どのような目標を掲げて活動していますか?
2026年の大きな目標は、8月のインカレで舵手付きフォアの入賞を果たすことです。舵手付きフォアは、4人の漕手に舵取りを担う1人が加わって行う種目です。部としてはこの種目を中心に据え、全国の舞台で結果を残すことを目指しています。
7月に行われる関西選手権も、重要な大会の一つです。ここでは、決勝または準決勝への進出を目標にしています。2025年の関西選手権では、準決勝まで進んだクルーがいましたが、途中棄権となりました。その悔しさを糧に、2026年は最後まで戦い切り、上位進出につなげたいと考えています。
新人が多く出場する浜寺レガッタでは、1人乗りに出場した2年生が総合3位に入りました。こうした結果も、チーム全体の励みになっています。
——広島大学ボート部ならではの強みは何ですか?
広島大学ボート部の強みは、水面のコンディションが悪い中でも、実力を発揮できる対応力です。普段練習している太田川は河口に近く、潮の満ち引きや海からの風の影響を受けやすい場所です。水面が荒れる頻度は、他大学の練習場所と比べても高いと感じています。
そのような環境で日常的に練習しているため、レース当日に風が強かったり、水面が荒れていたりしても、落ち着いて対応できます。
実際に、浜寺レガッタで3位に入った2年生のレースでは、風が強く、転覆するクルーもいました。その中でも最後まで漕ぎ切り、結果につなげられたことは、太田川の練習で身についた対応力が表れた場面だったと思います。

——太田川での練習環境についてもう少し詳しく教えてください。
太田川での練習は、潮位の影響を大きく受けることが特徴です。海に近い場所で練習しているため、潮が引くと水位が下がり、船を出せないことがあります。そのため、練習時間を固定するのではなく、潮位を確認しながら、その日に水上練習ができる時間帯を判断しています。
日によっては、朝は水上に出られても午後は出られないことがあります。反対に、午前中は練習できず、午後から船を出す場合もあります。潮位や天候によっては、一日を通して水上練習ができない日もあります。
整備されたコースで練習している大学と比べると、私たちには「練習したい時に必ず水上練習ができるわけではない」という難しさがあります。限られた時間の中で水上練習の質を高める必要があるため、事前の準備や、1回の練習への集中度がより重要になります。
水上で漕げない日は、陸上練習に切り替えます。エルゴを使ってフォームを確認したり、ウェイトトレーニングやランニングで体力を高めたりしています。
——部の雰囲気や、文化について教えてください。
部の雰囲気は、練習以外の時間はにぎやかです。オフの日や休憩時間は、部員同士で話しながら過ごすことが多く、明るい雰囲気があります。一方で、練習が始まると全員が真剣に取り組みます。集中できていない部員がいれば、特に上級生には「後輩から見てどう映るか」を意識してもらうように声をかけています。
特徴的な文化として、11月の関西学生秋季選手権には、全員が金髪にして出場する伝統があります。始まった理由ははっきり分かりませんが、昔から続いている文化です。
週末は合宿所に泊まり、土日の練習を一緒に過ごします。部員同士の距離が近くなるため、悩みを抱えた部員と夜に散歩しながら話を聞くこともありました。厳しい練習だけでなく、日常を共有する時間があるからこそ、相談しやすい関係が生まれていると感じます。

——チームが抱えている課題を教えてください。
課題は、部全体の目標と、一人ひとりの目標をどうつなげるかです。2026年のチーム目標は、舵手付きフォアでインカレ入賞を果たすことです。ただ、その目標だけを掲げていると、舵手付きフォア以外の船に乗る部員にとっては、「自分は何のために練習しているのか」が見えにくくなることがあります。
そのため、部全体の目標とは別に、各クルーでも大会ごとの目標を定めています。たとえば関西選手権や新人が多く出場する大会に向けて、それぞれのクルーがどのような成績を目指すのかを決めます。2026年のインカレ出場が難しい部員には、来年のインカレや次のタイム測定を見据えて、段階的に目標を置くようにしています。
大会がない時期には、モチベーションを保つことも難しくなります。その場合は、次のタイム測定を小さな目標にしています。毎回の練習で目指すタイムを決め、目の前の課題を一つずつ解決しながら、大きな目標に届くまでの道筋を細かく分けるようにしています。
——活動費はどのように工面していますか?
活動費は、部費に加えて、OB会や大学からの支援、寄付や物資提供などによってまかなっています。
ただ、物価高の影響もあり、部員一人ひとりの金銭的な負担は大きな課題です。
現在は、部費のほかに大会出場費、遠征費、宿泊費などが必要で、1人あたり年間40万〜50万円ほどを負担している状況です。そのため、金銭的な理由で退部せざるを得ない部員も毎年います。この課題に対して、私たちは収入を増やす取り組みと、支出を抑える取り組みの両面から向き合っています。収入面では、クラウドファンディングの実施や、ホームページを通じたOBの方々への寄付の呼びかけなどを行っています。支出面では、出場する大会やクルー数を見直すことに加え、燃料費や消耗品の節約など、部員自身でできる工夫も続けています。しかし、ボート競技には学生だけではまかないきれない費用も多くあります。たとえば、艇は4人乗りで300万〜500万円ほど、1人乗りでも100万円ほどかかります。こうした現状の中で、OB会や大学からの支えの大きさを日々感じています。
弊部では7月1日よりクラウドファンディングを開始します。現在、遠征時には自前のトレーラーで艇を運搬していますが、老朽化が進み、更新の必要に迫られています。すでに活動費だけでも年間数十万円を負担している部員が、その費用まで自力でまかなうことは難しい状況です。後輩たちがこれからも安全に、そして安心して大会に出場できる環境を守るためにも、ぜひ皆さまのお力をお貸しいただけますと幸いです。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
いつも広島大学ボート部を支えてくださり、本当にありがとうございます。
私たちは、限られた時間や活動費、潮位に左右される練習環境のなかで、インカレで結果を残すことを目指しています。選手もマネージャーも、それぞれの役割に向き合いながら日々活動しています。
練習は、部員だけで成り立っているわけではありません。動画撮影や水上での安全管理を担うマネージャー、船や練習環境を支えてくださるOB・OGの方々、大学、日頃から応援してくださる皆さまの協力のおかげで、私たちは競技に打ち込めています。
この感謝を忘れず、これからも一つひとつの練習を大切にし、インカレで結果を残せるよう努力していきます。今後も応援していただけますと幸いです。
入部を考えている学生には、ボートを知らなくても、ぜひ一度練習を見に来てほしいです。大学から始める部員も多く、競技や仲間との関わりを通じて学べることがあります。