勝ちたい人も楽しみたい人も続けられる部活へ。誰もが続けられる部活でリーグ昇格を目指す——東京海洋大学品川硬式庭球部
東京海洋大学品川硬式庭球部は、1968年に設立され、土曜日の定期練習を中心に、理工科リーグでのさらなる昇格と新入部員の退部者ゼロを目指して活動しています。東京海洋大学にはテニスサークルがないため、勝利を目指して競技に取り組む競技志向の部員と、テニスや交流を楽しみたいエンジョイ志向の部員が同じ部に所属しています。限られたコート環境で、勝利と楽しさをどう両立させているのでしょうか。今回は、部長の長井創さんに、多様な部員を巻き込みながら結束を高めるチームづくりについて伺いました。
——東京海洋大学品川硬式庭球部について概要を教えてください。
私たちは品川キャンパスを拠点に、毎週土曜日の10時から15時まで定期的に練習しています。
部員は1年生が24名、2年生が19名、3年生が14名、4年生が2名です。大学にはテニスサークルがないため、勝利を目指して競技に取り組みたい競技志向の部員と、テニスや交流を楽しみたいエンジョイ志向の部員が所属しています。
活動の特徴は、勝利を目指す姿勢と、部員同士で楽しむ雰囲気の両方があることです。体育会の部活ではありますが、全員が同じ熱量で競技だけに向かっているわけではありません。だからこそ、競技志向とエンジョイ志向の部員が互いの目的を理解し合いながら、部としてまとまることを大切にしています。

——チームの目標を教えてください。
大きな目標は2つあります。1つ目は理工科リーグでの昇格です。直近のリーグ戦で8部から7部に昇格し、現在はさらに上位リーグを目指しています。
2つ目は新入部員の退部者をゼロにすることです。以前は入部後に退部する部員も少なくありませんでした。
勝利だけを重視すると、エンジョイ志向の部員が続けにくくなることがあります。だからこそ、誰もが続けられる環境を整えたいと考えています。そのうえで、競技に本気で取り組む部員は勝利を目指し、試合に出ない部員も含めて全員で昇格を喜べるチームを目指しています。
——もともとはどのような雰囲気の部活だったのでしょうか?
私が入部した当時は、競技志向よりも、交流や楽しさを重視する雰囲気が強い部活でした。試合には出るものの、どちらかというと「テニス部というつながりの中で楽しむ」という雰囲気がありました。練習試合も年に1回ほどで、競技として勝利を目指す雰囲気は今ほど強くありませんでした。
私自身は小学生から高校まで本格的にテニスに取り組んできました。大学はテニスを基準に選んだわけではありませんが、部に入った以上、勝ちたいという気持ちがありました。クラブチームでテニスをしていたため、団体戦の経験があまりなく、大学では団体で勝つ経験をしたいという思いも強かったです。
同期や先輩にも、同じように勝ちたいと思っている人がいました。その人たちを巻き込みながら、少しずつ勝利を目指す意識を高めていきました。

——部の意識を変えるうえで、どのような取り組みをしましたか?
まず取り組んだのは、練習試合を増やすことです。きっかけは、試合のスケジュール管理などを担当する役職に就いたことです。その立場になった以上、競技環境を変えたいと思い、練習試合を積極的に組むようにしました。
入部当初は練習試合が年に1回ほどでしたが、そこから2か月に1回、現在は月に1回ほど定期的に練習試合を組めるようになっています。個人戦で対戦した他大学の選手に声をかけ、上位リーグの大学とも練習試合を組めるようにしました。
ただ、レギュラーメンバー同士の練習試合だけでは、競技志向の強い部員しか試合経験を積めません。そこで、レギュラーメンバーの試合と同じ日に、別会場で試合経験を積みたい部員同士の練習試合を組むことも提案しています。エンジョイ志向の部員にも、試合に関わる入口をつくるためです。
勝利を目指す部員だけでなく、普段は楽しむことを大切にしている部員も試合に触れられる機会をつくることが、部全体のレベルアップにつながると考えています。
——一連の改革の中で、どのような課題がありましたか?
一番大きな課題は、辞めてしまう部員が出たことです。
東京海洋大学品川硬式庭球部は、テニスコートが2面しかありません。全員が集まると、1面あたりの人数が非常に多くなります。その中に、競技志向の部員もいれば、エンジョイ志向の部員もいます。全員が同じ場所で練習するため、練習の強度や雰囲気をどう合わせるかが難しいです。
競技志向の部員が強く打つと、初心者やエンジョイ志向の部員が萎縮してしまうことがあります。逆に、競技志向の部員からすると、もっと練習したいのに十分に打てないと感じることもあります。お互いの考え方が分からないままだと、自然と距離ができてしまいます。
私はその状況を見て、競技志向を強めるだけでは部として続かないと感じました。勝つための環境づくりと同時に、退部する部員を減らす取り組みが必要だと思いました。

——退部者を減らすために、どのような工夫をしましたか?
まずは、活動に参加するきっかけを増やすことを意識しました。定期活動は土曜日だけなので、その日に来たいと思える理由をつくることが大切だと考えました。
たとえば、雨で練習が難しい日には、部室で豚汁を作るなど、集まる理由をつくりました。
昼に豚汁が食べられるから部活に来る、というきっかけをつくりました。部活後にみんなでカレーを作ったこともあります。
以前は行われていたものの一度なくなっていたスキー・スノーボード企画を復活させたり、釣りや登山に行ったり、季節ごとの交流企画を開いたりしました。イベントを増やす目的は、単に楽しい時間をつくることだけではありません。競技志向の部員とエンジョイ志向の部員が話す機会を増やし、お互いを知るためです。
競技志向の部員は、どのような意識で練習に取り組んでいるのかを伝えられます。一方で、エンジョイ志向の部員は、週に1回テニスをしたり、仲間と食事をしたりすることに楽しさを感じていると伝えられます。お互いの目的が分かると、同じコートで練習する時の受け止め方が変わります。
「打つ機会が少ない」「強く打たれて怖い」と感じるだけではなく、相手の背景を知ったうえで関われるようになります。イベントは、そのための交流の場として大切にしています。
——取り組みの成果はありましたか?
退部者は大きく減りました。取り組みを始める前、私たちの代は26名から14名になってしまいましたが、次の学年では、入部後も多くの部員が活動を続けています。辞めた部員についても、テニスが嫌になったというより、個人的な事情が大きかったと受け止めています。
競技志向を強めるだけでなく、イベントを通じて部員同士の関係をつくったことが、退部者の減少につながったのではないかと思います。
新入生の中にも、企画を担う役職をつくっています。これからは、後輩たちの価値観を生かしながら、部の雰囲気をさらに良くしていきたいです。

——部員の雰囲気や性格について教えてください。
目の前のことを全力で楽しむ部員が多いです。テニスでもイベントでも、やると決めたことにしっかり取り組む雰囲気があります。
部活の最後に、競技志向の部員とエンジョイ志向の部員が混ざってダブルスのチャンピオンゲームをすることがあります。競技志向の部員も真剣にプレーしますが、普段はテニスを楽しむことを大切にしている部員も、点を取ったら本当に喜びます。テニスの技術差はあっても、その瞬間を楽しもうとする姿勢があります。
イベントでも同じです。たとえば登山に行くとなった時、誰か1人に任せるのではなく、「このあたりに行きたい」「ここを調べてみたい」と自然に意見が出ます。山に詳しいわけではなくても、自分なりに調べて提案する人が多いです。
——今後、さらに強化したいことはありますか?
今後強化したいのは、資金面です。練習試合を増やしたことで、交通費の負担が大きくなっています。品川キャンパスは利便性が高い一方で、近くに対戦相手となる大学が多いわけではありません。八王子や埼玉方面に行くこともあり、毎回の移動費がかかります。
もう1つの課題は、テニスコートの復旧です。現在使用できるコートは2面ですが、以前は別に3面ありました。その3面は管理が行き届いておらず、現在は使用できない状態です。
業者に依頼すると復旧には多額の費用がかかるので、周囲の協力を得ながら現実的な方法を検討しています。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
OB・OGの皆様には心より感謝しています。皆様のおかげで、私たちは今、貴重な経験ができています。温かいご支援やお言葉に、部員一同励まされています。これからも結果だけでなく、支え合いながら成長する姿をお見せできるよう努めます。
入部を考えている方は、経験の有無にかかわらずぜひ来てください。私たちの部には、勝利を目指して本気で取り組む人も、まずはテニスや交流を楽しみたい人もいます。それぞれの目的を尊重しながら活動できる部です。本気で取り組みたい人には試合の機会があり、エンジョイ志向の人にもイベントや応援を通じて関われる場があります。少しでも興味があれば、ぜひ一度見に来てください。