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部員1人の危機から全日本へ。スポンサー営業と練習改革で挑む学生主体の組織づくり——横浜市立大学体育会ヨット部

横浜市立大学体育会ヨット部は、横浜市金沢区の八景島マリーナを拠点に活動しています。部員のほとんどがヨットの未経験者ですが、全日本インカレ出場を目標に、練習に取り組んでいます。部は今年で創部75年を迎えます。コロナ禍には部員が1人まで減少した時期もありました。それでも少しずつ仲間を増やしながら、競技力向上に加えて、新歓活動やスポンサー獲得や組織づくりにも、学生主体で取り組んできました。今回は、主将の田中夏希さんに、全日本大会を目指すチームづくりと、部の未来を支える組織運営について伺いました。

 

——横浜市立大学体育会ヨット部について概要を教えてください。

 

私たちは横浜市金沢区の八景島マリーナを拠点に活動しています。部員は総勢30名。競技艇は二人乗りのスナイプ級に特化して練習に励んでいます。

通常は土日に練習し、長期休暇中は週5日ほど活動しています。部員はほとんどが大学からヨットを始めた初心者です。

ヨットは風の力で艇を進める競技です。2人で1艇を操艇し、主に舵取りやメインセールを操る「スキッパー」と、ジブセールの調整や艇のバランスを支える「クルー」が協力して艇を走らせます。そのため、2人がそれぞれの役割を果たしながら、どれだけ艇を速く走らせられるかが試されます。スキッパーとクルーが同じ意図を持って動くことが重要です。

 

 

——チームの目標を教えてください。

 

私たちの目標は、全日本学生ヨット選手権大会(以下、全日本)への出場を果たすことです。

前回の全日関東決勝では、最終レース直前まで本戦出場圏内につけていましたが、最終レースでの転覆により出場を逃しました。あと一歩届かなかった経験は、私にとって大きな悔しさであると同時に、悲願の全日本出場への強い原動力となっています。

 

——チームの強みは何ですか?

 

学生一人ひとりが主体的にチームづくりに関わる文化が根付いていることは大きな強みだと言えます。

競技力向上にとどまらず、新歓活動や資金調達など運営面でも学生自身が課題を見つけ、解決策を立てて、「永く強くある」チームの実現に向けて行動しています。一人ひとりが当事者意識を持ち、組織を前に進めようとする姿勢が、チームを支える原動力になっています。競技面でも、その姿勢は変わりません。現状を客観的に捉えながら、必要なことを地道に積み上げ、一人ひとりが着実に力を伸ばしてきました。自ら課題を見つけ、改善を重ねる姿勢が、私たちの競技力を支えていると考えています。

 

 

——練習で工夫していることを教えてください。

 

一つひとつの練習を、確実に成長へ結び付けることを意識しています。

毎回の練習では、その日に取り組む個人目標を明確にし、チーム全体で共有したうえで海に出ます。練習後には必ず振り返りを行い、目標に対する達成度や課題を整理して次の練習へつなげています。また、動画を活用して自分たちの動きを客観的に分析し、感覚だけでは捉えきれない改善点を言語化することも大切にしています。

ヨットは二人で一艇を操る競技だからこそ、コミュニケーションの質がパフォーマンスを左右します。全体ミーティング、ペアでのミーティングに加え、スキッパー同士クルー同士でも積極的に意見交換をします。それぞれの立場だからこそ得られる視点を共有することで、自分だけでは気付けなかった課題や新たな発見にもつなげています。

また、振り返りでは課題だけで終わらせず、良かった点も必ず言葉にします。改善点と成果の両方を整理することで、次に取り組むべきことが明確になり、一人ひとりが自信を持って成長を積み重ねられる環境づくりを意識しています。

 

——資金面の課題にはどう向き合っていますか?

 

ヨットは費用のかかる競技です。毎月部員から徴収する部費だけでなく、私たちは練習日を削って部員全員でアルバイトを行い、その収入を活動費に充てています。しかし、こうした部員の努力だけで活動を維持することは到底難しく、私たちの活動は、OB・OGの皆様や大学からの温かいご支援によって支えられています。それでも艇や部品には高額なものが多く、海外から輸入する用品もあるため、円安や物価高の影響も受けます。

部費を上げる方法も検討しましたが、部員の負担を増やしすぎたくありませんでした。特に一人暮らしの学生にとって、部費の増額は大きな負担になります。コロナ禍で部員が1人まで減った経験もあり、部員数が少ないことによるチーム運営の難しさは実感してきました。そのため経済的な事情によって競技を続けることや入部を諦める学生が生まれる状況は避けたいと考えました。

そこでスポンサー企画部を立ち上げ、スポンサー獲得に取り組みました。当初は右も左も分からぬまま、ひたすら1社1社にメールでご連絡し、部の現状を伝え続けました。

しかし現状は100社の企業に連絡しても、話を聞いていただけるのは1社あるかどうかという状況でした。そのため単に支援をお願いするのではなく、企業ごとに大切にしている価値観を踏まえ、私たちの挑戦や目標との接点を考えながら提案を行いました。その結果、多くの企業の方々に共感していただき、ご支援をいただくことができました。

ただし、資金調達はあくまで活動を支えるための取り組みです。私たちの目標は全日本大会への出場であり、その実現に向けて競技力向上を最優先にしています。だからこそ、いただいたご支援を最大限に生かし、持続可能な組織運営と競技力向上の両立を図ることで、結果で恩返ししたいと考えています。

 

 

——主将として大切にしていることは何ですか?

 

全員が当事者意識を持てる環境であるか、考え続けることです。

これはヨット部に限った話ではなく、多くのスポーツチームに共通する自然な課題だと思いますが、レギュラーメンバーとそうでないメンバーには、レースへの当事者意識にギャップが生まれてしまいます。どれだけ練習に励んでも、たとえ手を抜いても、試合に出場しなければ、チームの結果に結びついているのか実感しにくい傾向があると思います。

しかし学生主体で運営をしていると、試合に出ることだけがチームへの貢献ではなく、運営面の仕事がいかに目標達成に欠かせない役割であることかは明確に分かります。そのため具体的に、会計、営業、広報、新歓活動など、それぞれの仕事が部のミッションにどう貢献しているのかを話し、役割の意義を実感してもらえるよう努めています。

そういったことを部内で共有することで、「この仕事を担当してよかった」「次は競技面でもチームに貢献したい」と前向きに話してくれる後輩もいました。

1on1も実施しています。上級生と下級生が話す機会を設けることで、悩みや学業との両立について相談しやすくなります。一人では到底できないことですが、上級生が積極的にサポートしてくれるため、下級生の部員の状況も把握しながら全員で全日本に向き合う環境づくりにつながっています。

 

——部のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を教えてください。

 

横浜市立大学体育会ヨット部では

ミッション「セーリングで熱狂できる世界をつくり、競技人口の拡大に寄与すること」

ビジョン「全日本出場」「永く強くある」

バリュー「自律的に練習へ取り組むこと」「他者の立場に立って行動すること」「周囲への感謝を忘れないこと」

を掲げています。

このミッションがあるからこそ、新歓活動やSNS発信、スポンサー営業といった運営面の活動にも大きな意味があります。新歓活動やSNS発信は、ヨットを知らない学生に競技の魅力を伝え、競技人口の拡大につながります。また、スポンサー営業も、企業にヨットという競技を知っていただく機会であり、部が永く強くあり続けるための基盤づくりに直結しています。

私たち自身も、大学の新歓期間に初めてヨットという競技を知りました。

だからこそ、SNSや説明会、試乗会を通じて、ヨットを知らない学生にもその魅力を伝えて競技人口拡大に寄与したいと考えています。

実際に、「SNSを見て興味を持ちました」「試乗会が楽しくて入部を決めました」と言ってもらえた時には、自分たちの活動がミッションの実現につながっていると実感し、大きなやりがいを感じます。

 

 

——ヨット部を通して学んだことはありますか?

 

ヨット部で学んだことは、応援されるチームであり続けることの大切さです。

部員一人ひとりが当事者意識を持って行動しなければ、周囲から「応援したい」と思っていただけるチームにはなれないと感じています。限られた時間や資金の中でも、目標に向かって本気で工夫して挑戦する姿勢や、その過程で組織をより良くしようと積み重ねていくこと。その熱量を見ていてくださる方々がいるからこそ、今の私たちは多くの方々に支えられ、応援していただけているのだと思います。

部には歴代の部誌が残されており、先輩方がどのような思いで活動されてきたのかを知ることができます。その歴史に触れるたび、75年にわたり受け継がれてきた歴史の延長線上に身を置いて、競技に打ち込めることに、深い感謝とともに身の引き締まる思いになります。

現役を引退した後も、後輩たちが挑戦し続けられる環境を築くことも、今の私たちに課された責任だと考えています。応援されるチームとは、ある代だけでつくられるものではなく、世代を超えて受け継がれていくものだと考えています。だからこそ、目の前の成果だけでなく、次の世代へ何を残せるかという視点も忘れずに結果を追い求めていきます。

 

 

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。

 

日頃より温かいご支援とご声援を賜りまして、誠にありがとうございます。皆さまの支えがあるからこそ、私たちは全日本大会出場という目標に向かって挑戦を続けることができています。

まだまだ発展途上のチームではありますが、皆さまからの支えを力に変えながら、着実に成長を重ねています。これからも全日本大会出場という目標に向けて努力を重ねて永続的に発展してまいります。今後とも変わらぬご支援、ご声援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。