面白がることから始まる、学生2人の「恋愛研究展」――デジタルハリウッド大学・らぶラボ研究員
2026年12月、原宿で「恋愛研究展」という展示が開かれます。企画しているのは、デジタルハリウッド大学4年生の江川日和さんと堀部真弓さん。チーム名は「らぶラボ研究員」です。「ドキドキ・赤面」「嫉妬」「失恋」をテーマに、恋愛にまつわる心や体の反応を、既存の研究をもとに紹介する展示です。江川さんは「作っている人が面白がっていないと、見る人も面白くない」と話します。
ゼミの卒業制作として始まった企画ですが、展示制作の経験が少ないお二人が、会場探しや資金集めから、文献調査、展示物の制作まで、自分たちで進めています。周囲の助言を受けながら、学生自身の関心と視点を軸に、一から作り上げる展示です。
今回は江川さんと堀部さんに、企画が生まれた経緯、研究を進める中での発見、動いてみて身についたことについて伺いました。
――まず、所属しているゼミについて教えてください。江川さんは、なぜそのゼミを選んだのでしょうか。
江川さん:グローバルリーダーシップゼミです。3年生の後半から所属できて、リーダーシップに関連するグループワークをしながら、卒業制作は何を作ってもいい、自由度の高いゼミです。私はもともと作品制作があまり得意ではなく、ビジネス寄りのゼミに入りたいと思っていました。いくつかの先生の授業を受けた中で、このゼミの先生が一番不思議な方だったんです。変だなと思いつつ、授業の軸はすごくしっかり通っていて。どうせどこかに入るなら楽しめるところがいいと思って選びました。
――恋愛研究展にたどり着いた経緯を教えてください。
堀部さん:もともと展示会をやろうと思っていたわけではありません。別のグループに所属していたのですが、方向性の違いが大きくて、江川さんと話して早めに2人で抜けたんです。そうしたら先生から「新しく企画を立てなさい」と言われました。ゼミ内では、防災フェスティバルや、先輩から引き継いでいる子ども食堂の活性化プロジェクト、アプリ制作なども候補にありました。最終的には、自分たちが一番面白そうだと思った恋愛の展示に決めました。企画が正式に決まったのは2月です。
江川さん:ゼミのグループワークには「学外の人と関わって、誰かが喜ぶことをする」という条件があるので、地域活性寄りの案が多かったですね。
――その中で、恋愛を「研究する」展示にしたのはなぜですか。
江川さん:恋愛は、世代や性別を問わず、多くの人にとって身近なテーマだと思っています。ただ、最近は「あるある」や共感を集める展示が多いので、似たものを作るより、今までにないものがいいと思いました。私は昔から「それってなんで?」と考える癖があるんです。恋愛という行動に「なんで?」を投げかけて掘り下げる展示なら面白いのでは、と思いつきました。
――恋愛について「なんで?」と考えるようになった、具体的なきっかけはありますか。
江川さん:SNSには「彼氏のこれが嫌だ」「彼女のあれが嫌だ」という投稿がたくさんありますよね。嫌だと分かっているのに、なぜ改善につながらないのだろうと思っていました。私自身、体調やホルモンの影響で気持ちが揺れることを実感していたので、「そういう状態だから言ってしまったのかも」と思えることがありました。でも当事者の2人は、そうは思えていないのかもしれません。不満があったときに、自分や相手を責めるのではなく、「体の中でこういう反応があったから、しょうがないよね」くらいに思えたら、関係が良くなる人が増えるのではないかと考えました。
――テーマを「ドキドキ・赤面」「嫉妬」「失恋」の3つにした理由を教えてください。
江川さん:最初は、みんなの失恋経験や黒歴史を集める展示も面白いよね、という話をしていました。でも、それではマイナスのイメージに寄りすぎてしまう。恋愛の明るい部分を考えたとき、付き合う前が一番キラキラしていて共感しやすいと思い、ドキドキを加えました。
堀部さん:嫉妬は、ネットで流れてくる愚痴に一番多い感情だと感じていました。なぜ嫉妬するのか、どんな価値観から生まれるのかを分析できたら面白いよね、ということで入れました。

面白さと正確さを、どう両立するか
――展示の目玉はどこになりそうですか。
江川さん:これまでに出ている研究をもとに、恋愛中の人の状態に当てはめるとこうなる、という見せ方がベースになると思います。どういう要因があってその反応に至るのか、その過程をきちんと展示できたら、目玉になるかもしれません。
堀部さん:もう一つ固めているのが恋愛診断です。会場で診断を受けて、最後に結果のステッカーをお渡しします。物販にもつながる形ですね。
――研究や制作準備を進める中で、印象に残った発見や、参考にしているものはありますか。
江川さん:「吊り橋効果は本当なのか」を扱った本を読みました。効果が強いというイメージがありますが、研究を振り返ると、条件の設定が平等でなかったり、結論の出し方が強引だったりする部分があると書かれていて。それでも世の中に広く普及しているのが意外でした。その後、埼玉工業大学の心理学の先生に企画について相談し、統計の結果をどう解釈して結論にするのかを教えていただきました。「結果はこうだ」と言われている研究も、見え方が変わると気づきました。
堀部さん:人の体はそれぞれ違うのに、同じことを感じて共感する人が多いのが面白いと思っていました。考え方は人によって違うのに、なぜ人は結ばれるのか。その疑問をイラスト付きで分かりやすく解説しているTikTokの動画を見て、あんなふうに分かりやすいコンテンツを作れたらいいなと思っています。
――エンタメ性と正確さは、どう両立させていますか。
江川さん:言いたいことに関連しそうな文献はきちんと調べます。自分の考えとぴったり一致する結論がなくても、近い研究は意外と見つかります。結果を見て、言いたかったことが少し違うかもしれないと思えば、表現を変えるようにしています。
――会場を原宿に決めた理由と、今の課題を教えてください。
堀部さん:関東圏で探したのですが、会場がとにかく高くて、自分たちの出せる範囲ではどこも難しかったんです。ずっと探して、低予算で借りられそうな場所が1か所だけ見つかったのが原宿でした。課題は集客とお金、それから展示する実物をどう作るかがまだふわっとしていることです。原宿は人は多いのですが、会場は少し外れにあって、ふらっと立ち寄ってもらいにくいかもしれません。本番前に学内でも展示を試したいと考え、学園祭への出展を予定しています。
江川さん:私は個人でアプローチできる人が少ないと痛感しています。「面白そう」とは思ってもらえても、その先に具体的に何があるのかを伝えきれていないので、もっと具体的に発信していかなければと思っています。
――外の人に連絡したり、人を集めたりする場面での苦労はありましたか。
江川さん:私は外の人と連絡を取るのが苦手で、企業に声をかけていた頃は「やりたくない」と思いながらやっていました。でもお金は集めなければいけないので、先生に行動を促されながら進めました。最近は「メールならまあいいか」というノリで、メールだけは頑張れるようになりました。
堀部さん:人手が足りないときは、それぞれの友達に声をかけて手伝ってもらっています。原宿の当日は2人では絶対に足りないので、友達に頭を下げるつもりです。

――2人の意見がぶつかることはありませんか。
堀部さん:正面からぶつかることはあまりないですね。どちらかが抜けたら終わってしまうので、お互いの意見を聞いて折り合いをつけてきました。
――半年以上取り組んできて、身についた力はありますか。
江川さん:外部の人と話す力です。これまではそういうことが得意そうな人にお願いしていましたが、人がいない中でやるうちに、少しずつ話せるようになりました。問い合わせ先の探し方やメール対応も、実践で身につきました。
堀部さん:企業への連絡は以前からやっていましたが、ゼロから企画の案を出すのは苦手でした。今回は内容が3〜4回変わっていて、そのたびに次の案を出し続けたので、そこは力がついたと思います。
――企画をやってみたいけれど一歩踏み出せない人へ、アドバイスをお願いします。
堀部さん:足りないことが分かったら、すぐに改善案を出して動くことです。「とにかく足で稼げ」とゼミの先生に言われています。早く動かないと全部崩れていってしまうと感じています。
江川さん:企画をやりたいと思うなら、もともと好奇心があるはずです。それをつぶさないでください。作っている人が面白がっていないと、見る人も面白くないと思います。どうやったら楽しめるかを考えて、楽しい方へ進めばいいのではないでしょうか。

――最後に、当日来てほしい人と、今ほしい支援を教えてください。
江川さん:メインターゲットは、同年代の20歳前後の女性です。暇だなと思った人が、気軽に30分だけでも足を運んでくれたら嬉しいです。ほしい支援は、広報や集客の協力です。原宿は私たちもあまり顔が広くない土地なので。
堀部さん:カップルで来ても面白いと思います。恋愛での考え方や体の反応の違いも少し展示する予定なので、「そっちはそういう考えだったんだ」「体の反応でああ言っちゃったんだね」と理解し合って、けんかが減ったらいいなと思います。
恋愛という身近なテーマの「なんで?」を、既存の研究から探る恋愛研究展。会場探しや資金集め、企画の見直しを重ねる中で、お二人は外部とのやり取りや、新たな案を生み出す力を身につけてきました。自分たちの好奇心を大切にしながら、必要なことには一つずつ取り組む。その姿勢は、初めて企画づくりに挑む学生にとっても、ヒントになりそうです。
恋愛研究展(らぶラボ研究員)
メンバー:江川日和(デジタルハリウッド大学4年)/堀部真弓(デジタルハリウッド大学4年)
グローバルリーダーシップゼミの卒業制作として、2026年2月に企画が決まった展示です。「ドキドキ・赤面」「嫉妬」「失恋」の3つをテーマに、恋愛の場面で体の中で何が起きているのかを、実際の研究をもとに見せます。2026年12月に原宿で開催予定です。展示の概要やクラウドファンディングについては、CAMPFIREのプロジェクトページをご覧ください。
https://camp-fire.jp/projects/962900/view
X:https://x.com/vKAJQ6sqOR27476
Instagram:https://www.instagram.com/renaiten.dhu?igsh=YTc1NWUwdnlzb3Z0