「消費者」から「創造者」へ。学生の挑戦の出発点をつくる――学生団体カラクリ
「消費者から創造者へ変わるための出発点をつくる」。この理念を掲げ、2026年に発足した学生団体カラクリ。代表の本田晴喜さんの卒業研究をきっかけに発足し、わずか2カ月で運営メンバーが約35人に集まりました。何をする団体かをあらかじめ決めず、学生が本気で取り組める機会をつくっていくという、活動内容を固定しないことも、カラクリの特徴です。
企画を進めている大型イベントについては、関係先との調整中のため詳細な公表を控えつつ、団体としての理念や組織のあり方、そして学生団体ならではの運営の難しさについて本田さんに伺いました。


――学生団体カラクリは、どのような団体か教えてください。
学生がサービスやコンテンツを受け取るだけの「消費者」から、自分の力で何かを生み出す創造者に変わるための出発点をつくる団体です。「カラクリ」という名前も、ゼロから創り出すという意味を込めてつけました。特徴的なのは、あらかじめ「これをする団体です」と決めていないところです。いろいろな切り口から、ワークショップやイベントといった形で、学生が本気で取り組める機会を仕組んでいくことを目指しています。何をやるかよりも、関わった学生がどう変わるかを大切にしている団体です。
――団体を立ち上げたきっかけを教えてください。
もともとは大学の卒業研究として始まったプロジェクトでした。地域に新設される大型公共施設で、学生主体の大規模なイベントを開催することになり、そのために団体としての体制を整えたのがきっかけです。現在は卒業研究の枠を超え、継続的な活動として本格的に取り組んでいます。将来的には法人化も見据えていて、自分が卒業した後も活動が続く組織にしていきたいと考えています。まだ法人化の形式がNPOなのか一般社団法人なのかも決めきれていない段階ですが、一過性のプロジェクトで終わらせるつもりはありません。

――本田さんご自身が、この活動を始めた理由を教えてください。
「人の心を動かすこと」を人生の目標に掲げていて、大学では企画やデザインを中心に学んできました。学生のうちから、旅館やウェディングプランナー、マーケティング会社など、自分の経験につながりそうな環境へ積極的に飛び込み、インターンを重ねてきました。そうした経験を積むほど、次の挑戦につながる選択肢が増えていくことを実感してきました。学生のうちは責任や制約が少なく、いろいろなことに挑戦しやすい時期です。だからこそ、より多くの選択肢を持てる学生になってほしいという思いで、この団体を立ち上げました。学生時代に何かを経験しておくことの大切さは、自分自身が実感してきたからこそ強く伝えたいと考えています。
――どのようなメンバーが集まっているのですか。
団体としての構造は代表、副代表、事務局長の下に経理・営業・人事・制作・広報・総務の6つの部署を置き、役割ごとに部署を分けた組織体制を取っています。オンライン説明会なども活用し、大学を越えてメンバーを募集しています。メンバーの出身大学は多摩地域を中心に多岐にわたり、学部も理系・文系を問わずさまざまです。学年もバラバラですが、共通しているのは「何か一つのことに本気で取り組みたい」という思いを持つ学生が多いことです。最後の学生生活で何かをやり切りたい4年生もいれば、チームでの活動が好きな学生、就職活動を見据えて経験を積みたい下級生もいて、参加する目的は人それぞれです。
――メンバーのモチベーションを、どのように大切にしていますか。
入会を希望する学生には、必ず「入ってどうなりたいか」を聞くようにしています。本気で取り組む分、学業やアルバイトとの両立が大変になり、実際に活動をやめていく学生もいます。だからこそ、メンバーの大切な時間を使ってもらっているという自覚を持ち、関わったことで何か一つでも経験や学びを持ち帰ってもらえるよう、一人ひとりが持つ目標に近づけるよう、役割や挑戦の機会をつくることを大切にしています。定期的に会議を開き、限られた時間の中で集中して議論した後は、みんなで食事に行くような関係性も築けています。

――今、企画しているイベントで大切にしていることは何ですか。
イベントの成功をどう定義するかというと、来場者の数だけではなく、運営に関わるメンバー自身が「自分が関わったからこそ何かが生まれた」という自己効力感を得て成長することだと考えています。最初は自分1人で走っていた企画に、自分から手伝いたいと言ってくれるメンバーが増え、自分ごととして企画に関わるメンバーが増えてきました。運営メンバーには、まず自分自身がイベントを通じて当事者としての経験を積んでほしいと思っています。その姿を見た来場者にも、何かに挑戦するきっかけを持ち帰ってもらえたらと考えています。
――運営面では、どのような課題がありますか。
学生主体の団体として、大規模な会場を借りたり、企業や行政と連携したりする交渉の場面で、安全面や責任体制への信用を得ることが最初の大きな壁でした。しかし、そこを妥協するのではなく、現在は空間・技術監修や安全警備のプロフェッショナル企業と正式に連携し、学生の熱意とプロの技術を掛け合わせた『共創体制』を構築しています。役割を明確に分担することで、安全管理やクオリティをプロ基準で担保しつつ、学生たちは自分たちにしか生み出せない企画や熱量づくりに120%専念できる環境を作っています。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
私たちはイベントだけをやる団体でも、特定の地域のためだけに活動する団体でもありません。あえて活動内容を限定せず、ワークショップや地域イベントへの出展、ボランティアへの参加でも、学生が本気で取り組める場であれば形にこだわらずつくっていきたいと考えています。すでに協力いただいている企業のイベントにボランティアとして参加させてもらうなど、大きな企画以外の関わり方も少しずつ広げています。実際に、それまで自分から行動することが多くなかったメンバーが、団体での活動をきっかけに自分から動けるようになり、将来の選択肢を広げていった例もあります。今後も、活動を次の世代につなぐメンバーを増やしていきたいと考えているので、興味を持ってくれる学生がいたら、ぜひ気軽に飛び込んできてほしいです。
「何をする団体か」をあえて決めず、学生一人ひとりが本気になれる場をその都度つくっていく学生団体カラクリ。企業や行政との連携で求められる、学生団体としての信頼や責任体制に向き合いながら、来場者数だけでなく、メンバー自身の成長もイベントの成果として捉える姿勢からは、活動内容を固定せず、人の成長を軸に組織をつくるカラクリならではの考え方が見えてきます。
役割ごとに部署を設けた組織構造を持ちながらも活動内容を固定しない柔軟さは、メンバーの主体性を引き出す組織づくりを考える人にとっても、参考になる部分があるのではないでしょうか。
学生団体カラクリ
代表:本田晴喜
発足から2カ月で運営メンバーは約35人に拡大。代表、副代表、事務局長のもとに経理・営業・人事・制作・広報・総務の6部署を置く組織体制をとり、将来的な法人化も視野に入れて活動している。大型イベントの企画運営を中心に、ワークショップやボランティア活動など多様な形で学生が挑戦できる場をつくることを目指している。