感覚ではなく「言葉」と「データ」で戦う。論理的ハンドボールが生む組織力——京都大学ハンドボール部
私立の強豪校がひしめく関西学生リーグの中で、スポーツ推薦制度のない環境でありながら、知略と組織力で勝利を目指している京都大学ハンドボール部。
限られた練習時間や経験の差を言い訳にせず、相手の戦術を徹底的に分析し、勝利を追求しています。日々の練習では、感覚的になりがちなプレーを言語化し、データも活用しながら戦術を構築しています。
さらに、活動は競技面だけにとどまりません。中高生への勉強・競技指導や、企業へのスポンサー営業など、「応援されるチーム」を目指した取り組みにも力を入れています。
なぜ彼らは、自ら考え、組織を動かしながら挑戦を続けるのでしょうか。今回は、京都大学ハンドボール部の活動や組織づくりについて、キャプテンの谷口煕樹さんと学生コーチの岩本浩希さんに話を伺いました。

——京都大学ハンドボール部について概要を教えてください。
谷口さん:京都大学ハンドボール部は1948年に設立され、現在はプレイヤー28名、マネージャー11名、学生コーチを含む約45名で活動しています。マネージャーには他大学の学生も参加しています。
練習は学内の総合体育館で行っており、平日は夕方に2時間半〜3時間、日曜日は3時間、週4〜5日のペースで活動しています。
チームの目標は、関西1部リーグへの昇格、西日本インカレでの予選突破、そして全日本インカレ出場です。近年は1部リーグでも戦っており、2023年の春リーグでは約50年ぶりとなる1部昇格を達成しました。その後3シーズンにわたって1部リーグで戦いましたが、昨年秋に2部へ降格しました。現在は再び1部復帰を目指して練習に取り組んでいます。

——普段の部の雰囲気や、メンバーの性格について教えてください。
岩本さん:上下関係はあまり厳しくなく、和気あいあいとした雰囲気です。年に1回のバーベキューや、学年を混ぜた縦割り班での筋力トレーニングなど、学年を超えた交流も多くあります。筋トレ後に、そのまま班のメンバーでご飯に行くこともあります。
また、部の“あるある”として、毎年1人は個性的なメンバーが入ってきます。一見すると運動が得意そうには見えないのに、試合では大活躍するような部員です。そうした意外性のあるメンバーがいるのも、この部の面白さだと思います。
勉強との両立については、テスト期間はしっかり勉強に集中し、それ以外の時期はハンドボールに打ち込むなど、みんな上手くバランスを取っています。
——部の強みは何ですか?
谷口さん:一番の強みは、「頭を使ってハンドボールをする」ところです。同じ2部リーグに所属する相手チームには、スポーツ推薦で入学した経験豊富な選手が多く、同じ土俵で戦っても簡単には勝てません。そのため、相手の戦術やサインプレーを細かく分析し、自分たちが優位に立てるポイントを探しています。例えば、速攻を武器にするチームが相手なら、こちらはディフェンスを固めて試合のテンポをコントロールするなど、相手に合わせて戦い方を変えています。
岩本さん:さらに、チームにはデータ分析を専門に行う「アナライジングスタッフ」がいます。マネージャーを含めて10名以上が関わっていて、相手がどの位置から、どの程度の確率で攻めてくるかなどをデータ化しています。試合前や試合中にそうした客観的な数字を共有できるので、ミーティングでも戦術に説得力が生まれます。チーム全体が納得感を持って戦術に取り組めている点も、強みのひとつだと思います。

——チームを運営する中で、直面した壁や課題はありましたか?
谷口さん:試合に出るメンバーが固定化していたことで、レギュラーと控えの選手の間にプレーの認識のズレが生まれていたことが課題でした。レギュラーメンバー同士では共通認識ができていても、控えの選手が入ると連携が上手くいかない場面が多くありました。部員は約30名いるので、誰が試合に出ても同じレベルでプレーできる状態をつくらなければ、チーム全体として安定して戦うことはできません。特に、経験の少ない選手は周囲の動きを予測するのが難しく、その点がチームの弱みとして表れていました。
——その課題を解決するために、具体的にどのような工夫をしましたか?
谷口さん:感覚だけでプレーするのではなく、動きの意図を言葉で共有することを徹底しています。オフェンスリーダーを中心に、「なぜそのプレーを選んだのか」を説明する時間を増やし、全員が理解したうえでプレーできるようにしています。
岩本さん:また、チームには外部コーチが来てくださっているのですが、その指導内容を噛み砕いて、学生に分かりやすく伝えることも、学生コーチの大切な役割です。まずは数人のリーダー陣でコーチの意図を整理して理解し、その内容をチーム全体に共有する流れを作っています。感覚的になりやすい部分を論理的に整理して伝えることで、メンバー間の認識のズレを減らせるように工夫しています。

——「応援されるチーム」を目指して、競技以外で取り組んでいる活動について教えてください。
谷口さん:私たちは、勉強か部活のどちらかを言い訳にするのではなく、学業にも励みながら全国レベルを目指す姿勢を大切にしています。ただ自分たちがハンドボールを楽しむだけでなく、限られた時間の中で文武両道に挑戦する姿を知っていただくことで、「応援したい」と思ってもらえるチームになりたいと考えています。そのために、SNSでの情報発信や、企業様とのスポンサー契約に向けた活動にも取り組んでいます。
岩本さん:私たちは、ただ「応援してください」とお願いするだけではなく、社会に還元できる活動をすることが大切だと考えています。その一つとして最近始めたのが、部員が中高生のもとへ直接足を運び、ハンドボールの技術指導と勉強のサポートを行う取り組みです。文武両道に取り組む私たちだからこそ提供できる価値を届けることで、企業やOBの方々にも共感していただき、スポンサー契約などにつなげていければと考えています。
谷口さん:また、私たちのチームにはスポーツ推薦がないため、未来の部員は自分たちで集めていく必要があります。中高生への指導は、リクルーティング活動の一環でもあります。現在は部員の出身校を中心に訪問していますが、今後はまだ接点のない学校にも活動を広げていく予定です。全国の中高生に「京都大学ハンドボール部でプレーしたい」と思ってもらえるようなチームを目指すとともに、ファンとして応援してくださる方も増やしていきたいと考えています。
——大学での部活動を通して、自分自身が成長したと感じる部分はどこですか?
谷口さん:ハンドボールを論理的に考え、それを言葉にして伝える力が身についたことです。高校までは感覚的にプレーしている部分が大きかったのですが、大学では「どうすれば上手くなれるのか」をチームメイトと話し合いながら考えるようになりました。戦術やプレーの意図を言語化しながら取り組むことで、ハンドボールへの理解も深まったと感じています。もっと早い段階からこうした考え方でプレーできていれば、さらに競技を楽しめていたのではないかと思います。
岩本さん:私は、自分から主体的に動くことの大切さを学びました。プレイヤー時代は、目の前のハンドボールに取り組むことが中心でしたが、学生コーチになってからは、チームの目標を達成するために何が足りないのかを考え、自分から動くようになりました。
指示を待つのではなく、自分たちで考えて組織を動かし、プレイヤーだけでなくスタッフも含めて全員が成長できる環境を作ることに、今は大きなやりがいを感じています。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
谷口さん:日頃から温かい応援をいただき、本当にありがとうございます。皆さまの支えがあるからこそ、私たちは関西1部リーグ昇格という目標に向かって全力で取り組むことができています。期待に応えられるよう、これからもチーム一丸となって努力を続けていきます。
岩本さん:企業の皆さまやOBの皆さまをはじめ、いつも応援してくださっている方々、本当にありがとうございます。私たちは勝利を目指すだけでなく、社会に貢献できる活動や、多くの方に応援していただけるチームづくりにも力を入れています。
これからも競技面・活動面の両方で成長し、応援してよかったと思っていただけるチームを目指していきます。引き続き、温かいご声援をよろしくお願いいたします。