アメフトは準備のスポーツ。ビジネスの最前線で勝ち抜くための「徹底した事前準備」と「足りないピース」の埋め方——神奈川大学アメリカンフットボール部出身 梅垣光理
「自分には尖った能力はない。だからこそ、組織の中で代えのきかない存在になるための戦略を考え抜いた」。そう語るのは、現在circus株式会社でセールスとして活躍する梅垣光理さん。大学から未経験でアメリカンフットボールを始め、社会人トップリーグで9年目を迎える現在も第一線でプレーを続けています。
新卒入社した企業ではMVPを獲得するなど、ビジネスの現場でも確かな実績を残してきました。その裏には、実力者たちに囲まれる中で抱いた葛藤と、「近道をして成果を出せるタイプではない」という冷静な自己評価、そして地道な事前準備の積み重ねがありました。体育会での経験はいかにして「再現性のある強み」へと変わっていったのか。梅垣光理さんにお話を伺いました。

——梅垣さんの簡単なご経歴と現在のお仕事を教えてください。
高校卒業まではサッカー部に所属し、大学からアメリカンフットボールを始めました。アメフトは社会人になってからも続けており、国内トップリーグの「オリエンタルバイオシルバースター」というチームに所属し、現在は9年目のシーズンを迎えています。
仕事の経歴としては、1社目は人材系の広告会社である株式会社キャリアデザインセンターに入社し、約2年半営業を経験しました。当時はコロナ禍で営業が制限される中でしたが、新卒MVPに選出されました。その後、スポーツ学生特化型の人材スタートアップ企業に転職し、キャリアアドバイザーやリクルーティングアドバイザー、事業開発など、ポジションの枠にとらわれず3年半ほど幅広く経験を積みました。
現在は、人材紹介プラットフォームサービスを展開するcircus株式会社にて既契約の企業様向けのコンサルティング営業のメンバーとして働いています。
——長年続けてきたサッカーから、大学でアメフトに転向した経緯を教えてください。
高校時代は都大会ベスト16のサッカー部で、自分の能力が高くない分、誰よりもコツコツと練習に取り組みました。当時のチームは「一番努力する人間についてくる」組織で、普段からの姿勢が認められて3年時にはキャプテンを任せていただきました。
大学でもそのままサッカーに挑戦するつもりでしたが、進学先の神奈川大学サッカー部は、当時4年生に伊東純也選手(現日本代表)をはじめトップレベルの選手が集まる強豪でした。チームの圧倒的なレベルの高さを前にサッカーでの挑戦を断念し、代わりに大学から始める人の多いアメフトの道を選びました。
アメフト部に入部してからも、高校時代の成功体験を頼りに、ひたすら自分を律して努力を重ねました。特に1年生から3年生までは「自分が試合に出ること」にフォーカスし、やるべきことを徹底する毎日でした。

——キャプテンとして組織をまとめる中で、どのような葛藤や気づきがありましたか?
大学4年時にアメフト部でキャプテンに選ばれたのですが、多様な価値観を持つメンバーが集まる組織をまとめるのには本当に苦労しました。「一番努力する人間についてくる」という高校時代の感覚とは異なり、私にはプレーで引っ張る力も、全員を惹きつけるようなカリスマ性もありませんでした。
今振り返って反省しているのは、モチベーションや考え方が異なるメンバーと正面から向き合えず、本音でぶつかることを避けてしまっていたことです。チームに対する彼らなりの思いを汲み取り、もっと対話を重ねるべきでした。この反省は、ビジネス現場における対人関係や組織づくりにおいても、大きな教訓となっています。
——能力が高い選手が多い中で、どのようにご自身の価値を発揮されたのでしょうか?
能力の高い選手たちの中で生き残るために意識していたのは、「組織に求められている自分の武器を見つけ、特定の領域で突出した存在になる」でした。ジェネラリストを目指すのではなく、組織に足りないピースを見つけて、そこで代えがきかない存在になる戦略を立てました。
大学のアメフトでは「キッキング」という領域に狙いを絞り、高いレベルのパフォーマンスが出せるよう自身の技術を磨き続けました。自分がプレーを遂行できなかった際に組織にとってどんなマイナスがあるのか、自分の強みをどう活かせば組織に貢献できるのかを常に考え抜きました。自分の立ち位置を客観的に理解し、小さな工夫をルーティン化して積み重ねていくプロセスを大切にしていました。

——体育会時代のご経験が、今どう活きていると思いますか?
大きく分けて二つあります。
一つは「期待値のコントロール」です。社会人になっても部活と同様にすぐに結果に繋がることはないと考え、一喜一憂せずにコツコツと取り組むことが重要だと考えていました。そのため、昨日できなかったことをどうすればできるようになるのかを考え、営業トークやアプローチを少しずつ変えながら試行錯誤しました。そうした地道な工夫の積み重ねの先に、新卒MVPという結果がついてきました。マネジメントにおいても、「最初から完璧にできる人はいない。成長には時間がかかる」と気長に構えることで、ポジティブにチームを引っ張れるようになりました。
もう一つは「徹底的な事前準備」です。1社目の上司は、お客様のことを徹底的に調べる方でした。その背中を見たとき、アメフトの経験と重なりました。アメフトも「相手がこう来るから、自分たちはこうする」という、いわば後出しジャンケンのような「準備のスポーツ」です。自分の価値を評価してもらうためには、相手を知り、分析し、頭を使って準備をすることが不可欠です。この「自分に時間を投資してくれる相手のことは徹底的に調べる」というスタンスは、今の仕事の基礎になっています。
——社会人になっても競技を続け、成長できている秘訣は何でしょうか?
純粋にアメフトが好きというのが一番の理由です。トップリーグともなれば周囲は強豪大学出身の選手ばかりですが、無名だった私も9年間プレーし続けられています。大学時代にはまったく歯が立たなかった相手に対して「今の自分なら十分にトップレベルで勝負ができる」という確かな実感もあります。それも、最前線に立ち続ける原動力の一つになっています。
もちろん、社会人とアスリートの両立は簡単ではありません。週末は朝8時に集合して9時から練習というスケジュールで、金曜日の夜遅くまで会食があり、翌朝そのままグラウンドへ向かうような日もありました。限られた時間と限られたプレー回数の中でベストを出すためには、熱意だけでなく「頭の中の整理」が必要不可欠です。
仕事でも意識しているのですが、「同じことを2回言われないようにする」というルールを自分に課しています。1回目で知らない、できないのは仕方ありません。しかし、2回同じミスをすれば「考えていない」と評価されてしまいます。やってはいけないことを明確にし、考えてプレーや仕事に落とし込む。こうした習慣が、社会人になってから競技でも仕事でも評価されるようになった理由だと思います。

——最後に、キャリアに悩む体育会学生へメッセージをお願いできますか?
「迷ったら、とりあえずやってみる」というスタンスを持ってほしいです。今は、調べればすぐに答えが出ることが多いためか、失敗を恐れて保守的になる学生が増えているように感じます。しかし、行動して失敗したからこそ得られる学びもあります。
学生のうちは、たとえ失敗しても十分にやり直せます。自分で限界や基準を勝手に決めないでください。行動して失敗し、そこから学習することで、考える力や自分を俯瞰する力が養われます。答えを外に求めるのではなく、まずは自分でやってみる。その経験は、社会に出てから皆さんの強力な武器になるはずです。
梅垣 光理
circus株式会社 セールスユニット / オリエンタルバイオシルバースター 所属
神奈川大学でアメフトを始め、4年時に主将を務める。新卒入社したキャリアデザインセンターで新卒MVPに選出。スポーツ特化型人材スタートアップを経て、現在はcircus株式会社で既契約企業向けのコンサルティング営業を担当。ビジネスで実績を残す一方で、国内トップリーグの「オリエンタルバイオシルバースター」に所属し、現在も第一線でプレーを続けている。