ブランド志向の就活から脱却するには。元トップリーガーが語る、体育会学生が「言語化力」を磨くべき理由——立命館大学ラグビー部出身 原山光正
中学からラグビーを始め、立命館大学、そして国内のトップチームで約20年間にわたり競技に打ち込んできた原山光正さん。プロとしてフランス挑戦を目前に控えた矢先、大怪我を経験しながらも、現在は株式会社FLUXで人材コンサルタントとして活躍しています。
「体育会出身者の強みは『根性』だけではない」。自身の苦い就活経験を踏まえ、後輩たちに伝えたい「学生時代に磨くべき思考の癖」とは。ブランド志向の就活から抜け出し、スポーツの経験をビジネスの武器に変えるために必要な「言語化力」の重要性を聞きました。
——原山さんの簡単なご経歴と現在のお仕事を教えてください。
現在は、AI時代における企業の戦略パートナーとして、AIトランスフォーメーションを推進する株式会社FLUXで、人材紹介事業に従事しています。主にミドル・ハイクラス層やエグゼクティブ層の採用支援を担当し、企業の経営課題を解決できるプロフェッショナル人材をつなぐのが私の役割です。
これまでのキャリアは、ラグビーを中心に形成されてきました。立命館大学卒業後、コカ・コーラウエスト(当時)に加入。3年間は午前中に仕事、午後に練習という「会社員選手」として過ごしましたが、25歳の時に「プロとして生きたい」と決意し、プロ契約へ切り替えました。その後、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪へ移籍し、リーグワンの舞台を経験。現役の最後には、フランス挑戦やオーストラリアでのセミプロを経て、約20年間の競技人生を引退しました。

——強豪校から大手企業へ。学生時代のキャリア観について教えていただけますか?
学生時代の私は、キャリアについてほとんど考えていませんでした。ラグビー推薦で高校・大学に進んできたため、「次もラグビーがどこかに繋いでくれるだろう」と楽観視していたのです。
最初の就職先であるコカ・コーラを選んだ理由も、「知名度の高い大手企業だから、入れば安泰だろう」という安易なものでした。実は当時、就職活動をするという選択肢も頭をよぎったのですが、周りが必死に自己分析をして就活に臨む様子を見て「面倒くさい」「すでに声がかかっているから、ここでいいや」と、深く考えることから目を背けてしまったのです。入社前は、「大手に入れたのだから、きっとなんとかなる」と高を括っていました。
しかし、入社後にそのツケが回ってきました。会社員選手として3年を過ごす中で、「このままこの会社にいて、自分には何が残るのか」という漠然とした疑問を抱くようになりました。
そしてプロ契約に切り替えた後、その疑問は明確な「焦りと恐怖」へと変わります。単年契約のシビアな世界に身を置いたことで、「もし怪我で来年の契約がなくなったらどう生きていくのか」「引退後はどうするのか」というリアルな不安が初めて襲ってきたのです。そのとき初めて、キャリアのゴールを設定していなかった自分の甘さを思い知りました。
過去の私のように「ブランド」や「目先の楽な道」だけで進路を選ぶと、こうした空虚感や焦りに苦しむことになります。学生の皆さんには、自分の「ありたい姿」から逆算して進路を描いてほしいです。その思いが、現在の学生向けキャリア支援活動の原動力になっています。

——キャリアにおける最大の挫折と、そこから這い上がった原動力について教えてください。
最大の挫折は、31歳を前にしたフランス挑戦の直前に起きました。エージェントと契約の最終調整を終え、あとはサインするだけという段階で、練習中に前十字靭帯を断裂し、全てのオファーが白紙になったのです。
非常に厳しい状況でしたが、私を支えたのは明確な「目的意識」でした。「海外でプレーして、後悔なく引退する」という目標だけは諦めたくなかったため、怪我をした1週間後にはワーキングホリデーのビザを申請しました。フランスが難しければ、オーストラリアで挑戦すればいい。目標さえブレなければ、困難は「乗り越えるべき課題」として捉えられるようになります。
この経験を通じて、「なんとかなる」と考えるだけではなく、「なんとかなるように行動する」からこそ道は切り拓けるのだと学びました。
——引退後、異なる業界であるAI企業を選んだ理由を教えてください。
引退後、私が強く関心を持ったのは「組織を勝たせる仕組みづくり」でした。現役後半にコーチングを経験する中で、「どうすれば人が動くのか」「どのように目標を設計すれば、勝てる組織になるのか」というテーマに惹かれたのです。
FLUXを選んだのは、単なる人材紹介にとどまらず、企業の組織づくりに深く関われる環境があったからです。AIを活用して企業の生産性を向上させる事業構造の中で、最適な人材を配置することは、まさに勝てる組織づくりに直結します。成長産業であるAIの領域に身を置きながら、ビジネスパーソンとしての可能性を広げる挑戦に、大きな魅力を感じました。
——体育会時代のご経験は、現在のビジネスの現場でどのように活きていますか?
「不測の事態への適応力」と「切り替えの早さ」が今の仕事でも大きな武器になっています。
人材紹介の仕事は、スカウトへの返信がない、最終選考で見送りになるなど、自分の努力だけではコントロールできない要素が多くあります。思い通りにいかないことの連続です。
しかし、ラグビーはそれ以上に不確定要素の多いスポーツです。試合の流れは常に変化し、その中で最適な判断を求められ続けます。そのため、「不測の事態に動じず、状況を冷静に捉えること」や「ミスを引きずらず、すぐに次のプレーへ切り替えること」が自然と身についていました。
競技を通じて無意識レベルで繰り返してきたこの思考習慣が、現在の仕事における大きな支えです。

——その他に、スポーツで培ったスキルでビジネスに直結しているものはありますか?
「ゴールから逆算して行動を設計するスキル」です。
かつての私は、「日本代表になり、ワールドカップに出場する」というゴールから逆算し、「ベスト15に選ばれる」「チームでスタメンを勝ち取る」といったマイルストーンを設定して、日々の練習内容まで落とし込んでいました。
たとえば今の仕事であれば、「トップクラスのエージェントになる」というゴールから逆算して、「月に◯件の決定を出す」「そのために毎日◯通の質の高いスカウトを送る」といったように、行動レベルまで落とし込んでいます。
目的から逆算してプロセスを組み立てる習慣は、競技に本気で向き合ったからこそ得られた、一生もののスキルです。
——最後に、何かに打ち込んでいる体育会学生へメッセージをお願いします。
「なぜ(Why)?」を5回繰り返し、自分の行動を言語化する習慣をつけてください。
多くの体育会学生は、自分の強みを「根性がある」「最後までやり切れる」と表現します。しかし、感覚に頼った強みはビジネスの現場では再現できません。「なぜ自分はやり切れるのか」という理由やプロセスを説明できなければ、仕事に応用できないのです。
たとえば、「自分には根性がある」という事実に対し、「なぜ厳しい練習を最後までやり切れるのか?」と問いかけてみてください。
「ラグビーが好きだから」で終わらせるのではなく、「なぜ好きなのか?」→「チームで困難を乗り越えて勝つプロセスにやりがいを感じるから」といったように、一つの事象を深く掘り下げていくのです。
ここまで言語化できて初めて、「だから私は、チームで一つの目標を追う仕事であれば、ラグビーと同じように根性を発揮してコミットできる」と、自分の強みをビジネスの世界へ横展開できるようになります。
高校・大学の7年間を漠然とプレーして過ごす人と、目的を持って自分のモチベーションを言語化し続けた人とでは、社会に出たときに大きな差が生まれます。今の競技に全力で向き合いながら、その経験を自分の言葉で語れるよう、準備をしてほしいと思います。

原山光正
株式会社FLUX HRソリューション本部
中学よりラグビーを始め、立命館宇治高校、立命館大学を経て、コカ・コーラウエスト(当時)に加入。会社員選手として3年間プレーした後、プロへ転向。その後、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪へ移籍し、トップリーグ等で活躍する。フランス挑戦目前での前十字靭帯断裂という大怪我や、オーストラリアでのセミプロ経験を経て、約20年間の競技人生を引退。
現在はAI時代における企業の戦略パートナーとして、AIトランスフォーメーションを推進する株式会社FLUXで、人材紹介事業に従事。