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理想と違う環境で掴んだ、続ける力――熊本大学ヨット部OB 奥田耕大

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小学3年生からヨットを始め、高校まではクラブチームに所属して個人として腕を磨いてきました。大学では初めて「チームで1つの目標を目指す部活動」に憧れ、熊本大学体育会ヨット部の門をたたきましたが、実際に入部すると、部員数は少なく、思い描いていた環境とは異なっていました。2020年には新型コロナウイルスの影響で部員がさらに減り、練習の多くを一人で行う状況になりました。それでも競技を続け、2019年には全日本学生ヨット選手権(インカレ)の個人戦で3位入賞を果たしました。また、大学4年時には、、体育会本部委員長として、コロナ禍で制限されていた部活動の再開に向け、大学側との調整にも携わりました。現在は九州建設コンサルタント株式会社で河川計画に携わりながら、選手として国民スポーツ大会(国スポ)での入賞を目指し、大会運営や審判としても競技に関わり続けている奥田耕大さんに、孤独な環境をどう乗り越えてきたのか、そしてその経験が今の仕事にどう活きているのかを伺いました。

 

――大学でヨット部に入部した経緯を教えてください。

 

小学3年生からヨットを始め、クラブチームに所属しながら個人として競技を続けてきました。高校には部活動がなかったため、大学に入って初めて「チームで1つの目標に向かって取り組む部活動」を経験できると思い、熊本大学体育会ヨット部に入部しました。しかし実際に入ってみると、部員数は少なく、競技成績を共通の目標として追う雰囲気は、自分が想像していたほど強くなく、理想と現実の間にギャップを感じました。

 

――大学時代は、ほぼ一人での活動が中心だったそうですね。

 

練習拠点である熊本県宇土市のマリーナまでは大学からのアクセスが悪く、自転車で30分かけて熊本駅へ向かい、そこから電車で40分、さらに徒歩で30分ほどかかり、大学から気軽に通える環境ではありませんでした。もともと参加する部員は多くありませんでしたが、4年生になった2020年には新型コロナウイルスの影響で活動に参加する部員がさらに減り、基本的に一人で通う日々が続きました。海に出られるのは主に土日に限られ、平日は大学のトレーニングルームでの筋力トレーニングが練習の中心になりました。暑い日も寒い日も一人で通い続けるのは、当時はきつく感じることも多かったです。

 

 

――そうした環境の中で、印象に残っている出来事はありますか。

 

大学3年生だった2019年、全日本学生ヨット選手権の個人戦(1人乗り)で3位に入賞したことが、最も印象に残っているといいます。その前年の2018年には最終日まで3位以内を狙える位置につけていましたが、最後のレースで順位を落とし、3位と同着の4位に終わっていました。その悔しさを糧に前年まで積み重ねてきたトレーニングを継続し、

翌年に結果を出せたことは大きな自信になりました。当時の熊本大学は、全国大会で上位に入る機会が多いチームではありませんでした。その熊本大学の名前が表彰の場で呼ばれたときは、会場全体がどよめくほどの反応があり、大きな達成感を得られました。

 

――部活動とは別に、大学の体育会本部でも役職を務めていたと伺いました。

 

4年生だった2020年、部活動の枠を超えて体育会系の部活動を支える体育会本部の委員長を務めました。予算に関する会議で発言したことがきっかけで役員に推薦され、経験の浅さに悩みながらも引き受けることを決めました。就任した年は新型コロナウイルスの影響で大学の対面活動が制限され、感染拡大防止を重視する大学側と、感染対策を行いながら活動再開を望む学生側との間で、考え方に隔たりがありました。双方の立場を踏まえて学長とも直接意見を交わし、感染症対策の徹底を条件に、制限付きながらも部活動の再開を実現させました。この取り組みは大学からも評価され、メディアにも取り上げられました。

 

――一人で競技を続けてきた経験と、組織を運営する経験。両方を通じて感じたことはありますか。

 

ヨット部では基本的に一人で目標に向き合う時間が長く、自分自身を鍛えることに集中してきました。一方で体育会本部では、意見が対立する状況の中で複数の立場を調整しながら、仲間とともに困難を乗り越える経験ができました。性質の異なる2つの役割を同時に経験できたことは、人としての大きな成長につながったと感じています。

 

 

――現在のお仕事の内容と、体育会での経験との接点を教えてください。

 

2023年に熊本大学大学院を修了し、九州建設コンサルタント株式会社に入社しました。現在は河川の氾濫を防ぐための堤防計画や水害対策の解析といった業務に携わっています。生まれ育った九州に貢献したいという思いから、就職活動では公務員や大手ゼネコンといった選択肢もある中で、九州を拠点とする今の会社を選びました。大学院では水質環境に関する研究をしており、業務内容とは分野が異なるものの、学んだ知識は今の仕事にも活きていると感じています。打ち合わせでは、行政の担当者や地域住民にも専門的な内容が伝わるよう、相手の立場に立った資料づくりや説明を意識しています。部活動時代に高校生を指導した経験や、体育会本部で立場の異なる相手と交渉した経験は、こうした説明の工夫にもつながっています。

 

――卒業後もヨット部との関わりは続いているのですか。

 

現在も選手として競技を続けており、小学生の頃から目標としてきた国民スポーツ大会での入賞を目指してトレーニングを重ねています。大会の運営や審判としても携わるようになりました。熊本大学ヨット部の練習に顔を出したり、合宿で指導を行ったりと、OBとしての関わりも続けています。2019年に指導者資格を取得しており、選手と指導者、両方の視点から後輩たちを支えています。現在の部は自分が在籍していた頃と比べて部員数が増え、練習後に部員だけでミーティングを行うなど、当時思い描いていた理想に近い活動ができており、OBとして非常に喜ばしく感じてます。

 

――現役部員に伝えたいことはありますか。

 

練習できる環境や、周囲の協力は当たり前ではないということを、在学中の3年間で強く感じました。出身地の長崎県から縁もゆかりもなかった熊本のヨット関係者の輪に入り、最初からすんなり受け入れてもらえたわけではありませんでした。手伝いを重ねながら少しずつ信頼関係を築いてきたことで、6年が経つ頃には気軽に声をかけてもらえる関係になりました。今の部員たちにも、こうした環境や関係が当たり前ではないことを忘れず、感謝しながら活動を続けてほしいと考えてます。

 

 

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 

大学生活は自由に使える時間が多いからこそ、あえて継続的な活動に時間を使うか迷う人もいると思います。始めない理由やあきらめる理由は、いくらでも見つけられます。しかし、続けたからこそ得られる経験や気づきもあると思います。学生時代に何かに挑戦し、目標に向かって一人でもコツコツ取り組んだ経験は、時間の制約が増える社会人になってから「やってきてよかった」と実感できる財産になります。部活動に限らず、視野を広げながらいろいろな経験を積んでほしいと思います。

 

理想と違う環境から始まったヨット部での挑戦を、一人でも続ける力に変え、全日本学生選手権での入賞という結果に結びつけた奥田耕大さん。部活動と体育会本部という性質の異なる役割を同時に経験し、対立する立場を調整しながら困難を乗り越えてきた姿勢は、社会に出てからの仕事の進め方にもつながっています。練習環境や周囲の支えを当たり前と思わず、感謝しながら積み重ねてきた6年間は、思い描いていた環境と現実が違ったときに、そこで何ができるかを考える学生にとっても、参考になる経験ではないでしょうか。

 

奥田耕大(おくだこうた) / 熊本大学体育会ヨット部OB

熊本大学卒業後、同大学大学院へ進学し、2023年に修了。九州建設コンサルタント株式会社に入社し、河川計画・解析業務に携わる。学生時代は熊本大学体育会ヨット部に所属し、2019年に全日本学生ヨット選手権の個人戦で3位入賞。大学4年時には体育会本部委員長も務めた。卒業後も選手・大会運営・審判として競技に関わりながら、国民スポーツ大会での入賞を目指している。