競技経験はキャリアにどう活きるのか?プロとして挑み続けた経験を転換する思考——東北福祉大学体育会硬式野球部OB 鈴木亮多
東北福祉大学硬式野球部でNPB入りを目指していた鈴木亮多さんは、大学4年時の両足複雑骨折により、当初描いていたキャリアの道筋を大きく見直すことになりました。その後も競技への想いを持ち続け、大学卒業後は社会人野球を経て、海外リーグや日本の独立リーグといったプロの舞台でプレー。廃部や戦力外通告など、自身ではコントロールできない出来事に直面しながらも、理想と現実の間で試行錯誤を重ねながら、挑み続けてきました。25歳で現役を退いた後は、その経験をもとにビジネスの世界へ。
現在は株式会社マーキュリーにて採用・営業支援のコンサルティングに従事し、グループ会社である株式会社アルヴァスデザインの取締役も務めています。競技実績を「思い出」で終わらせず、いかにしてビジネスの現場で通用する「専門性」へと転換したのか。そのプロセスを伺いました。
——鈴木さんの簡単なご経歴と現在のお仕事を教えてください。
現在は、株式会社マーキュリーでグループ全体の採用支援、営業支援、コンサルティング業務を担当しています。また、グループ会社である株式会社アルヴァスデザインの取締役として、組織開発や人材育成の研修コンテンツ開発、および講師としての登壇も行っています。
これまでのキャリアは、野球を軸とした競技人生から始まり、引退後のトレーナー経験、そしてビジネスの世界での営業・人事・経営と多岐にわたります。領域は変わりましたが、一貫して「個人のパフォーマンスをいかに組織の成果に繋げるか」という課題に取り組んでいます。

——強豪・東北福祉大学での経験を教えてください。
大学時代は、部員約120名という競争の激しい環境でプレーしていました。「勝つことが前提」とされる組織において、レギュラーとして結果を出し続けるには、単なる努力ではなく、極めて高い基準での自己管理と試行錯誤が求められました。
大学3年時にはプロ入りが現実的な目標となっていましたが、4年時に両足を複雑骨折しました。この怪我により、当初描いていたキャリアプランは完全に白紙となりました。

——プロとしての道を模索する中での葛藤について教えてください
怪我の後も諦めがつかず、社会人野球や海外リーグ、独立リーグへと挑戦の場を移しました。しかし、所属チームの廃部や戦力外通告など、自分自身の努力だけではコントロールできない外部要因によって、プレーを継続できない状況に何度も直面しました。
25歳で引退を決めた当時は、野球以外に自分を証明する手段を持っておらず、将来に対する強い不安がありました。しかし、怪我や戦力外という「思うようにいかない経験」を重ねたことで、次第に「選手のパフォーマンスを支える側、あるいは環境を作る側に回りたい」という意欲が芽生えていきました。
——ビジネスの世界で直面した「壁」について教えてください。
26歳で人材ベンチャーの営業職に就きましたが、当初は全く結果が出せませんでした。その際、上司から「で、結局何ができるの?」と問われ、自分にはビジネススキルが皆無であることを痛感しました。
そこからは、競技時代と同様に「現状を分析し、課題を特定し、改善策を実行する」というプロセスを愚直に繰り返しました。商談の準備、顧客ニーズの把握、振り返りの徹底、野球で習慣化していたPDCAのサイクルを営業活動に転用することで、徐々に成果が出始めました。この時、競技で培ったのは「技術」ではなく「成果を出すための思考の型」であったと確信しました。

——体育会時代のご経験が、今どう活きていると思いますか?
最も活きているのは、「自分ではコントロールできない理不尽な状況下で、いかに目的を見失わず、最善の打ち手を考え抜くか」という姿勢です。
スポーツの世界は、怪我や判定、チーム方針など、理不尽の連続です。ビジネスも同様に、市場の変化など、努力だけでは変えられない壁がいくつも存在します。多くの人がそこで立ち止まってしまう中、体育会で揉まれた人間は「今、この状況で自分にできることは何か?」と即座に思考を切り替えることができます。
また、選手の痛みがわかる「トレーナーの視点」と、成果にシビアな「勝負師の視点」。この両方を持って組織に向き合えることが、経営に携わる現在の私の最大の強みになっています。
——体育会人材の「真の強み」とは何でしょうか?
「根性がある」といった抽象的なことではなく、「納得のいかない状況下でも、組織の勝利(目的)のために自分を律して動けること」だと思います。
部活動でレギュラー争いに敗れたとき、あるいは怪我で裏方に回ったとき、どう振る舞ったか。その時の思考プロセスこそが、ビジネス現場での「再現性のある強み」になります。自分の感情を横に置いて、チームのために今できる最善を尽くす。この「献身性と客観性の同居」こそが、企業が体育会人材に期待する真の価値だと、採用や組織開発の現場に立つ今、強く実感しています。

——悩める現役学生へメッセージをお願いします。
競技人生は、どこかのタイミングで必ず終わりが来ます。ただ、それはキャリアの終わりではなく、「次に何をするのか」を考えるタイミングだと思っています。
重要なのは、「競技をやっていたこと」ではなく、その中で自分がどう考え、どう行動してきたかです。うまくいかない状況に対して何を課題として捉え、どう改善してきたのか。その思考と行動の積み重ねは、競技の外でも自然と活きてくるものだと思います。
自分自身も、結果が出ない中で「何ができるのか」と問われ、何も答えられなかった経験があります。ただ、そのときに競技でやってきたプロセスを一つひとつ言語化し、ビジネスの現場に置き換えていくことで、少しずつ前に進めるようになりました。
今、思うような結果が出ていないとしても、その経験をどう捉え、どう次に活かすかが重要だと思います。
目の前の競技に本気で向き合うこと。そして、その中での思考や行動を、自分の言葉で説明できる状態にしておくことが、競技を終えた後の選択肢を広げることにつながるはずです。

鈴木 亮多
株式会社マーキュリー / 株式会社アルヴァスデザイン 取締役
東北福祉大学硬式野球部出身。大学時、全国大会準優勝を経験しNPB入りを目指す。引退後はトレーナーを経て、26歳で人材・組織領域へ転身。現在は企業の採用支援やコンサルティング、研修開発に従事。