付加価値は”個人技”ではなく”構造”でつくる。日本企業を強くする挑戦——株式会社カクシン
株式会社カクシンは、企業が生み出す価値を「個人の頑張り」ではなく「構造」として捉え直し、再現できる形に変えていく支援を行っています。多くの日本企業は、良い商品やサービスを持ちながらも、その価値を十分に伝えきれず、属人的な営業や現場力に成果を委ねてきました。
株式会社カクシンが向き合うのは、そうした課題の根本にある「価値の定義と、その届け方」です。
今回は取締役CRO(最高収益責任者)の天野眞也さんに、事業の本質や価値主義に込めた想い、そしてこれから社会に出る学生へのメッセージを伺いました。

——貴社の事業内容について教えてください。
当社の事業内容は一言でいうと、「企業が生み出している価値を、きちんと構造として整理し、再現できる形にする」ことです。多くの企業は、良い商品・サービスを持っているにもかかわらず、価値がうまく伝わっていない、属人的な営業や現場の頑張りに依存しているケースも少なくありません。その状態では、成果が安定せず、組織としても規模を拡大しづらいという課題に陥ります。当社は企業の持つ付加価値をどう定義し、どう届けるかを言語化し、仕組みとして設計する支援をしています。
事業の特徴は、「施策ありき」ではないことです。マーケティングや営業、ブランディングといった手法はあくまで手段であって、先にあるのは「この会社は、顧客にとってどんな価値を提供しているのか」という本質的な問いです。当社は、まず価値の”構造”を明らかにし、その上で組織・プロセス・コミュニケーションを設計していきます。業界や企業規模は問いません。共通しているのは「成果を個人の能力に頼らず、組織として再現できる状態をつくる」という点で、そこに私たちの事業の軸があります。

——貴社が大切にしている「価値主義」とは何でしょうか?
当社が掲げている「価値主義」とは、「価格や原価ではなく、価値を基準にビジネスを見通す」という考え方です。日本では長い間、「良いものを安く提供すること」が美徳のように語られてきました。しかしその結果、企業は利益を出しづらくなり、現場の疲弊や、低賃金という構造が当たり前になってしまっています。私たちは、そこに強い課題感を持っています。
本来、価値があるものには、正当な対価が支払われるべきです。そこに「値上げは悪」「高い=売れない」といった思い込みが先行し、自分たちが提供している価値を正しく見つめ直すことが、後回しになっている企業も少なくありません。価値主義は、まずそこを問い直すための考え方なんです。
大切なのは、原価や競合比較から価格を決めることではありません。「顧客は、何に対してお金を払っているのか」「なぜ選ばれているのか」という視点で、自社の価値を定義し直すこと。その価値が明確になれば、価格の考え方も、営業の仕方も、組織の動き方も変わっていきます。利益がきちんと出るようになれば、社員への還元や、新しい挑戦への投資もできる──価値主義は、企業が健全に成長し続けるための循環をつくるための思想であり、私たち自身の仕事の判断基準でもあります。
——株式会社カクシンが設立された背景には何がありますか?
株式会社カクシンは、代表の田尻が立ち上げた会社です。田尻も私も、前職は株式会社キーエンスに在籍しており、そこでの経験が大きく影響しています。前職では、「付加価値をどうつくり、どう届けるか」ということが、感覚ではなく徹底的に構造として磨き込まれていました。ビジネスを突き詰めていくと、単なる等価交換では大きな利益は生まれません。重要なのは、「顧客が何を真の価値と感じているのか」という視点です。たとえば、仕事の合間に食べるランチと、初めてのデートで選ぶランチでは、同じ”食事”でも期待される価値はまったく異なります。提供側が原価や調理時間を基準に価格を考えていても、支払う側はそこを見ていない。相手が求めているのは、「量」や「スピード」なのか、「体験」や「成功の確率」なのかなど、「求めるもの」を捉えた提案ができるかどうかで、価格は大きく変わります。この考え方を、日本中の企業に広げていかなければ、日本はこれから世界と戦えなくなる──田尻がそう強く感じて立ち上げたのが株式会社カクシンであり、その「価値主義」という思想に深く共感した私が、後からジョインする形で合流しました。

——インターンや若手が関わる仕事には、どんな特徴がありますか?
当社は、毎年決まった人数の募集ではなくご縁があって関わる形が多く、これまでもメディアを通じて興味を持ってくれた学生や、知人の紹介などをきっかけに、一緒に仕事をしてきました。実際に、代表と同じ大学のゼミつながりでインターンとして関わり、現在はまったく別のキャリアで活躍しているメンバーもいます。業務内容は、その時々で変わります。たとえばAI分野であれば、市場にどんなサービスが出てきているのかを調べ、それぞれのツールの得意・不得意を整理し、共有してもらうといったことをお願いします。「どのAIが何に強いのか」「どんな場面で使い分けるべきか」といった視点で、可能性を拾い上げていく役割です。
当社は、事業領域が拡張途中のフェーズです。そのため、あらかじめ決まった業務を淡々とこなすというよりも、「その人がやりたいこと」「持っている素養」「今、会社として進めたい方向性」をすり合わせながら、関わり方を決めていく形になります。共通して言えるのは、単なる作業ではなく、ビジネスの考え方そのものに触れる環境だということです。特に身につくのは、「自社を説明する力」ではなく、「顧客のビジネスや、求める価値」を考える力です。
誰の、どんな課題を解決しているのか。
そもそも、その課題はどこにあるのか。
問題の特定から価値を生み出すプロセスを、実務を通じて学べるのが、当社で働く大きな特徴です。

——貴社の採用時に見ているポイントについて教えてください。
学生の方を見るときに重視しているのは、スキルや地頭よりも興味関心の強さです。どれだけ頭が良くても、何もしていなければ価値は生まれません。「やってみたい」「知りたい」という好奇心や熱量を持っているかどうかが何より大切だと思っています。
知識やスキルは後からいくらでも教えられますが、内側から湧き出る熱意、いわゆる内発的動機は、こちらから与えることができません。旅行がしたいでも、車が欲しいでも、何かに強く惹かれていることなど、方向性は何でもいいんです。そうした「やりたい」という気持ちを持っている人こそが、社会に出てから本当に伸びていくと感じています。
——学生のうちに、意識しておいてほしいことはありますか?
一番大事なのは、社会との接点を増やすことだと思います。学生はどうしても、同じ学生同士のコミュニティの中で完結してしまいがちです。しかし、少し年上の先輩や社会人と話してみるだけで、見える世界は一気に広がります。目的は、就活のためでなくてもかまいません。飲みに行くでもいいし、趣味を一緒にやるでもいいので、とにかく社会人と接する機会を持つことが大切だと思っています。
なぜなら学生のうちは「何が将来役立つのか」が見えにくいからです。アウトプットが想像できないから、インプットにも熱が入りにくい特徴があります。しかし社会人と話すことで、「将来求められるもの」との具体的なイメージが生まれます。企業選びも同じで、社会を知らないまま選ぶと、どうしてもギャップが生まれます。それは失敗というより、情報量の差によるもの。だからこそ学生のうちから、少しでも社会に触れ、情報を増やしておくことが重要なんです。学生の世界に閉じず、外に出てみる。どうせ社会人になるなら、早めにその空気に触れておいた方がいいと思います。

——これからキャリアを考える学生へ、メッセージをお願いします。
もし今、自分が学生に戻れるとしたら、間違いなく社会人の先輩と積極的に関わります。私は学生時代にほとんど社会との接点がなく、新卒で株式会社キーエンスに入ったときは本当に苦労しました。名刺交換も、接客も、営業も、何ひとつ経験がなく、「お金を稼ぐとは」すら分かっていませんでした。最初は、営業が押し売りのように感じてしまい、働くこと自体に違和感を覚えていたほどです。
しかし社会に出て初めて、仕事は労働時間の対価ではなく、付加価値の対価なのだと理解しました。この感覚を早く知っていれば、学生時代の過ごし方も、社会人としてのスタートも、違っていたと思います。だからこそ学生のうちに「少しでも社会人と話し、働く現場に触れる」という準備があるだけで、社会に出てからの伸び方は大きく変わるはずです。
天野 眞也
取締役CRO(最高収益責任者)/エバンジェリスト
株式会社キーエンスに新卒一期生として入社し、十数年にわたり「付加価値をどうつくり、どう届けるか」を徹底的に構造として学ぶ。幅広い業界の生産現場と向き合い、企業が数百億円規模から二千億円規模へ成長する過程を第一線で牽引した経験をもとに、2010年に起業。現在は、価値を個人の経験や感覚に依存させず、再現可能な仕組みとして設計する支援を通じ、日本企業が正当な価値で選ばれ続けるための変革に取り組んでいる。