財務のプロに聞いた。大学コミュニティが資金難から脱するには?——SMBグロースパートナーズ株式会社
部活動や学生コミュニティの運営に関わる中で、
「部費や会費を集めているのに、なぜかお金が足りない」
「活動は続けられているけれど、余裕がなく挑戦しづらくなっている」
と感じたことはありませんか。
実はこの悩みは企業経営でもよく起きる“資金の流れが見えていない”状態とよく似ています。売上が伸びていても、資金の流れが整理されていなければ、同じような問題が生じてしまうのです。
今回は、中小企業やベンチャー企業の経営を財務面から支援してきた、SMBグロースパートナーズ株式会社の佐々木健さんにお話を伺いました。
企業経営の現場で培われた考え方は、大学の部活動や学生コミュニティにも、そのまま当てはまる部分が多くあります。
企業経営の現場で培われた考え方を、学生の活動に置き換えてお伝えします。

——貴社の事業内容を教えてください。
SMBグロースパートナーズ株式会社は、中小・ベンチャー企業の経営者の右腕として、財務と人事を軸に経営の意思決定を支援しています。
事業計画の策定、資金調達(銀行・投資家対応)、採用や評価制度の整備までを、助言にとどまらず実務レベルで伴走します。社長が本来注力すべき事業づくりに集中できる状態をつくることが役割です具体的には、
・事業計画を一緒につくる
・銀行や投資家と向き合い、資金調達を支援する
・採用や評価制度など、組織づくりを整える
といったことを、アドバイスにとどまらず、実務まで踏み込み伴走します。
企業が無理なく成長し、社長が本来注力すべき仕事に集中できる状態をつくることが、SMBグロースパートナーズの役割です。
——なぜ、あえて中小企業・ベンチャーを支援しているのでしょうか?
中小企業やベンチャー企業では、経営の重要領域(財務・人事)ほど相談相手がいないまま意思決定が進みやすいのが実情です。だからこそ、社長が迷いなく前に進むための“土台”を整える支援が必要だと考えています。
特に財務や人事は、重要でありながら後回しにされがちな領域です。こうした部分が整理されないままでは、社長は安心して意思決定を行うことができず、結果として企業の成長にも影響が出てしまいます。
私はこれまでの経験から、社長の右腕としてCFO(最高財務責任者)の役割を担い、経営全体を支える存在が必要だと考えています。
目指しているのは、中小・ベンチャー企業の社長が迷いなく前に進むための土台をつくることです。

——「CFO=お金の人」というイメージが先行しますが、佐々木さんが考えるCFOとは何ですか?
私が目指しているのは、企業価値を高めるために経営全体に関わる“攻めのCFO”です。企業価値とは、将来も利益を生み続けられる仕組みがあるかで決まります。そのためには、売上の伸ばし方や事業の方向性、人材の配置といった経営判断に踏み込む必要があるのです。
こうした判断を行う際、数字は欠かせない材料です。ただし、数字そのものが答えになるわけではありません。数字は現状を把握するための指標であり、課題の背景や構造を考えるための手がかりになります。
だからこそ私は、財務データだけでなく、事業の現場や組織の状況にも目を向けながら、社長と一緒に会社の進むべき方向を考えています。
また実際の現場では、売上は伸びているにもかかわらず、なぜか手元にお金が残らないという状況が起こることも少なくありません。こうした違和感こそが、数字の奥にある構造を見直す必要があるサインだと考えています。
——なぜ、売上が伸びているのにお金が足りなくなることがあるのでしょうか?
私がNECに在籍していた頃にも、業績自体は悪くないにもかかわらず、資金繰りに課題を抱えるケースを目にすることがありました。
原因は、事業が悪いというより、“お金の流れ”が見えていないことが多いです。たとえば、商品は売れていても入金が遅れる一方で支払いが先に発生すると、帳簿上は黒字でも手元資金が不足します。だからこそ、日々の入出金と予定を把握し、資金の動きを整理することが欠かせません。
こうした問題は、特別な経営判断のミスではなく、本来当たり前に行うべき管理ができていないことから生じます。日々のお金の動きを把握し、基本的な管理を徹底することが、経営の安定には欠かせません。小さな見落としが、資金不足という大きな不安につながります。
——この話は、大学の部活動などの学生コミュニティにも当てはまりますか?
ここまでお話ししてきた企業の資金の話は、大学の部活動や学生コミュニティにもそのまま当てはまります。規模は違っても、「組織としてお金を扱っている」という点では同じ構造を持っているからです。
学生団体でも、資金不足の原因は「収入が少ない」より「見える化不足」にあることが多いです。典型例は次の3つです。
・部費の回収タイミングがバラつく/遅れる
・遠征・備品・イベントなど支出予定が整理されていない
・前年踏襲で支出が固定化し、活動規模に合っていない
重要なのは、難しい知識を身につけることではありません。まずは、お金の出入りを整理し、現状を正しく把握することです。企業経営と同様に、学生コミュニティでも、資金不足の原因は構造の中にあることが多いのです。

——では、現状を整理した上で、資金不足に対してどのように対策すればよいのでしょうか。
結論として、資金は「削る」ことよりも、「増やす」視点で考えることが重要です。
ただし、その前提として、明らかに無駄な支出については適切に見直す必要があります。
資金が足りないと感じたとき、多くの組織はまず支出を減らすことを考えます。これは自然な反応であり、無意味な出費を削ること自体は重要です。しかし、それだけで問題が解決するとは限りません。
支出の削減が優先されやすいのは、削るほうが分かりやすく、すぐに行動に移しやすいからです。遠征回数を減らす、備品の購入を控えるといった判断は、その場では安心感を与えます。しかし、こうした対応を続けると、活動の魅力が下がり、人が集まりにくくなるという別の問題を生みます。
企業でも同様に、コスト削減を優先しすぎると、成長の機会を失い、結果として収入が伸びなくなります。部活動や学生コミュニティでも、削る判断が積み重なることで、縮小の方向に進んでしまうことがあります。
資金不足に向き合う際には、単に支出を減らすのではなく、「この支出は何のためのものか」「活動の価値を高めているか」を見直すことです。無駄は削りつつも、価値を生み出している部分まで削ってしまわないことが、長期的には資金不足から抜け出すための鍵になります。
——次に、資金を増やすために、何を考えるべきなのでしょうか?
資金を増やすことを考える際、資金を増やす前に必要なのは、「自分たちの活動は誰にとって、どんな価値があるのか」を言語化することです。
部活動や学生コミュニティが資金を増やす方法としては、部費の見直しやイベント収益などさまざまな選択肢がありますが、その中でも多くの団体にとって現実的な手段の一つが、スポンサーや協賛を得ることです。ただし、「スポンサーを探す前」にやるべき重要なことがあります。
それは、自分たちの活動がどのような価値を持ち、誰にとって意味のある存在なのかを整理することです。
協賛は「支援をお願いする」ではなく、相手の目的(認知・採用・理念共感など)に対して、自分たちが何を提供できるかを設計する行為です。そのため、自分たちの活動が何を目指し、どのような価値を生み出しているのかを整理できていなければ、スポンサーという選択肢を活かすことはできません。
例えば、なぜ部員が集まり、なぜ活動を続けているのか。どのような点に魅力を感じてもらっているのか。こうした点を言語化することは、スポンサーに限らず、資金を増やすためのあらゆる施策の土台になります。
——スポンサー・協賛は、どのように考えるべきでしょうか?
スポンサーや協賛を考える際に重要なのは、「支援をお願いする」という姿勢ではなく、相手の立場で価値を考えることです。資金が足りないという理由だけで支援を求めても、継続的な協賛につながることは多くありません。
スポンサーの側には、必ず何らかの目的があります。自社の認知向上であったり、理念への共感であったり、若い世代との接点づくりであったりと、その内容はさまざまです。大切なのは、自分たちの活動が、その目的にどのように応えられるのかを整理することです。
そのためには、まず自分たちの活動内容の価値を“相手の言葉”で説明できる状態が必要です。
応援される団体に共通しているのは、「何をしている団体なのか」「なぜ応援する価値があるのか」を明確に説明できている点です。スポンサー・協賛は、資金不足を埋めるための手段ではなく、活動の価値を社会に伝える機会でもあります。
スポンサーの立場に立ち、自分たちの活動がどのような意味を持つのかを考えることが、協賛を得るための本質的な考え方です。
——最後に学生にメッセージをお願いします。
部活動や学生コミュニティの運営、資金づくりに取り組む中では、思い通りにいかないことも多くあります。スポンサーが集まらなかったり、施策がうまくいかなかったりすることもあるでしょう。しかし、そうした経験そのものが無意味になることはありません。
大切なのは、小さく試し、振り返り、改善することです。うまくいかなかった経験は次の打ち手の材料になります。挑戦をやめない限り、前に進めます。
部活動や学生コミュニティでの運営経験、資金づくりの試行錯誤は、将来必ず仕事に生きてきます。組織を動かし、価値を伝え、相手の立場で考える経験は、社会に出てからも変わらず求められる力です。
こうした経験は、いわば心の筋トレのようなものです。すぐに結果が出なくても、積み重ねることで確実に力になります。学生のうちにしかできない挑戦に、ぜひ前向きに取り組んでほしいと思います。

佐々木 健
SMBグロースパートナーズ株式会社 代表取締役
慶應義塾大学卒業後、NECに入社。その後、PwCコンサルティング、KPMG FASにて、企業の経営戦略や財務領域を中心としたコンサルティングに従事する。
JCOMでは経営戦略本部長を務め、事業戦略の立案・推進を担当。さらに、ITベンチャー企業や外資ファンド出資先企業においてCFOを歴任し、経営の中枢から企業成長を支えてきた。
ペンシルベニア大学ウォートン校にてMBAを取得。
現在はSMBグロースパートナーズ株式会社の代表として、ファイナンスを軸に、中小企業やベンチャー企業の企業価値向上を支援している。