
合同会社SmartApe
合同会社SmartApeは、ボードゲームを使って企業研修・インターン研修を行なっている会社です。どのような経緯でボードゲームの開発に至ったのか、従来の研修の違いや得られるものなどについて、業務執行責任者の徳一輝さんにうかがいました。
――企業の沿革、事業内容についてのご紹介をお願いします。
当社は創業者の山口貴也が、エンタメ向けのボードゲームの開発を目的として2021年4月に立ち上げた会社です。現在はビジネス向けボードゲーム「TEAM CLIP」を用いて企業様に向けて研修を行なっています。
――「TEAM CLIP」開発の経緯を教えてください。
ビジネス向けボードゲームの分野ではすでに他の企業がいくつかリリースされているものがあり、当社は後発にあたります。
私は1社目の会社で人材開発や組織開発を行っており、さまざまな座学研修を導入する立場でした。マニュアル的な内容や専門知識の勉強をするための講義などは実際的に意味があると思えるものです。しかしそれ以外の「リーダーシップ研修」や「チームマネジメント研修」、「経営者視点を学ぶ研修」などの定性的な研修は、「こういったフレームワークで考えましょう」などを教わっても、それが本当に実践につながっているのか? というのが、導入側から見ても疑問に思うことがあったんです。
その経験から、私自身は研修や教育といった分野に拒否反応があり、まったく違う畑を歩んでいたのですが、SmartApeに参画してほどなく、山口から「ビジネス向けボードゲーム」のことを聞きました。実際に体験会に行き、仕事の擬似体験をでき、熱中して学んでいけることに価値を感じると同時に、「もっと深く実践に紐づく学びあるものにできるのでは」と感じ、自分たちでビジネスボードゲームを開発することにしました。
リリースにあたってはクラウドファンディングを活用しました。本格リリースの前から人事や研修担当者向けに多くのイベントを行い、内容についてもブラッシュアップしていき、2025年3月に「TEAM CLIP」をリリースできました。
――「TEAM CLIP」の内容について教えてください。
映像制作会社を舞台に、SNS用の動画やオープンキャンパス向け動画など、与えられたテーマでの動画制作を目的にします。動画の完成をゴールとして、撮影や編集、デザインなどの分担も話し合いながら進めることになります。
――他のボードゲームとの違いや、特徴はなんでしょうか。
私たちがこのゲームを作る上でキーワードにしているのは、「自律型人材を育てる」ということです。自発的に行動し、組織の問題解決をするために必要なことを、このボードゲーム上で学びます。
対象者は「自律型人材になりたい人」というよりは、「組織の人たちに自律型人材になってほしい人」、すなわちマネジメント層をメインターゲットにしています。現状すでに何年もマネジメントを行っているという方より、今後リーダーとしての活躍を期待されている新入社員や、ジュニアマネージャーやプレイングマネージャーなどに最も向いています。
マネージャー側がどのように部下に接すれば、自律型人材になってくれるのかという観点で、人への接し方を学べるものになっています。
マネジメント層向けのボードゲームはほとんどなく差別化の一つかと思いますが、それ以上に「TEAM CLIP」をプレイする上での特徴は「失敗体験を積み重ねられる」ことにあります。
ーー「失敗体験を積み重ねる」ことについて、もう少し詳しく教えてください。
例えば5人ほどのチームのマネージャーを務めている人がいたとします。マネジメントを失敗すると、チームが崩壊し、炎上の対応に追われ、場合によっては左遷されるなど、さまざまな影響が発生します。
実際のビジネスの現場では実害も出て、失敗できない環境ばかりですが、ゲームでやる場合にはもしチームが崩壊したとしても、誰も損をしません。ゲーム上ではリーダーが行う意思決定によって、組織のパフォーマンスがまったく上がらないという結果にもなりうる設計になっています。
自分が行った意思決定での「失敗」がゲーム上で発生することによって、「自分のせいだ」と思える。その上で、どこの意思決定が間違っていたのか? ABCという選択肢があり、本当は正解のBを選べるはずなのに、なぜCを選んでしまったのか? 失敗体験を学び、そこからさらに思考を深めていけるところに価値があると考えています。
――このようなビジネスゲームはどのように制作しているのですか。
「こういう学びをさせたいから、この失敗をさせたい」という逆からのアプローチを考えています。私がアイディアを出すと、代表の山口が「こういうルールを作ったら失敗させられるのでは」と打ち返してくれますので、そうやって徐々に作っていきました。
しかしAという失敗をさせたいからA’というルールを作ったら、今度はなぜかBが再現できなくなった…ということも起こり、試行錯誤しながら開発し、トータルで完成まで1年ほどかかりました。
――今後このボードゲームを、企業ごとにカスタマイズしていくといった展開は考えられますか。
もちろん当社としてもやりたいと考えています。しかし開発には多額の費用がかかるため、導入する企業側からしてもいきなり「カスタマイズでお願いします」とはならないのが現状です。まずは「TEAM CLIP」をさらにたくさんの企業様の研修に導入していきたいと思っています。
――今後の御社の展望を教えてください。
2025年8月時点では4名とまだ小さな会社ですが、今後さらに事業を拡大し、合わせて採用も行っていきたいと考えています。
現状では「研修」の事業領域での展開をしていますが、この分野ももっと伸ばしていきたいですね。さらに、採用の領域でのサービス展開も考えています。インターンシップ代行のような形で、企業から依頼を受けて、学生に対してビジネスゲームでの学習を提供することを想定しています。
――今後入ってきてほしいメンバー像を教えてください。
まずは社会人経験のある中途採用から始める予定です。一番欲しいのは、僕の代わりとなる人です。営業をやりながら研修も提供し、採用支援も行って…と、永遠に人としゃべる仕事なので、人前でしゃべるのが好きな方が理想です。教育や「人」そのものに対して興味を持っている方がいいですね。
当社もさらに事業を拡大していく中で、どんどん変化していくフェーズにあります。一緒に事業を盛り上げてくれる人を必要としています。
――SmartApeに興味を持った方へのメッセージをお願いします。
「人の心が動いていくこと」に携われる仕事だと思います。従来の座学研修は、心が動かないから結果が出ていないのだと思います。
「どうやったら人の心が動くのか?」「どうやったらいい経験になるのか?」「何が人にとっての財産になるのか?」をつねに考え、取り組んでいける仕事です。この少人数の規模感だからこそ、何でも面白いことに取り組んで見られる環境でもあります。興味がある方はぜひ一度ご連絡いただければと思います。
■徳一輝
合同会社Smartape 業務執行責任者
これまで飲食、フィットネス、専門商社など複数の企業に参画し、MVV設計および浸透を主とした組織開発およびスキル開発や新卒採用のプロジェクトリーダーなどを担当。現在はビジネスゲームを活用した研修事業や採用支援事業の責任者として活動。ベンチャー企業から東証プライム上場企業まで幅広い採用、教育課題解決に向けたアプローチに従事。