3年後のラクロス界を創る——共創プロジェクトが描く未来
“3年後のラクロス界をつくる”というコンセプトで、2023年に始動した『共創プロジェクト』。
チームづくりの知見を共有し、どの大学でも“自立した成長”ができる文化を根づかせる挑戦は、わずか数年でラクロス界の常識を変えつつあります。彼らが描く“3年後のラクロス界”とはどんな姿なのでしょうか。
今回は、日本体育大学男子ラクロス部ヘッドコーチ(以下HC)の後藤駿太さんにお話を伺い、プロジェクト発足のきっかけや具体的な活動内容、これからの展望についてお伝えしていきます。

——共創プロジェクトを始めようと思ったきっかけは何ですか?
きっかけは、2023年に日本体育大学ラクロス部が日本一になったことです。
その時に「チーム作りやマネジメントについて学びたい」という声を受けて、オンラインイベントを開催しました。全国から約500人の学生がZoomに参加し、ラクロス界における学びの需要が高いことを実感しました。オンラインイベントでの反響を受け、「次は日体大のグラウンドで、現場のラクロスを見て学べる場を作ろう」と考えたことがきっかけで、現在の共創プロジェクトが誕生しました。
日本一になる過程で、日体大自身も多くの人の支援をいただいていました。自分たちがもらったものを今度は周りにも返していきたいと思い、共創プロジェクトを実現させる大きな原動力になっています。
——共創プロジェクト発足の背景でもある、ラクロス界の現状について教えてください。
現在の大学ラクロス界では、指導者・部員数・知識やスキルといったリソースが一部の大学に集中している状況です。確かにリソースの多さは「強さ」や「結果」に直結しやすい一方で、それがすべてではありません。限られた人数でも、一人ひとりが力を最大限に発揮すれば、チームは必ず強くなれます。これは「大企業よりもベンチャー企業が成果を上げることがある」という構造にも似ています。
現場で特に感じたのは、環境に恵まれないチームほど「どうせ勝てない」「努力しても変わらない」と、そもそも挑戦を諦めてしまうケースが多いことです。共創プロジェクトは、そうした固定観念を打ち破り、どんな環境でも成長できる“文化”を根づかせるための挑戦でもあります。
——“3年後のラクロス界を創る”というコンセプトの理由を教えてください。
共創プロジェクトで定める“3年間”という期間は、1年生が4年生になるまでの時間であり、3部チームが1部昇格を目指せる現実的なリードタイムだと考えています。
だからこそ、この3年間を全力で駆け抜けてもらいたい。リソースが限られていても、どうすれば自分たちの強さを引き出せるか、1部リーグを目指せるかを考え抜く。その過程を通して、より魅力的なラクロス生活を送ってもらいたいと思っています。

——共創プロジェクトの具体的な活動内容を教えてください。
主な活動は、毎年12月第4日曜日に日体大で実施している、練習会です。主な内容はラクロスの基礎技術の見直しや、ゲーム形式での実践練習です。また、グラウンドで学ぶ技術だけでなく 、「チームつくり」や「フィジカルトレーニング」、「試合映像(ビデオ)の見方や分析方法」など、すぐに現場で活かせる学びを提供しています。また、他大学チームとの合同練習を通じて、チームの垣根を越えた交流も生まれています。
指導を行うのは、日体大のコーチ陣や引退した4年生などです。近年は自分も協力したいと社会人プレイヤーや大学指導者も参加してくれてます。2025年3月に実施した練習会では、関東を中心とした大学10校以上が参加し、9名のコーチが指導にあたりました。
——共創プロジェクトの成果は感じられていますか?
はい。2023年の活動開始以降、確実に成果が現れています。
たとえば、3部リーグ所属のチームが学年大会で1部リーグの大学に勝利したり、2部リーグ所属の大学と互角に戦うなど、着実にレベルアップしているチームが増えています。
1部・2部と比べてリソースの少ない3部のチームでも、学びや工夫次第で十分に結果を出せることを証明しています。
「共創プロジェクト」が、チーム力向上のきっかけや成功事例を生み出す場として機能していると感じているので、これからも参加校を増やし、学びの場を派生させていきたいです。

——共創プロジェクトのこれからの展望を教えてください。
いきなり全国展開を目指すのではなく、まずは関東で基盤を整えることを優先しています。なぜなら、「知識や経験を得た人が、次の人に伝えていく」という伝聞型の広がりを大切にしているからです。実際に、共創プロジェクトをきっかけに、日体大出身のコーチが他大学の指導者として活動を始めるなど、良い循環も生まれています。
今後も、「広げること」よりも「根づかせること」に重きを置き、活動を継続していきたいと考えています。

リソースの差を“限界”にせず、学び合う文化を通して未来を変えようとする姿は、これからの大学ラクロス界における強い希望です。「今の環境でできることを考える」ではなく、「未来を変えるために今できることを考える」。その視点こそ、共創プロジェクトが大学ラクロス界にもたらした最も大きな価値だといえます。
3年後、彼らがどんな“景色”を創り出しているのか──その未来に期待が膨らみます。
執筆:青木千奈(株式会社Koti)