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「打倒関東」を掲げて最下位から準優勝へ。北海道大学男子ラクロス部はなぜ変われたのか——北海道大学男子ラクロス部

「北一強」と呼ばれる北海道地区では、有力校が限られるため、日常的に競争できる相手が少ないという構造的課題を抱えていました。しかし北海道大学男子ラクロス部は、昨年の七大戦において、前年の最下位(7位)から準優勝へと劇的な躍進を遂げました。学生主体で運営されるこの組織が、どのように地方チームのハンデを乗り越え、関東の強豪に肩を並べる組織へと変貌を遂げたのか。その背景には、「意識改革」と「エンゲージメント向上」の戦略がありました。

 

 

——目標の解像度を高め、組織の基準値をリセットする

 

彼らが最初に着手したのは、目標設定の再定義です。全国大会は対戦相手が毎年変わるため、練習強度の基準が曖昧になりやすい目標でした。

そこで彼らは「打倒関東」という明確なスローガンを掲げました。日本のラクロス界を牽引する「関東リーグ」を具体的なベンチマークに設定することで、「関東のチームならこの練習で満足するか?」「関東のフィジカルに通用するか?」という問いを常にチームに投げかけました。目標の解像度を高め、比較対象を「過去の自分たち」から「全国トップレベル」へと意図的に引き上げることで、組織全体の“当たり前”が変わっていきました。

 

——スローガン「煌(きらめき)」に込めた人間的成長を重視した文化づくり

 

組織の急成長を支えたもう一つの柱が、今年のスローガン「煌(きらめき)」をベースとした組織文化の醸成です。これには「地方から全国に希望を与える存在になる」、「個々人が輝くかっこいい人間になる」という意味が込められています。彼らは、スローガンのもと、防具の整頓やゴミ拾い、挨拶といった基本的な規範を徹底しました。技術だけを追い求めるのではなく、人間的な土台を整えることが、結果として規律ある強いチームを作るという信念があったからです。4年生が率先してこの文化を体現し、発信し続けることで、チーム全体に応援される組織にふさわしい振る舞いが浸透していきました。

 

 

——当事者意識に火をつけるコミュニケーション戦略

 

学生主体の組織において最も難しいのが、部員全員のモチベーション維持です。そこで彼らが導入したのが「キラメキライン」と呼ばれるリレー形式のメッセージ共有施策でした。部員一人ひとりが自分の想いや考えを言語化し、全体に発信する場を設けたのです。これにより、普段あまり発言しない部員の考えも共有され、相互理解が深まりました。

「やらされる練習」から「自ら考え、高め合う練習」へと徐々に変化していきました。個々の内面にアプローチし、組織に対する当事者意識を芽生えさせたこの施策こそが、チームの一体感を飛躍的に高めた大きな要因の一つとなりました。

 

 

——地方の壁を越える「広報戦略」と「越境学習」

 

物理的な距離の壁を乗り越えるためのアプローチも、戦略的に取り組んでいました。

彼らはInstagramを中心としたSNS広報を強化することで、保護者やOB・OG、そして企業からの注目が集まるようになりました。また、北海道という地域の枠組みにとどまることなく、あえて強豪ひしめく関東への遠征を実施し、関東上位校との実力差を肌で感じる越境学習を通じて、自分たちの立ち位置を客観的に捉え直す大きなきっかけとなりました。

自ら外部環境へ飛び込み、得られた知見を組織に還元するサイクルが、彼らの急成長を加速させています。

 

 

——最後に

「北大ラクロス部は、地方から全国に影響を与える存在になっていく」と語る彼ら。明確なベンチマーク設定による基準の引き上げ、人間的成長へのコミットメント、そして全員主役の組織作り。北海道大学男子ラクロス部の挑戦は、リソースや環境の制約を言い訳にせず、自らの力で運命を切り拓こうとする自律型組織の好例といえるでしょう。彼らの「煌めき」は、これからも全国のラクロス界、そして社会へと広がっていくはずです。