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“違い”こそ、私たちの武器。多様な仲間と描く勝利への一歩——長崎大全学女子サッカー部

長崎大学全学女子サッカー部は、1993年の設立以来、地域に根ざしながら成長を続けているチームです。長崎大学だけでなく、他大学や専門学校、高校生まで幅広いメンバーが集まり、経験者と初心者が共に支え合いながら日々練習に励んでいます。

「仲間」や「成長」、「勝利」をキーワードに持つ彼女たちは、部活動を通して何を得てどう成長していくのか。

今回は、副主将の井福琴音さんと橋口杏奈さんにお話を伺い、活動内容やチームの雰囲気、学年を超えてまとまる“アットホームな強さ”の秘密、そして部活動を通して得た学びについてお伝えしています。

 

 

——部の活動概要について教えてください。

 

長崎大全学女子サッカー部の主な活動拠点は長崎大学文教グラウンドです。練習は月・木曜日の16時半から18時半までの約2時間、週末は県リーグの試合や他大学・高校との練習試合など、実践の機会が豊富で、経験を積みながら活動しています。

チームは長崎県リーグ1部に所属しており、九州各地の大学や高校と対戦。春の選手権大会や夏の合宿、秋のインカレなど、「ひとつでも多く勝つ」という目標を掲げ日々練習に励んでいます。

部員構成は多様で、長崎大学を中心に、長崎国際大学・純真大学・専門学校、さらに高校生まで含め、幅広い学年とバックグラウンドのメンバーが参加しています。経験者だけでなく、大学からサッカーを始めた初心者も多数おり、初心者と経験者が混ざる中で互いに教え合い、成長するチームです。

 

——初心者と経験者が混ざる中で、上手くチームをつくれている理由は何ですか?

 

1番の理由は、「教え合うことが当たり前になっている文化」があることです。

経験者は練習中に気づいたことをその場で伝え、初心者は初心者なりに一生懸命挑戦する姿を見せる。その姿勢が互いの刺激になり、自然と成長の循環が生まれています。

また、技術を教えるだけでなく、良いプレーを言葉にして褒め合う習慣も根づいています。できたところは素直に認め合い、改善点は前向きに伝えるというポジティブな掛け合いが多い点も、部の特徴です。その積み重ねによって、初心者でも萎縮せず意見が言える雰囲気ができています。

 

 

さらに、練習メニューも上級者だけで考えるのではなく、「今日は何を頑張りたいか」を部員全員で話し合いながら決めていくスタイルです。1年生の意見もしっかり取り入れるため、誰か一人がチームをつくるのではなく、全員でチームを育てている感覚があります。

“対話しながら育て合う姿勢”こそが、経験の差を越えてまとまりのあるチームをつくれている理由だと思います。

 

——初心者が入りやすくするために、新歓活動で意識していることはありますか?

 

新歓活動では“ハードルを下げる工夫”を大切にしています。できるだけ多くの人にチラシを配ることを意識しつつ、ブースでは積極的に声をかけたり、お菓子を配って気軽に話しやすい雰囲気をつくったり、とにかく体験してもらうための“最初の一歩”を踏み出しやすくすることを大切にしています。

実際に話してみると「サッカーって難しそう」という固定概念がほぐれ、体験に来てくれる学生が一気に増えます。体験に来てもらえれば、部の温かさや楽しさは伝わるので、「まずは会ってもらう」「一度ピッチに立ってもらう」ことを新歓の最大のゴールとして取り組んでいます。

 

——部活に入る前と後でギャップはありましたか?

 

私自身も入部前は「サッカー部=厳しくて入りにくい」というイメージが強く、初心者にはハードルが高いのではと不安を感じていました。しかし、実際に入ってみると部の雰囲気は驚くほど温かく、先輩たちは丁寧に教えてくれて、分からないことも気兼ねなく聞ける環境でした。

初心者でも置いていかれず、できるようになるまで一緒に寄り添ってくれる文化が根づいており、「もっと上手くなりたい」「頑張りたい」という気持ちになりました。

 

——今年は2年生が中心となる特別な体制と伺いました。どんな変化がありますか?

 

例年は3年生がキャプテンや幹部を務めますが、今年は学業や進路の関係で3年生が活動に参加できる日が限られるため、2年生が中心となって部を運営しています。急な体制変更ではありましたが、「自分たちでチームをつくる」という意識がこれまで以上に強まり、部全体の主体性が高まったと感じています。

不安が全くなかったわけではありませんが、2年生が中心になることで、一人ひとりが役割を再認識し、皆で支え合う文化がより濃くなったように思います。1年生がとても前向きで、練習でも雰囲気づくりでも積極的にサポートしてくれるため、学年の垣根を越えて力を合わせる場面が増えました。従来の“上級生が引っ張り、下級生がついていく”という形から、今年は“全員で底上げするチーム”へと変化してきています。

 

 

——部のキーワードに“アットホーム”というイメージがありますが、具体的なエピソードを教えてください。

 

部外での交流が多いことは、大きな特徴の一つです。アットホームさの象徴は、練習以外の時間でも自然とメンバーが集まるところです。たとえばテスト期間になると、学年関係なく一緒に勉強したり、空き時間に外食することがよくあります。

また、試合の遠征中は車内で盛り上がるのが恒例で、お菓子を配り合ったり、BGMをかけてみんなで歌ったりと、まるで“友だち同士の旅行”のような、明るくにぎやかな雰囲気です。初めて参加する1年生も、この空気感のおかげで緊張がほぐれ、すぐにチームに馴染んでいきます。

さらに、イベントごとでは一致団結します。2024年の夏は、部員同士でバーベキューを開催。普段はサッカーの話が中心ですが、この日は将来の悩みを相談したり、何気ない話で笑い合ったりと、素の表情が見える貴重な時間になりました。

 

——地域や他団体との交流・ボランティア活動にはどんなものがありますか?

 

地域とのつながりを大切にしているのも、長崎大全学女子サッカー部の特徴です。

代表的なのは、男子サッカー部と協力して行う「サッカークリニック」です。近隣の小学生を大学に招き、ボールの扱い方を教えたり、一緒にプレーしたりするもので、特に女子部員は“親しみやすいお姉さん”として関わりやすいとの声をいただいています。サッカーに初めて触れる女の子が参加するきっかけになることもあります。

また「ユニクロサッカーキッズ」など地域イベントのボランティアにも参加し、運営サポートを通して子どもたちが安全に楽しめる環境づくりにも力を入れています。大学周辺の清掃活動など地域活動にも継続的に取り組んでおり、サッカーの枠を超えて地域と関わることが、部員自身の成長や大学とのつながりの強化にも結びついています。

 

——部活動を通じて得られたもの、成長を感じたことはありますか?

 

部活動を通じて1番の成長は、「仲間と支え合う力」を手にできたことです。私たちの部の特徴である“多様性”があったことで、初心者・経験者・学年の垣根を越えて、互いに補い合うことができ、技術だけでなくメンタル面でも大きく変わりました。

素直に意見を言い合える環境があることで、自分の弱さや課題をそのままにせず向き合えるようになったことも部として成長できた要素です。時にはぶつかることもあります。しかし最後は前向きに着地できる“対話の習慣”が、私たちの強みになっています。

また、ボランティア活動や学年間での支え合いを通して、責任感や主体性、感謝の気持ちも身につきました。チームメイトやOG、サポートしてくれる保護者、スポンサーなどすべての関係者の方々に対する感謝を大切にしています。

 

 

——最後に、記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

 

いつも温かいご声援・ご支援ありがとうございます。皆様からの応援が、私たちの力になっています。私たち長崎大全学女子サッカー部は、サッカーの経験だけでなく、人として成長できる場所づくりを大切にしています。

支えてくださる方々への感謝の想いを忘れず、「ひとつでも多く勝つ」という目標を掲げ、これからも一歩ずつ前へ進んでいきます。今後とも温かいご声援をよろしくお願いいたします。

多様な背景を持つメンバーが集まりながらも、互いを尊重し合い、褒め合い、支え合う長崎大全学女子サッカー部の強さは、“人”にあります。学年に関係なく意見を出し合い、ときにぶつかりながらも前に進む姿勢は、部活を通してでしか得られない経験です。ここで得た経験は、社会に出てからも組織でのチームワークや対応力として彼女たちを支えてくれるでしょう。

 

 

執筆:青木千奈(株式会社Koti)