「応援される組織」へ。コミュニケーション改革と地域貢献で1部昇格に挑む——神戸大学男子バスケットボール部
関西学生バスケットボールリーグ2部に所属し、悲願の「1部昇格」を目指す神戸大学男子バスケットボール部。スポーツ推薦のない国立大学として、文系・理系の多様な学生が集まり、その知性と組織力を武器に強豪校へ挑んでいます。勝利への執念と、組織としての心理的安全性を両立させる彼らの取り組みは、まさに現代のビジネス組織が求める理想的なチームビルディングの姿でした。

——「脱・理不尽」が生んだ、意見を交わし合う組織風土を
神戸大学男子バスケットボール部の最大の特徴は、部員同士の仲の良さと、オンオフを明確に切り替える姿勢にあります。かつては上下関係によるコミュニケーション不足が課題となった時期もありました。しかし、彼らはその反省を活かし、学年を問わず意見を出し合えるフラットな環境を整備しました。現在のチームは、上下関係を残しながらも理不尽さを排除し、誰もがチームのために意見を言える環境を整えてきました。主将の菊井氏も、自身の選出理由を「先輩・後輩からの信頼と話しやすさ」と分析しており、リーダーシップにおいて対話を重視していることが伺えます。この風通しの良さが、試合中の迅速な連携や、困難な状況下での結束力を生み出す源泉となっています。
——「ハドル」と「ハイタッチ」に込めた戦略的意図
彼らが練習や試合の中で特に重要視しているのが「ハドル(円陣)」と「ハイタッチ」という文化です。これは単なる士気向上のための儀式ではありません。試合の流れが悪くなった際や、ミスが続いた際に、全員でハドルを組んで意思統一を図り、ハイタッチで感情をリセットする。これをチームの核として徹底しています。

「勝利と仲間」という価値観を大切にする彼らにとって、身体的な接触を伴うコミュニケーションは、チームの一体感を瞬時に高めるための重要なスイッチです。個人のスキル任せにせず、組織としてメンタルをコントロールし、苦しい局面を全員で打開していく。このアプローチは、チームスポーツならではの強みであり、組織力を最大化するための高度な手法と言えます。
——「応援されるチーム」になるための地域貢献活動
「1部昇格」という競技面での目標と並び、彼らが掲げるもう一つの大きなテーマが「応援したいと思えるチームになる」ことです。その具体的なアクションとして、昨年からミニバスケットボールの子どもたちを対象とした「ウリボーカップ」を年に2回開催しています。

この活動は、地域の子どもたちにバスケットボールの楽しさを伝えるだけでなく、地域社会との接点を広げ、ファンを増やすための広報戦略でもあります。ただ支援を待つのではなく、自ら価値を提供し、周囲から愛される存在を目指す。「応援したいと思えるチームになれるよう努力します」と語る彼らの姿勢は、社会との信頼関係を重んじる、成熟した組織の在り方そのものです。
——最後に
スポーツ推薦のない環境下で、コミュニケーション改革を行い、戦略的に組織の結束を高め、地域への価値提供まで行う神戸大学男子バスケットボール部。彼らは単なる学生アスリートの枠を超え、組織の課題を自ら発見して改善し、その価値を社会に届けるプロセスを実践する自律した集団です。勝利という結果を厳しく追求しながらも、周囲との関わりを常に探求している彼らの姿。そのひたむきさは、これからの社会を明るく照らす大きな希望となるはずです。