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“勝利”と“自責”でつくる本気の組織——上智大学体育会サッカー部

 

1931年に設立された上智大学体育会サッカー部は、まもなく100周年を迎える歴史ある部です。

そんな長い歴史の中で「勝利」への本気度を磨き続けながら、現在は学生主体で運営する“考えて動く組織”へと進化を遂げています。

「勝つために必要なのは技術だけではない」──そう語る彼らは、主体性や責任感を大切にしながら、日々の練習や組織運営に取り組んでいます。

今回は、主将の塙仁成さんにお話を伺い、大切にしている価値観や、練習で意識しているポイント、これからの目標についてお伝えしていきます。

 

——活動拠点や練習日程について教えてください。

 

 

私たち上智大学体育会サッカー部は、四ツ谷駅の近くにある外堀公園総合グラウンド、江東区の新砂運動場(金曜日のみ)を拠点に活動しています。

練習日程は、月曜日が16時〜20時、水・木・金曜日が8〜10時です。土日は試合の有無や対戦相手に応じて、開始時間や活動内容が変動します。メンバーは1年生14名、2年生15名、3年生14名、4年生17名の合計60名です。(取材当時)A・Bと2つのチームがあり、Aチームの公式戦がある週は、Bチームの試合を前日か翌日に組んでいます。試合時間をずらすことで、互いの試合を観戦・分析できる環境をつくっています。
応援しあい、それぞれの成長ポイントを分析する時間を取ることも、チームの成長に必要なことと考え、柔軟に調整しています。

練習以外の時間も、筋トレなどの基礎づくりは欠かせません。現在はメンバーが個々で時間を作って実施していますが、来シーズンからはオフシーズンも含めてチームとして目標を設定し、管理していく仕組みを導入する予定です。

 

——学生主体でチームを運営する中で、意識していることはありますか?

 

現在、チームを指導する学生監督や外部コーチはおらず、学生主体で運営しています。(取材当時)学生主体でチームを動かしていく際に意識しているのは、一人ひとりが主体的に動き、責任を持つことです。

試合の分析や練習メニューの作成は、ゲームマネジメント課(GM課)を中心に上級生が担い、部全体で役割分担をしながらチーム運営を行っています。外部監督がいない環境だからこそ、選手自身が考えて動く文化が根づいており、それがチームの大きな特徴にもなっています。

以前は「一部の人が動く」という雰囲気がありましたが、近年は特に下級生が自覚を持って行動するようになり、全員が当事者として関わる文化が定着しつつあります。

 

——部内の役割分担について教えてください。

 

 

私たちは学生主体の運営をスムーズに進めるため、5つの“課(チーム)”をつくって、それぞれ専門的な業務を担っています。主な役割は以下の通りです。

 

総務課:学連や学校との連携窓口

経理課:部費やOB支援金の管理

渉外課:スポンサー交渉やサッカー教室の企画・運営

GM(ゲームマネジメント)課:試合分析や練習メニューの作成

FM(フィールドマネジメント)課:練習試合の調整やグラウンド予約の管理

 

“課(チーム)”の他にも、主将1名・副将2名が全体を統括しています。基本的な連絡ツールはLINEを使っており、幹部のLINEグループには次年度の幹部候補のメンバーも参加して早期から運営に慣れる仕組みをつくっています。普段から学年を越えて意見交換やフィードバックを行う文化があり、全員が組織の一員として自覚を持って動ける体制が特徴のひとつです。

 

——チームの価値観と、それを大切にしている理由について教えてください。

 

 

上智大学体育会サッカー部は「勝利」と「自責」という2つの価値観を大切にしています。

まず「勝利」を掲げているのは、体育会として本気で“結果を残せるチームに変わりたい”という思いからです。正直、数年前までのサッカー部は、体育会にありがちな“甘さ”が残る雰囲気がありました。しかし、今後は「関東リーグ昇格」を明確な目標に据え、“やるからには勝つ”という姿勢を全員で共有し、「勝利」を実現していきます。

2つ目の「自責」は、人のせいにしない文化をつくるためです。多様なバックグラウンドをもつメンバーが集まるからこそ、意見の食い違いや責任転嫁が起きやすい環境でもあります。そこで「まずは自分に矢印を向ける」という意識を徹底し、個々が役割を果たしながらチームとして前向きに改善する姿勢を大切にしています。

 

——地域との関わりを積極的にしていると伺いました。詳しく教えてください。

 

私たちが行っている地域との関わりは「ウォーキングサッカー」と「サッカークリニック」の2つの活動です。

ウォーキングサッカーは上智大学の別サークルと共同で行なっている活動で、地域の方々と一緒に“歩いて”サッカーを楽しむイベントです。年齢や運動経験を問わず参加できるため、地域の方と学生が交流できる貴重な場になっています。最近は開催機会が減っているものの、地域交流の大切な取り組みとして続けています。

特に力を入れているのが、サッカークリニックです。毎週月曜日に真田堀グラウンドで、小学生や幼稚園児を対象としたサッカーの練習会を実施しています。ハロウィンやクリスマスなどの季節イベントと合わせて開催することもあり、昨年度は100人近い子どもたちが集まるほど盛況でした。

「サッカーの楽しさを伝えたい」という思いから始まったこれらの活動は、部を支える軸のひとつになっています。地域との関わりを大切にして、これからも交流を続けていきたいと考えています。

 

——OB会との関わりはありますか?

 

ここ数年でOB会の方々と接する機会が増えています。月1〜2回のペースでOBの方々と食事会をす行い、世代を超えたコミュニケーションが生まれています。また、これまでの上智大学体育会サッカー部は資金不足が大きな課題でしたが、OBの方々からの支援金が集まったことで、チームの財政状況は大きく改善しました。道具の整備や運営費など、活動の幅が広がるきっかけにもなっています。

 

——今後の目標や新しい取り組みはありますか?

 

 

今後目指していきたいのは、スキル向上とチーム運営の“基盤づくり”です。

スキル向上に関する目標は、体重管理や筋トレの一元管理です。これまで個々に任せていたトレーニングや体重管理、食事面のサポートを、トレーナーと連携し、年間を通じてフィジカルを強化する体制をつくる予定です。来シーズンの目標である、関東1部リーグ戦昇格を実現するための“身体的な土台”を強化したいと考えています。

チーム運営での目標は、主将やGM課メンバーが協力して、練習中のマネジメントができる状態を作ることです。これまでは、キーパーが指揮をしていましたが、コーチという立場の目線を取り入れることで、より実戦に近い形で練習ができ、質を意識できるようになります。

学生主体だからこそ、チーム全員で「何が必要か」を常に考え、柔軟に変化と挑戦を取り入れていきます。

 

——応援してくれている方々へメッセージをお願いします。

 

 

私たち上智大学体育会サッカー部は、学生主体でチームを運営しています。サッカー推薦のメンバーはゼロの状態ですが、今年度は東京都2部リーグ優勝という結果を残しています。来シーズンは関東リーグ昇格を目標に掲げ、練習を工夫しながら基盤を整えてまいります。これからも引き続き応援をよろしくお願いいたします。

 

 

まもなく創部100年を迎える上智大学体育会サッカー部。歴史に甘んじることなく、組織づくりから地域連携、OB会との関係構築まで、すべてを学生主体で進めている姿が印象的でした。“勝利”と“自責”を軸に、主体的に考え、動き、変化を恐れずに進む姿勢は、きっと社会に出てからも大きな力になるはずです。

 

執筆:青木千奈(株式会社Koti)