「ほぼ全員初心者」が、高みを目指せる鍵は課題解決力——東北大学アイスホッケー部
部員の約30名中、経験者はたった1名。 東北大学アイスホッケー部は、まさに“ほぼ全員が初心者”から始まるチームです。
それでも彼らは「七大戦優勝」「インカレ本戦出場」という高い目標を掲げています。
その挑戦を支える独自の練習法と、困難の中で育まれる“課題解決力”に迫ります。
——独自の「陸上練習」でリソースの制約を工夫で補う

アイスホッケーは、氷上練習の費用が非常にかかるスポーツです。限られたリソースの中で成果を最大化するため、彼らは独自の工夫を凝らしています。特に特徴的なのが、他大学ではほぼ見られない「インラインスケートを使った陸上練習」です。コンクリートの上で、スケーティングやパスといった基礎練習を年間を通して実施。週2回の氷上練習と週2回の陸上練習を組み合わせ、効率的に技術を磨いています。
また、リンクでの練習前には必ずミーティングを行い、練習メニューを説明・共有することで、密度の濃い練習を実現しています。
——困難な挑戦から得る「成長」の楽しさ

部員の大半が大学からこの競技を始めていますが、アイスホッケーは非常に難しいスポーツです。インタビューに答えた大塚氏(元サッカー部)も、「普通に滑れるようになるまで半年かかった」 と語ります。しかし、難しいスポーツだからこそ、できることが増えていく喜びが大きい——それが彼らの原動力になっています。最初はできないことが多いからこそ、やればできることがどんどん増えるのが楽しい。この「成長」の実感が、部員のアイスホッケーへの情熱に繋がり、練習日以外にも自主練に励む文化を生んでいます。
——部活動で学んだ実践的な「ビジネススキル」

勝利を目指す真剣な活動の中で、学生たちは社会で即戦力となるスキルを学んでいました。勝つためには練習だけでなく、試合映像を見て「どう動くべきか」を分析する必要があります。
大塚氏は「自分の課題を客観的に見つめ、改善を続ける重要性を学んだ」と話しており、これはまさにビジネスで求められるPDCAの思考そのものです。
また、初心者に技術を教える経験は、組織におけるOJTと同じ構造です。
どう伝えれば理解してもらえるかを考え、言語化し、自ら見本を見せる。こうした工夫が自然と育成スキルにつながっています。
——最後に
彼らの目標は「七大戦優勝」と「インカレ本戦出場」です。「応援したいと思っていただけるようなチームを目指しています」と語る彼ら。
実はアイスホッケーは、防具だけで約20万円が必要になるなど、経済的な負担が大きいスポーツです。
さらにリンク使用料もかかるため、活動資金の確保は簡単ではありません。
それでも彼らは学業と両立しながらアルバイトで資金を工面し、限られた環境の中で努力を続けています。
“ほぼ初心者”というハンデを、工夫と分析で乗り越えてきた彼ら。
言語化し、人を動かす力を磨いてきた経験は、将来どんな環境でも課題を突破していく強さにつながるはずです。
執筆:ツナカレメディア編集部