「ムードメーカーの逆襲の時代が来た」エンタメで“主体性”を生み出す組織づくり——Singerly株式会社

Singerly株式会社は2020年1月に創業した組織文化変革のコンサルティング企業です。「世界をムードメイクする」というミッションを掲げ、“エンターテイメント性”を重視したアプローチで企業の組織づくりを支援しています。
今回は、代表取締役の奥田真広さんに、事業内容や目指すゴール、大切にしている価値観、今後の展開について伺いました。
——貴社の事業内容について教えてください。
私たちは、組織文化を変革するためのコンサルティングを行っています。
一般的にコンサルティングと聞くと、売上や業績拡大を想起するかもしれません。しかし私たちの目的は、“文化を変えること”——つまり「保守的な会社を挑戦的に変える」など、“組織の土台から変革する”ことを目指しています。
企業理念の策定や制度設計に加え、文化づくりにつながるイベント企画、採用コンテンツ制作なども行います。特に重視しているのが、組織のエンゲージメントを測る指標であるeNPS(Employee Net Promoter Score)の改善です。
eNPS(Employee Net Promoter Score)=職場の推奨度を数値化した指標
職場の推奨度を0〜10の11段階に分け、9〜10点:推奨者、7〜8点:中立者、0〜6点:批判者と分類します。
従業員エンゲージメントやロイヤルティを測り、離職率低下や従業員の生産性向上につなげることを目的として活用されます。
【計算方法】推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=eNPS
一般的に古い製造業やメーカーではeNPSが-60〜-50ほどと低い傾向にありますが、私たちは1年で-60から-10まで改善した実績があります。
その根幹にあるのが、クライアントとの出会いを生み出す「あさげの会」です。
——「あさげの会」について詳しく教えてください。


「あさげの会」は、招待制の経営者交流会です。厳選された米や具材、炊き方にこだわった朝食(あさげ)を味わいながら、「つながる・語る」をテーマに交流します。
始まりは、“まず経営者と友達になろう”という想いからでした。
企業文化の変革という領域は、初対面の相手に気軽に相談できるものではありません。
文化づくりは会社の根幹に関わるものであり、信頼関係が何より重要だからです。
だからこそ、完全に紹介性(リファラル)で無料の場を提供しています。90〜120分間のイベントでは、おにぎりを振る舞い、全員でワークに取り組みます。実は時間は、私たちのコンサルティングの体験をしてもらう”無料の場”になっています。 私たちが場を盛り上げる様子を見て、「こんなふうに会社を元気にしたいな」、「ここにお願いしたら会社の文化を変えてくれるかも」という思いが自然と生まれ、参加者満足度は100%、さらには依頼にもつながっています。
——貴社の社風や文化、働くうえで大切にしていることは何ですか?

我々は、“仕事で泣きじゃくる世の中”──『仕事メンヘラ社会』を目指しています。
働くうえで大切にしているのは、“エンタメ力”です。
主体的な組織をつくりたいと願う企業は多い一方で、では“主体性”を引き出すには何が必要なのか?—— それは『面白さ』です。エンタメ力があれば、人は集まり、主体的になり組織が盛り上がりますが、「やらされ感」が出た瞬間に熱は冷めてしまいます。
その面白さを出すのが、私たち「ムードメーカー」の役割です。“エンタメ力”を重視したアプローチは、ロジック中心のコンサルティングが苦手とする領域でもあります。だからこそ、これからは「ムードメーカーの逆襲の時代」。私たちはエンタメ力を武器に、企業をもっと元気にしていきます。
——Singerly株式会社で働くメンバーについて教えてください。
現在のSingerlyは、まさに“精鋭チーム”です。
5人の役員が在籍しており(2025年11月時点)、それぞれが“自分だけのムードメイク”を持っています。
たとえば私は、ムードメーカーとしての突破力と場のデザイン力が強みです。どんな企業や社長に対しても物怖じせず、“場の空気を動かす”ことを得意としています。
他にも、研究や学術的な知見をもとにアプローチを深める職人肌のムードメーカー、チームマネジメントとデジタル知識を掛け合わせて人と人をつなぐタイプ、財務・ファイナンスのプロとして組織を支えるタイプなど——それぞれが異なる分野で力を発揮しています。
全員が違う“強み”を持ちながらも、目指す方向は同じ。
だからこそ良いムードが生まれ、新しい変化を生み出し続けられるのです。
——入社するにあたり、若手人材が大切にしていくべき部分はありますか?

新卒採用で見るポイントは、以下の3つです。
- 筋斗雲に乗れるか(心の純粋さを持っているか)
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との親和性があるか
- 個人の特質・能力があるか
優秀な人ほど起業していく時代です。だからこそ、起業を目指す人材をどうやって仲間にするかが、これからの採用の勝負だと考えています。そこで鍵になるのが、あさげの会を通して、社長のネットワークを誰の手も借りずに作ることができる環境なんです。
若手にはいきなりコンサルティング業務を任せるのではなく、まずは「あさげの会」の運営やマーケティングを通じて社長ネットワークを広げてもらいます。
入社後のキャリアイメージでいうと、1年目で社長ネットワークを構築し、2〜3年目でそのつながりを活かして新規事業を立ち上げます。最終的には3年以内に自分の会社を持てる環境を整えています。
キャリアのキーワードは「コミットメント×行動量×主体性」。自らの意志でキャリアをデザインしてほしいと考えています。

——「3年以内には自分の会社を持てる環境」という言葉が印象的でした。起業を目指すことが、これから必要な力ということですか?
そうですね。私はよく「社長ビジネス」という言い方をしますが、これは“起業そのもの”を勧めているわけではありません。
本質は、“意思決定者と一緒に仕事をする経験”です。
意思決定を担う人とそうでない人では、仕事の景色がまったく違います。
たとえば「提案」ひとつ取っても、相手が最終判断を下す立場であれば、自分の言葉や行動がそのまま会社の未来に影響します。その緊張感や責任感が、仕事の向き合い方を大きく変えてくれます。
だからこそ、起業を志す人ほど「社長ビジネス=意思決定者ビジネス」を経験してほしいと思っています。
社長というのは、自分の会社の未来を背負う存在であり、常に自己鍛錬しながら成長し続ける人たちです。そうした人と一緒に働くことで、自分自身の視座も思考も磨かれていく。
その積み重ねが、結果として“自分で会社を持つ力”につながっていくと考えています。
——今後の事業展望について教えてください。

これからは、大きく4つの方向で事業を展開していきます。
1つ目は、「あさげの会」の事業化です。
これまではプロモーションとして無料開催してきましたが、今後は企業向けに「クライアントあさげ」という仕組みを提供します。
月額固定費+成果連動(レベニューシェア)というモデルで、“私たちが営業しなくても紹介が生まれる状態”をつくり、新規顧客が自然と増える仕組みを目指します。
2つ目は、海外展開です。
国内では渋谷1拠点に集中し、“ファンマーケティング型”を徹底します。
一方で海外は、ドバイ・シンガポール・ニューヨークなど複数の都市に広げ、異文化の中に“日本のエンタメ型カルチャー”を持ち込みたいと考えています。
3つ目は、「ムードメーカー人材」の採用・紹介事業です。
“場を動かす力”を持つ人材を全国から集め、Singerlyにフィットする人は採用、他社に合う人は紹介する——そんな“ムードメーカーを軸にした新しいHR事業”を立ち上げます。
4つ目は、グループ内起業の促進です。
社員一人ひとりが3年以内に自分の事業を立ち上げられる環境を整えます。
1年目で経営者とのネットワークをつくり、2〜3年目で事業立ち上げへ進む。
こうした仕組みを通じて、“主体的に動ける人材”を増やしていく予定です。
——改めて学生に対してのメッセージをお願いします。
「この時代のスカブラになろうぜ」と伝えたいです。
スカブラとは、炭鉱で働く人々を笑わせ、元気づけることを仕事にしていた存在です。
炭鉱の仕事は重労働で、いつ怪我や病気になるか分からない危険と隣り合わせです。しかし、仕事終わりにみんなで集まり、スカブラが人々を笑わせてくれることで、次の日も頑張れる──スカブラが働く人たちの元気の源になっていました。
現代の職場環境は、リモートワークやワークライフバランスなど、仕事を“苦行”と捉える風潮が強まっているように感じます。しかし、本来仕事は面白いものだと私たちは信じています。
だからこそ、現代の“スカブラ”として、働く人々にエンタメを届け、世界をムードメイクしていきましょう。
奥田真広
Singerly株式会社 CEO
関西学院大学卒。2009年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)へ新卒入社し、派遣事業のマネジメントや社内ベンチャーi-commonで100以上のコンサルPJを推進。2017年にリプルを創業し取締役COOとして事業を拡大。2020年にSingerlyを設立し、理念策定・浸透、採用戦略、文化醸成を通じた組織エンゲージメント支援を展開。30〜40代の後継経営者やレガシー産業の変革に強みを持ち、これまで100社以上を支援。ビジョンは『仕事メンヘラ社会の爆誕』。価値観を軸に”自分らしさが武器になる組織”の実現を目指している。