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監督のいない部活動で培った、「人を見る力」ーー静岡大学ソフトボール部OB 中山颯斗

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静岡県内の公立中学校で教員として働く中山颯斗さん。学級担任とソフトボール部の顧問を務めながら、2026年8月からは、勤務校での部活動の地域移行に伴い、自ら立ち上げに関わった地域クラブでも指導を続けています。

小学2年生から高校3年生まで野球一筋だった中山さんが、大学でソフトボールに転向。監督不在のチームで3年間プレーし、2年生の秋から3年生の秋までキャプテンを務めました。そこで培った「人を観察する力」は、今も教育現場で活き続けています。

今回は、中山さんに学生時代の経験と教員としての歩み、そして新しく立ち上げた地域クラブへの想いを伺いました。

 

――まず、現在のお仕事について教えてください。

 

静岡県内の公立中学校で教員をしており、4年目を迎えています。学級担任のほか、部活動ではソフトボール部の顧問をしています。競技歴としては、小学2年生から高校3年生まで野球をやっていて、大学から静岡大学のソフトボール部に入りました。

 

 

――野球からソフトボールに転向したきっかけは何だったのでしょうか。

 

高校までで野球はやり切ったという気持ちがあり、大学で続けるつもりはありませんでした。大学で何をしようか考えていたところ、地元の方から誘っていただいたことをきっかけにソフトボール部の体験に行ったのが始まりです。せっかくやるならこれまでの野球経験も活かせる競技だと感じ体験してみるとソフトボール特有のスピード感や野球とは違う魅力を感じて、挑戦してみようと思いました。

 

大学では3年間ソフトボール部で活動し、2年生の秋から3年生の秋に引退するまでキャプテンを務めました。引退後は地元のクラブチーム「原田RUSH」に加入し、現在も競技を続けています。チームは静岡県内の1部リーグに所属していて、勝敗にもこだわりながら活動できる点が魅力です。

 

――大学時代のソフトボール部で、特に印象に残っている出来事を教えてください。

 

一番印象に残っているのは、大学3年生のとき、自分がキャプテンを務めていた時期の西日本インカレ予選です。静岡で開催されたその大会で、初戦で実績のある大学と対戦しました。自分たちにとっては厳しい試合になると考えていましたが、そこで勝利できました。2回戦は別の強豪校と接戦になり、最後はサヨナラで1点差の負けを喫しました。悔しさは今も残っていますが、自分たちで考えながら積み上げてきた取り組みが、試合の結果につながった瞬間だったので強く記憶に残っています。

 

大学のソフトボール部には監督がおらず、学生だけで運営する部活でした。キャプテンを中心に、練習メニューや選手起用、試合を組むことまで学生自身で考える環境です。部員は約30人いる中で、試合に出られるのは9人だけ。誰をどう起用するかを考え続ける中で、一人ひとりの状態を観察し、必要なコミュニケーションを考えるようになりました。

 

 

――教員を志したきっかけを教えてください。

 

教員になりたいと思ったのは、小学5年生のときです。総合の授業で将来について考える機会があり、身近な大人の中で「こんな人になりたい」と思える人を考えたときに、先生方の顔が浮かびました。生徒と同じ目線に立って一緒に考えてくれたり、話を聞いてくれたりする先生の姿を見て、自然と「こういう大人になりたい」と思うようになりました。

 

中学時代に出会った先生方からも大きな影響を受けました。当時は、周囲より自分のことを優先して行動してしまう場面もありました。その先生には、挨拶や周囲への配慮といった人間性の部分を、根気強く教えていただきました。その時間があったからこそ、今の自分があると思っています。

 

――ソフトボール部での経験は、今の教員としての仕事にどうつながっていますか。

 

キャプテンとしてオーダーや采配を考える中で培った観察する姿勢は、今の生徒との関わりにも活きています。生徒がどう考えているのか、何に困っているのかを観察しながらコミュニケーションを取り、どんな声かけが効果的かを考える。そこは部活動の経験と地続きです。

 

ソフトボールでは捕手を守っていたので、投手の状態や考えを汲み取りながらプレーすることが求められるポジションでした。仲間を活かすためにどう振る舞うかという視点は、生徒との関わり方にもつながっていると感じます。大勢の中でも自分の考えを表現しやすい生徒もいれば、個別の方が話しやすい生徒もいるため、押し引きを見極めながら関わることを大切にしています。

 

――教員という仕事のやりがいは、どんなときに感じますか。

 

生徒と関わることが好きなので、すべてが好きです。目の前にいる生徒たちが、自分との関わりを通じて何かを学んだり、笑ってくれたりする瞬間を見ると、この仕事の素晴らしさを実感します。

 

生徒の成長を実感するのは、中学3年間の長い時間をかけて、あるいは卒業後5年10年たってかもしれませんが、少しずつ見えてくるものです。たとえば、それまで言えなかった「ありがとう」や「ごめんなさい」が自然に言えるようになる。自ら考え行動してみる。そうした些細な変化に気づけるのは、近くで見続けているからこそだと思っています。

 

 

――部活動の地域移行を受けて、新しくソフトボールクラブを立ち上げられたと伺いました。

 

中学校の部活動は、教員の働き方改革を背景に、学校部活動を地域で支える取り組みが、全国各地で進められています。勤務校では2026年8月から、学校部活動としての活動を終了し、地域クラブでの活動へ移りました。指導は地域の方が担う場合と、希望する教員が地域クラブの指導に関わる場合があり、自分は生徒たちとの関わりを続けたいという思いから、自ら指導・運営に関わることを希望しました。今は市のスポーツ協会やスタッフと協力しながらソフトボールクラブを運営しています。

 

まだ年齢的にも自分の時間を使える部分が多いので、これからも生徒たちと関わり続けたいと思ったことが、手を挙げた一番の理由です。新しいクラブでは、ソフトボールを通して、挨拶や周囲への配慮、自分で考えて行動する力など、人としての成長を一番に期待しています。ソフトボール自体の楽しさも伝えていきたいので、中学卒業後も競技を続けたいと思ってくれる生徒が増えてくれたら嬉しいです。

 

――最後に、今の大学生に向けてメッセージをお願いします。

 

学生時代、アルバイトや部活動、友人との時間、勉強など、学生時代にできることにはできる限り取り組んできました。何でも全力でやっていたからこそ、それぞれの場所でたくさんの人との関わりが生まれ、それが今の自分にとって大きな財産になっています。大学に進学したからこそ、いろいろな場所から来た、いろいろな考え方を持つ人たちとつながることができました。

 

特に伝えたいのは、大学まで部活動を続けた経験についてです。うちのソフトボール部のように、監督がいない環境で自分たちだけで運営したからこそ得られたものも大きいと思います。仲間と知恵を絞りながら向き合った3年間は、自分を大きく変えてくれました。自分たちで考え、組織を動かした経験は、就職活動でも自分の経験として具体的に語れるものになると思います。

今、部活動に本気で取り組んでいる学生や、これから始めようか迷っている学生には、ぜひその時間を大切にしてほしいと思います。

 

監督のいない環境で、仲間と話し合いながら答えを探し続けた3年間。そこで身についた一人ひとりを観察し、相手に合わせて関わる姿勢は、今、教育現場で生徒たちと向き合う中山さんを支えています。部活動の形が変わっていく時代の中でも、「生徒たちと関わり続けたい」という思いを軸に、自ら一歩を踏み出す姿は、これから社会に出ていく学生が、自分の経験を次の役割にどう活かすかを考える上でも、参考になるのではないでしょうか。

 

中山颯斗 / 静岡県内公立中学校 教員

小学2年生から高校3年生まで野球に取り組む。静岡大学入学後はソフトボール部に転向し、2年生の秋から3年生の秋まで主将を務める。卒業後は地元の社会人クラブチームに加入し、現在も地元の社会人クラブチームで競技を続けている。現在は学級担任とソフトボール部顧問を務めるほか、2026年8月の部活動の地域移行に伴い、自ら手を挙げて地域のソフトボールクラブを立ち上げ、指導にあたっている。