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キャプテンとして学んだ「相手を理解する姿勢」――新潟大学アイスホッケー部OB 戸田智

古河電気工業株式会社で営業職として働く戸田智さん。2024年に新潟大学を卒業し、現在は電力会社向けに、電力インフラの販売と施工管理に携わっています。

 

兵庫県出身で、新潟大学経済科学部在学中はアイスホッケー部に所属。大学からアイスホッケーを始め、3年生と4年生の2年間、キャプテンを務めました。インカレ直前にキーパーから退部の申し出を受けた経験や、マネージャーがやりがいを持てるチーム運営に悩んだ経験は、今の仕事にも通じているといいます。

 

今回は、戸田さんに競技を選んだ理由やチーム運営の経験、そして現在の仕事とのつながりについて伺いました。

 

――現在のお仕事について教えてください。

 

古河電気工業で営業職に就いています。業務内容を簡単に言うと、特別高圧電力を送るケーブルの販売と、施工の取りまとめを担当しています。発電所や変電所、データセンター、大型病院などで使用される製品です。お客さまは電力会社が中心で、東京本社に勤務し、主に東京電力とのやりとりを担当しています。

 

――古河電気工業に入社した理由を教えてください。

 

きっかけの一つは、古河電工アイスホッケー部を前身とする、H.C.栃木日光アイスバックスとの歴史的なつながりに興味を持ったことです。もう一つは、部活とは直接関係ありませんが、電力や通信といったインフラ設備は、今後も社会に欠かせない領域だと考え、安定性と社会貢献性の両方を重視して選びました。今も社会人のクラブチームでアイスホッケーを続けています。

 

――競技歴について教えてください。大学からアイスホッケーを始めたと伺いました。

 

小学生の頃はローラースケートを履いて行うインラインホッケーをしていて、中学ではハンドボール、高校ではラグビーをしていました。アイスホッケーを始めたのは大学からです。

 

 

――なぜ大学から未経験のアイスホッケーを選んだのですか。

 

サッカーや野球に比べると競技人口が少なく、大学から競技を始める人も多く、比較的近いスタートラインから挑戦できる競技だと考えたからです。経験者がいると、どれだけ努力しても追いつけない部分が出てきてしまいます。それよりも、みんなが横一列でスタートして、努力が成果につながりやすい競技に魅力を感じてきました。もう一つの理由は、4つ上の兄が大学時代にアイスホッケーをしていたことです。兄から詳しい説明を受けたことはありませんでしたが、スピード感や防具の格好良さに惹かれ、大学入学前から始めたいと思っていました。

 

――大学時代で印象に残っている出来事を教えてください。

 

一つは、国民体育大会に出場する新潟県代表に選ばれ、、試合に出場して得点を決めたことです。そのときのスコアシートにチームメイトからサインを書いてもらい、今も大切に保管しています。

 

もう一つは、チームで唯一のキーパーが部活をやめると言い出した出来事です。インカレの1週間前という、キーパーが不在になれば試合への出場自体が難しくなる、切迫したタイミングでした。夜中の3時、4時まで電話で話し合ったことは、今でも強く記憶に残っています。

 

――キーパーが退部を申し出た理由と、その後どのように向き合ったのですか。

 

キーパーは、味方が得点した瞬間は、他の選手から離れた場所にいるため、喜びを共有しづらく、逆に失点した瞬間は一番近くで仲間に見られるポジションです。そうしたプレッシャーや孤独感が、退部を考えた理由でした。

 

私自身、キーパーの孤独感はある程度理解していたつもりで、得点が決まったときはキーパーにもハイタッチをするなど、日頃から意識はしていました。ただ、自分一人がそれをやるだけでは、チーム全体には広がりません。キーパーの孤独感をチーム全体で理解し、支える関係づくりを進めながら、話し合いを重ねました。。上級生の引退後は、1つ下の代と協力しながら、3年生からの2年間でチームをつくってきました。

その中で築いてきた関係性があったからこそ、チームへの熱量が伝わったのだと思っています。

 

 

――チーム運営で一番苦労したことは何ですか。

 

マネージャーのモチベーションをどう保つかです。選手には、競技そのものを楽しむ気持ちや試合への出場が、活動の原動力としてありました。そのため、練習内容や出場機会を通して、目標を共有しやすい面がありました。ですが、マネージャーは試合に出場するわけではなく、練習中の役割も選手のサポートが中心です。何にやりがいを感じてマネージャーを続けているのかが見えにくく、そこを探るのが一番苦労した部分です。試合に出ている選手だけがチームのように見えますが、実際はマネージャーもチームの一員です。その存在を大切にしたいという思いが、マネジメントの中心にありました。

 

――そこから得た学びを教えてください。

 

もともと私は、人に仕事を任せるのが苦手な性格で、何でも一人で抱え込みがちでした。ただ、チームで動く以上、一人でやることには限界があります。特にマネージャーの仕事は自分にはできないことも多いため、仕事を分解して役割分担をし、任せた部分にはきちんと感謝を伝える。仕事を分担し、相手への感謝を言葉にすることの大切さを学びました。

 

――今のお仕事で、大学時代のキャプテン経験が特に活きていると感じる場面はありますか。

 

一番つながっていると感じるのは、他部署、特に工事担当者に協力を依頼する際の関わり方です。こちらから何をしてほしいかを伝えるのは簡単ですが、相手が普段担当している業務や置かれている状況を理解した上で協力を仰ぐことを意識しています。

 

これは、大学時代の経験と同じです。選手に「こういうプレーをしてほしい」と要求するのは簡単です。ただ、その選手が何を考えてそのプレーをしたのか、普段どんな練習をしてきたのかというバックグラウンドを理解しないまま要求を押し付けても、選手の納得感にはつながりにくいものです。個人をよく観察し、コミュニケーションを取るという姿勢は、今の仕事にもそのまま活きていると思います。

 

今の業務で一番大変なのは、電力工事の案件期間の長さです。案件によっては、契約から工事の完了まで数年を要します。契約を取って終わりではなく、契約後がスタート地点です。工事が滞りなく進むように管理し続けることに、日々力を注いでいます。

 

――最後に、今の大学生に向けてメッセージをお願いします。

 

私自身、就職活動のために体育会に入ったわけではありませんでした。それでも、社会人になった今、体育会に入って良かったと感じています。就活に向けてどう体育会を強みにしようかと考えるよりも、今の環境でできるだけの努力をすることの方が重要だと思います。何かに本気で取り組んだ経験は、それが将来何につながるかその時点ではわからなくても、何らかの形で自分の力になると思います。

 

もう一つ伝えたいのは、体育会という肩書きよりも、そこで何を得たかが大切だということです。体育会でしか得られないものを得た人が、結果として就職活動でも強みを持てるのだと思います。体育会という肩書きだけに頼らず、そこで何を考え、どう行動したのかを大切にしてほしいです。

そして社会に出ることについても、気負わずリラックスして臨んでほしいと思います。一つの会社だけが社会のすべてではありません。視野を広く持ち、そこに縛られすぎないでほしいと思います。

 

キーパーの孤独に向き合い、マネージャーの存在を大切にしながらチームをつくり上げた大学時代。そこで培った「相手の背景を理解する姿勢」は、部署を越えて関係者と協力する現在の仕事にも活かされています。体育会という肩書きに頼るのではなく、そこで何を学び取ったかを大切にする戸田さんの言葉は、部活動で得た経験を、就職活動やその後の仕事にどうつなげるかを考える学生にとって、参考になる言葉ではないでしょうか。

 

戸田智 / 古河電気工業株式会社 営業職

兵庫県出身。新潟大学経済科学部卒業。小学生時代にインラインホッケー、中学時代にハンドボール、高校時代にラグビーを経験し、大学からアイスホッケーを始める。3年生と4年生の2年間、アイスホッケー部のキャプテンを務める。2024年に古河電気工業に入社。電力インフラ設備の販売と施工の取りまとめを担当している。社会人になった現在もクラブチームでアイスホッケーを続けている。