伝統の「気合いと根性」を胸に、データに基づいた目標管理で勝利を掴むー九州大学ヨット部

1927年に設立された九州大学ヨット部は、100年近い歴史を持つ伝統ある部活動です。その活動の根幹には、部員全員が言葉にする「気合いと根性」という、時代に逆行するかのような熱いスローガンが存在します。しかし、それは単なる精神論に留まるものではありません。昨今主流のKPIやKGIといった目標管理手法を練習に導入し、科学的根拠に基づいたチーム強化にも取り組んでいます。伝統と革新を武器に「全日本インカレ総合入賞」を目指す同部の主将である前田さんにお話を伺い、厳しい練習を通して学生たちが何を学び、どのように成長していくのか、その魅力をお伝えしていきます。

 

――100年の歴史と多様な仲間たち

 

 

九州大学ヨット部は、福岡市ヨットハーバーを拠点に活動しています。練習は土日の朝7時半から夕方6時まで行われるほか、平日には自主練習も行っています。現在の部員は1年生から大学院生まで合計55名が在籍しており、文理比は「文系:理系=2:8」といった構成です。部員の出身競技は様々で、スポーツ経験者は多いものの、多様なバックグラウンドを持つ学生が切磋琢磨しています。
年間の活動は、春の新人戦から始まり、夏には九州予選、そして11月には最大の目標である全日本インカレを迎えます。大きな目標に向けて、部員一丸となって日々練習に励んでいます。

 

――逆境を力に変える「気合いと根性」

 

 

部の雰囲気を一言で表すと、「気合いと根性」であると前田さんは語ります。この言葉は形だけのものではなく、彼らの行動指針そのものです。
部の印象的なエピソードとして、前田主将は「連日強風の練習で全員が疲労困憊の中、それでも勇猛果敢に海へ出て行った結果、いつの間にか九州内の強風域の種目では私たちが無敵になっていました。」と語ります。

 

――勝利への最短距離を導き出す、新たなアプローチ

 

彼らの強みは精神論だけではありません。強い気持ちで困難に挑む姿勢と、データに基づいた客観的な分析を組み合わせ、常に改善を繰り返すことで組織としての成果を高めています。
練習時にはKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を導入し、チームの技術的な成長に客観性を持たせています。例えば、練習時に「風速ごとの速度」などをKPIとして設定し、日々の練習で数値を計測・分析しています。なぜその練習が必要なのか、目標達成のために今何が足りないのかをデータをもとに議論し、戦略を立てる。熱い思いに加えて、科学的なアプローチで常に高みを目指しています。

 

――当事者意識が育む、課題解決力とリーダーシップ

 

 

部活動を通して得ることができるものは、ヨットの技術だけではありません。主将は「自ら課題を見つけ、当事者意識をもって解決に導くことの重要性を学びました」と語ります。良い組織をつくるために主将自ら、良い組織をつくるために主将自ら、リーダーシップに関する書籍から他者への働きかけ方や目標設定の手法を学び、実践を繰り返す中でその結論に至ったとのことです。失敗を他責にせず、自分自身の課題として捉え、周囲を巻き込みながら解決策を実行する。この経験は、社会に出てから必ず活きる課題解決力やリーダーシップの礎となるはずです。
また、その言葉を裏付けるように、卒業生は社会の第一線で活躍しています。直近の学部卒業生は、大手銀行、メガベンチャー、総合病院などに就職しました。また、大学院に進学した卒業生は、現役部員のコーチングを定期的に行うなど、次世代の育成にも貢献しています。

 

――最後に、九州大学ヨット部主将からのメッセージ

 

日々、九州大学ヨット部を応援して頂いている保護者の皆様始め、OBの方々、ハーバー関係者の方々、皆様のおかげで日々安全に、そして楽しく部活動を行うことが出来ておりますことを、改めて感謝いたします。
大学での部活動とは単にスポーツをするだけの集団でなく、学生やたくさんの関係者と関わることで多くを学び、人としての成長ができる場です。そのような大学でしか味わえない、唯一無二の素晴らしい環境で今後より良い活動が出来ますよう、引き続き応援していただけますと幸いです。今後とも九州大学ヨット部をよろしくお願いいたします。

伝統的な精神論を大切にしながらも、現代的な分析手法を取り入れて進化を続ける九州大学ヨット部。ここで育った学生たちは、社会という大海原でも、きっと力強く未来を切り拓いていくことでしょう。