競技志向も、楽しむことも。誰もが挑戦できる――長崎大学トライアスロン部
スイム、バイク、ラン。3つの競技を1人でこなすトライアスロンは個人競技でありながら、練習や運営の随所にチームワークが求められるスポーツです。1987年に創設された長崎大学トライアスロン部(正式名称:全学トライアスロン部)は、競技経験や所属大学を問わず、幅広いメンバーを受け入れながら、この個人競技に部としての一体感を持たせています。限られた部費の中で工夫しながら活動を続ける姿勢や、目標が異なる部員同士が同じ部で両立する仕組みからは、目標の異なる部員が、どのように一つの部で活動を続けているのかが見えてきます。副部長を務める小西康晴さんに、部の環境や運営の工夫を聞きました。

――長崎大学トライアスロン部とはどんな部活動ですか?
長崎大学トライアスロン部は、学部を問わず参加できる部活動です。学部生だけでなく大学院生も所属しています。部員の出身競技は野球、ソフトテニス、陸上、水泳などさまざまで、私自身も中学まで水泳、高校では弓道部に所属しており、大学進学を機にトライアスロンを始めました。新しい競技に挑戦したい人や、大学進学後も運動を続けたい人など、参加のきっかけはさまざまです。
――未経験者や他大学の学生も歓迎しているのですね。
部員は長崎大学の学生に限りません。活水女子大学の学生や看護系の専門学校生も所属しており、年齢制限も設けていません。社会人として参加しているメンバーもいます。運動部出身に限らず、トライアスロンや持久系競技の経験がないメンバーも多く、経験や所属にかかわらず参加しやすい雰囲気が部の特色です。新入生は主にInstagramでの発信と新入生歓迎行事をきっかけに見学に訪れ、実際の練習を見て雰囲気の良さに惹かれて入部を決める学生が多いです。

――日々の練習はどのように行われていますか?
活動拠点は松山競技場と長与、神の島です。スイムは市民プールでの自主練習が中心になります。ラン練習は毎週水曜、バイク練習は毎週土曜に1年を通して実施し、スイム練習は夏季に行います。自転車は入部当初、台数の限られた部の共有車両を使い本格的に競技を続ける場合は、個人で自転車を購入する部員もおり、大きな費用がかかります。レース用のトライスーツは長崎大学の名前が入ったものを部員それぞれが1着所有しており、価格は3万8000円ほどです。共有カレンダーで練習予定を共有しており、学年を超えて自主練習に加わる部員も少なくありません。
――大会に向けた練習で意識していることは何ですか?
学生の主要大会では、スイム1500m、バイク40km、ラン10kmの距離で競うことがあります。長崎大学トライアスロン部は日本学生トライアスロン連合の九州沖縄ブロックに加盟しており、全国大会(インカレ)につながる予選は西日本エリアの大学を対象に実施されます。この予選にはスイムに40分の制限時間が設けられており、この時間内に泳ぎきれなければ次のバイクに進めないため、スイムを課題として重点的に練習する部員もいます。年間スケジュールは、4月の新入生勧誘に始まり、6月頃に開催される天草宝島国際トライアスロン大会(熊本県)やインカレ予選、9月のインカレ本戦へと続きます。このほか12月から3月にかけては、各都道府県で実施される認定記録会(スイムとランのタイムを個人で計測できる記録会)に参加する部員もいます。大会によっては3人で種目を分担するリレー形式もあり、それぞれの得意種目を活かして出場する機会もあります。活動を続ける中で、それぞれが苦手種目を補いながら、全体の記録を伸ばしています。

――部費を抑える運営には、どのような工夫がありますか?
長崎大学トライアスロン部は、他大学のトライアスロン部と比べて部費を低く設定しています。部としての活動費に充てられる範囲は限られますが、部員それぞれが必要な競技用具に費用を充てやすくする狙いです。用具の費用は基本的に部員の自己負担で、アルバイト収入や大学の支援制度などを活用する部員もいます。私自身は、水泳クラブのコーチや居酒屋でのアルバイトで得た収入を自転車部品の交換費用に充てています。加えて、地元企業から、遠征時のレンタカー代やガソリン代の一部をスポンサーとして支援しています。部の公式Tシャツにも協賛企業として名前が入っており、こうした企業からの支援も、部員個人の負担を抑えながら活動を続ける支えになっています。
――目標が異なる部員同士は、どのように両立していますか?
部にはレース志向で記録向上を目指す部員と、運動不足の解消や趣味として楽しむ部員がおり、競技への向き合い方は部員によってさまざまです。
新しい運営体制になる際にはミーティングを開き、部員それぞれがやりたいことを実現できるよう1年間の方針を話し合います。ラン練習やバイク練習も、練習への参加頻度が異なっても、それぞれの目標を尊重できる雰囲気づくりを幹部が心がけています。競技経験や現在のレベルが異なる部員同士が一緒に練習する場面でも、互いの取り組み方を尊重し合いながら、それぞれが自分の力を伸ばすことに集中できる関係を築いています。

――仲間との繋がりを感じるのは、どんな時ですか?
トライアスロンのレースは遠征を伴うことが多く、移動中もレンタカーを部員自身で運転し、宿泊先も自分たちで手配します。遠征の準備や移動を一緒に行うことで、学年を越えて関わる機会が自然と増えます。部活動のない日でも学年を問わず学食に誘い合ったり、共有カレンダーや連絡をきっかけに自主練習に参加したりする光景は日常的です。日々の練習では、先にメニューを終えた部員が別メニューをこなす部員に声をかけるなど、互いを応援し合う文化も根付いています。過去には長崎市内の神社を10カ所巡るスタンプラリー形式の交流イベントを実施し、部員から好評でした。
他大学との交流も盛んです。長期休暇には九州大学、佐賀大学、福岡教育大学が参加する合同合宿が開催され、広島大学が加わることもあります。中でも九州大学とは合同練習や合宿で関わる機会も多く、1番の練習仲間でありライバルです。他大学との合宿は、部内の絆だけでなく、九州内のトライアスロン学生同士のつながりを広げる機会にもなっています。

――今後の目標を教えてください。
チームとしては、競技志向の部員も運動不足解消を目的とする部員も一緒に楽しめる、部活動以外の交流イベントを今後も増やしていきたいと考えています。神社巡りのような競技以外の企画を継続していく方針です。記録向上を目指す部員も、楽しむことを目的とする部員も、同じ部で活動を続けられているのは、毎年、部の方針を話し合う場を設けてきたことの積み重ねでもあります。長崎大学トライアスロン部が大切にしているのは、経験や目標を問わず誰もが入りやすい雰囲気です。