「楽しくストイックに」舞台をつくる。コメディからシリアスまで幅広い舞台に挑む部員たち——神戸大学演劇部自由劇場
ハイテンション・ハイテンポな芝居を得意とし、コメディからシリアスまで幅広いジャンルに挑む神戸大学演劇部自由劇場。1976年の創部以来、長い歴史を重ねてきた同部では、役者だけでなく、演出や照明、音響、美術など各部署の部員が協力し、一つの舞台を創り上げています。「楽しくストイックに」を合言葉に、部活動として作品の質にこだわりながら、仲間との時間も大切にしてきました。年間5つの公演を軸に、受け継がれてきた伝統を守りつつ、新しい挑戦を重ねています。今回は、部長の河合遥希さんに、活動への思いや舞台づくりで大切にしていることを伺いました。

——神戸大学演劇部自由劇場について概要を教えてください。
私たちは、ハイテンション・ハイテンポな芝居を得意とする演劇部です。1976年に創部し、50周年を迎えました。現在は約70名の部員が在籍しています。役者だけでなく、演出や舞台監督、照明、音響、美術、衣装、制作など、それぞれの部署に分かれて活動しているのが特徴です。全員が自分の役割に向き合い、協力しながら一つの舞台を創り上げています。
活動は平日の月・水・金と土曜日が中心で、公演前になると活動日数が増えます。年間では、新歓公演、七月公演、新人公演、秋冬公演、卒業公演という5つの公演を軸にしています。最近は大会に出ることは少なく、この年間公演の質を高めることを大切にしています。50年かけて培われてきたものを守りながら、新しいことにも挑戦したいと考え、日々取り組んでいます。
——河合さんが自由劇場に入ったきっかけを教えてください。
きっかけは、1回生のときに見た新歓公演です。それまで演劇を見たことはなかったのですが、その公演がとても面白く、腹筋が痛くなるほど笑いました。もともとお笑いが好きだったので、自分もこういうことをしたいと思い、入部を決めました。全力で演技し、役として生きている先輩方がとてもかっこよく見えたことも大きかったです。
入部してから、演劇にはお笑いと似ているところもあれば、違うところもあると感じました。お客さんを楽しませたいという点は近いです。一方で、お笑いが笑いを目的にしているのに対して、演劇には笑い以外にも、何か一つ伝えたいものがあります。劇場から帰るときに、何か考えさせられるものが残る。そこが演劇の面白さだと感じています。

——年間の5つの公演には、それぞれどんな違いがありますか?
公演ごとに役割やテーマが異なります。新歓公演は、新入生に向けた公演です。演劇を見たことがない人でも楽しめるよう、コメディやエンタメ作品を中心に、分かりやすい劇を届けています。
新人公演は、新歓公演をきっかけに入部した1回生が役者を務め、2回生がスタッフを担当します。3回生と4回生は参加せず、夏休みの1か月半ほどを使って、1回生と2回生だけで一つの舞台をつくり上げます。下級生だけで一つの舞台をつくり上げる、成長の機会となる公演です。
七月公演では、普段より大きな学内の講堂を使わせてもらいます。会場が広くなる分、多くのお客さんに来ていただけることに加え、挑戦できることも増えます。秋冬公演は、幹部である3回生の集大成を見せる公演です。ジャンルの幅も、最も広くなります。卒業公演は、4回生が主体となり、やりたいことを全員で叶える、挑戦色の強い公演です。
——最も印象に残っている公演について教えてください。
新人公演で初めて演出を任されたことが、一番印象に残っています。それまで先輩に頼りきりだった私が、同期の仲間と初めて一緒に公演をつくりました。もともと仲は良かったのですが、この公演を経てさらに関係が深まったことが、個人的にとても嬉しかったです。
演出として大変だったこともあります。多くの新入部員と向き合い、一人ひとりに合う指導方法を探りながら育てていくのは、楽しい一方で簡単ではありませんでした。性格も、合う指導方法も人によって違います。一人ひとりにどのように伝えれば伸びるのかを考えながら、試行錯誤を重ねました。公演前には体調を崩す部員もいて、本当に公演を実施できるのか不安になった時期もありましたが、最終的には無事に本番を迎えられました。
本番では、1回生が1か月半ほどの稽古で大きく成長した姿を、客席の後ろから見ました。最終日には、頑張ってきた思いがあふれて公演前に思いが込み上げる新入部員もいました。カーテンコールでは役者が泣く声が聞こえ、お客さんの中にも涙を流してくださる方がいました。感動的なものをつくれたのだと実感できた瞬間でした。

——演出で大切にしていることは何ですか?
一番大切にしているのは、役者を務めた1回生に「これからも演劇を続けたい」と思ってもらうことです。新人公演は、彼らが初めて本格的に演劇に関わる公演です。演劇は楽しいものですが、大変なこともあります。つらいときに新人公演を思い出して、また続けようと思ってもらえるような景色を見せたいと考えていました。
こだわったのは、最後のシーンで全員を舞台に立たせることです。一度暗転してから明るくなったときに、お客さんが拍手で迎えてくれる。その景色を全員に見てほしくて、そこは特に大切にしました。スタッフのみんなにも、頑張ってよかったと思ってもらえる公演にしたいと考えていました。
この発想は、私自身が役者として新人公演の舞台に立ったときの経験から来ています。同じ景色を見たことが、私にとって演劇を続けるきっかけになりました。先輩から受け取ったものを、後輩たちにも渡したいという思いがあります。
——自由劇場らしさを一言で表すと何ですか?
「楽しくストイックに」という言葉が、自由劇場らしさだと思っています。私たちは部活動として活動しているため、楽しむだけではなく、作品の質にも向き合う必要があります。お客さんが来てくださる以上、作品の質は妥協できません。自分たちが楽しんでいるだけの自己満足になってはいけないと考えています。
だからこそ、先輩から後輩にも、後輩から先輩にも、改善すべき点は率直に伝え合います。
役者は週に一度ほど通し稽古をして、それに対してスタッフが率直にフィードバックします。特に新人公演では、まだ経験の浅い1回生が厳しい言葉を受けることもあります。
一方で、私たちは学生主体の団体であるため、楽しむことも忘れたくありません。休憩時間には一緒に昼ご飯やおやつを食べ、活動後にご飯へ行くこともあります。真剣に取り組む時間と全力で楽しむ時間のメリハリを大切にしています。

——創部50年で受け継がれてきたものはありますか?
私たちは、運営の仕組みを50年かけて受け継いできました。各部署にチーフと呼ばれるリーダーを立て、チーフと演出が会議で話し合いながら作品をつくっていきます。演出は最初に台本を持ち寄り、みんなで読み合わせたうえで投票する台本の選考会を開きます。こうした進め方はどの公演でもおおよそ共通していて、私たちが一からつくったものではなく、先輩方が積み上げてきたものです。
稽古の方法にも、受け継がれてきた方向性があります。一から練習方法を考えるのは難しいので、先輩方が築いてきた方法があることで、役者のレベルが保たれていると感じます。
真面目な面だけでなく、楽しい行事も受け継がれています。本番前に演出が一人ひとりへ感謝の言葉を伝えたり、卒業公演では卒業生にまつわるエピソードを盛り込んだ劇を披露したりします。公演そのものには直接関わらなくても、部の文化を形づくるこうした行事が残っていることも、自由劇場の良さだと思います。
——自分たちの代で挑戦していることはありますか?
新しい取り組みにも挑戦しています。一つは、六甲祭という神戸大学の文化祭への出店です。ここ最近自由劇場は六甲祭に関わってこなかったのですが、新たな取り組みとして、文化祭への出店なども検討しています。
実現に向けて調整を進めながら、これまでにないことに取り組もうとしています。
稽古の面でも、外部のワークショップに参加したり、本を読んだりして、新しい練習方法を取り入れています。受け継がれてきた方法を大切にしながら、自分たちで考えて更新している部分もあります。伝統を守るだけでなく、新しい表現や企画にも挑戦し続けたいと考えています。

——コメディからシリアスまで、幅広いジャンルに挑戦する難しさや面白さはどこにありますか?
難しさは、ジャンルによって伝え方が大きく変わるところにあります。役者もスタッフも、コメディとシリアスでは方法を変える必要があります。たとえばスタッフなら、笑いを生む場面では効果音を入れ、シリアスな場面ではあえて無音にするといった判断があります。私たちはコメディを多く上演している分、シリアスな劇では普段とどう変えるかを考えるのが大変です。
役者としても、得意なハイテンション・ハイテンポをどこまで残すかを考えます。すべてを普段と変える必要はありません。たとえば前半はいつも通りコメディらしく演じ、後半は少しトーンを落とすといった調整をします。
こうした芝居を支えるために、稽古では大きな声を出す基礎練習に加えて、役者自身が感情や身体を大きく動かせるワークショップも取り入れています。自分たちが楽しまなければ、お客さんにも伝わらないと考えているからです。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
私たちが公演場所まで足を運んでいただく必要がある中で、それでも毎公演足を運び、温かく見守ってくださる皆様、日頃から支えてくださる企業や関係者の皆様に、心から感謝しています。皆様の応援があるからこそ、思い切り挑戦し、より良い舞台づくりに全力で向き合えます。これからも、観に来てくださった方が笑ったり泣いたり、何かを感じたりするきっかけになる作品を届けられるよう、部員一同で取り組んでまいります。
入部を考えている方にも伝えたいことがあります。自由劇場は、役者だけでなく、衣装や舞台美術、音楽など、さまざまな形で舞台づくりに関われる場所です。演劇を見たことがない人でも、自分の好きなことややってみたいことを入り口にできます。何か一つのことに本気で向き合う経験は、自分らしさを見つけることにつながると思います。少しでも興味があれば、ぜひ一度公演や活動を見に来てください。