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受けた優しさを演奏で返す。一打ごとに思いを込めて舞台に立つ——流通科学大学和太鼓部

月に一度プロの和太鼓奏者を招き、質の高い太鼓で演奏に磨きをかける流通科学大学和太鼓部。依頼を受けて各地で演奏しています。2004年の創部以来受け継いできた看板を守るため、多い月には5〜6件の本番をこなしながら、一つひとつの演奏に相手への思いを込めています。海外公演の費用など金銭面の課題を抱えながらも、部員は自分の意志をしっかり持ち、和気あいあいとした雰囲気で活動を続けています。今回は、部長の近藤直哉さんに、和太鼓の魅力や部の強み、活動への思いを伺いました。

 

——流通科学大学和太鼓部について概要を教えてください。

 

2004年に創部され、主に神戸市西区を拠点に活動しています。練習は月曜と木曜の18時から20時半まで行っています。部員は約25人で、さまざまな学部やキャンパスから部員が参加しています。

大きな特徴は、順位を競う大会に出るのではなく、依頼を受けて各地で演奏することです。目標は、毎年開催する引退公演「流風和奏」で、応援してくださった方への感謝と自分たちの熱意を音に乗せて届けることです。演奏を聞いて「太鼓っていいな」と思ってもらうこと、日本の伝統である和太鼓の魅力を伝えていくことを大切にしています。

 

——近藤さんが和太鼓を始めたきっかけを教えてください。

 

きっかけは、仲間をつくりたかったからです。私は県外から一人で兵庫県に引っ越してきて、神戸のことを何も知らないまま大学生活が始まりました。

とにかく仲間がほしくて、いろいろな部活を見て回る中で、和太鼓部に体験入部しました。初めて太鼓を叩いたときは腕に強い負担を感じましたが、それを気にせずどんどん叩く先輩がいて、「こんなことができるのか」と驚きました。

演奏のときは真剣で引き締まった雰囲気なのに、それ以外の時間は優しい先輩や仲間ばかりで、その違いにも惹かれました。一人ひとりが熱意を持って太鼓に向き合う姿を見て、入部を決めました。

 

——活動にのめり込むようになったきっかけは何ですか?

 

2回生のときに企画した「地域和太鼓コンサート祭」が大きな転機でした。先輩方が始めたイベントの第3回を、先輩方がつくってきたものをさらに良くしようと仲間と一緒につくり上げました。

私はもともと人と話すのが得意ではありません。それでも、自分から「この演出はどうかな」「この曲はどうかな」と話しかけながら企画を進めました。運営の方針をめぐって思いがぶつかり合うこともありました。

相手の顔色をうかがうのではなく、自分の伝えたいことを全部ぶつけ合えたことが、私にとっていちばん熱が入った経験です。

このイベントでは、参加団体の皆さんに一つの曲を演奏してもらう企画も出しました。同じ太鼓でも、アマチュア、高校生、プロの方のソロでは音がまったく違います。叩く人によって音が変わる面白さを、強く感じました。

 

 

——和太鼓の魅力と難しさはどこにありますか?

 

魅力は、その場で聞く迫力です。映像で見るだけでも魅力は伝わりますが、現地で聞くと音が地面を通して響いてきます。体に伝わる振動と目で見る迫力があり、そこを喜んでいただけることが多いです。

難しさは、腕を振り下ろすだけでは良い音が出ないことです。振り下ろす最後に手首を返したり、肩甲骨から腕を上げてゆっくり下ろしたりと、体の動きが連動しなければ良い音は出ません。単純な動きに見えても、一つひとつの動きの精度が高くなければ、相手の心に響く音にはならない。そこが太鼓の面白さであり、難しさだと思います。

上達のために私が意識しているのは、太鼓の曲だけでなく、クラシックやロック、演歌、J-POPなど、いろいろな音楽を聞くことです。曲の雰囲気を知っておくと、自分の演奏にも取り込めるようになります。

 

——他の団体と比べた強みは何ですか?

 

強みは、一級品の太鼓を使っていることと、プロの指導を受けられることです。私たちは人数がそこまで多くない分、太鼓の質にお金をかけています。使っている太鼓は日本でもトップクラスの高品質の太鼓で、創部当初から受け継いできました。太鼓の質によって音の響きや表現の幅が変わるので、この楽器は大きな強みです。

さらに、月に一度、プロの和太鼓奏者の木村優一さんが指導に来てくださいます。木村さんとは、創部当初から20年以上のお付き合いがあります。

太鼓を打つこと自体には感覚も必要ですが、体をどう動かすかは理屈で説明できます。未経験の部員でも、木村さんの指導を受けることで、どう動かせばどんな音が出るのかを理解でき、技術が上がっていきます。木村さんは太鼓の文化を尊重するプロで、ミスにも前向きに向き合えるよう、分かりやすく指導してくださる先生です。

 

——印象に残っている演奏はありますか?

 

初めて学外で演奏した、東京での大学対抗の太鼓フェスティバルです。参加者には海外から来た方や子ども、県外から来た大学の学生もいました。そうした人たちを前にして、「自分たちも負けていられない」という気持ちが初めて生まれました。

それまでの私は楽譜どおりに叩くだけで、動きも小さく、お客さんの目にはほとんど残っていなかったと思います。この舞台をきっかけに、大きな声で掛け声を出せるようになり、ダイナミックな動きも少しずつできるようになりました。

腕をしっかり伸ばし、体を使って打てるようになったことで、お客さんにどう見せるかも考えられるようになりました。今の自分があるのは、この東京での公演があったからだと思います。

 

 

——活動を続ける中での課題はありますか?

 

いちばんの課題は金銭面です。私たちはアマチュアなので、基本的に出演料はいただかず、交通費などの実費をお願いしています。

一回の公演で車両のレンタル代だけで安くて2〜3万円ほどかかります。部費は月1,000円で、足りない分は部員でやりくりしています。

協賛は部そのものではなく、引退公演「流風和奏」につく形でいただいています。演奏を見て応援したいと思ってくださった企業の方に支えられています。

特に大変なのが海外公演です。依頼は多いのですが費用はほぼ実費で、太鼓の重量が超過すると追加料金もかかります。フランス公演のときは、一人あたり大きな費用負担があり、ようやく行くことができました。旅行会社などから海外公演の機会をいただくこともあります。こうした場面で支援をいただけたら、もっと多くのイベントへ行きやすくなると感じています。

 

——スローガン「気炎万丈」に込めた思いを教えてください。

 

「気炎万丈」は、燃え上がるように意気盛んなさまを表す言葉で、現在のスローガンとして掲げています。和太鼓は、自分たちが熱くなければ相手に熱意が伝わらない楽器です。だからこそ、他の人を圧倒するくらいの情熱を前面に出していこうという思いを込めました。

きっかけは、部の中にとても情熱的な部員がいることです。自分が忙しくても、外部団体の演奏機会やオーディションがあれば迷わず応募して挑戦する、太鼓に本気の部員です。その姿を見ていると、自分たちも情熱を持って頑張ろうと思えます。

誰かが先導するというより、全員がその熱意を持とう、という意味を込めました。スローガンは毎年、その代によって変わります。

 

——和太鼓を通して学んだことは何ですか?

 

いちばん学んだのは、人の優しさです。私は県外から一人で引っ越してきて、人と話すのも得意ではなく、何をするにも一歩を踏み出せない状況でした。

そんなときに和太鼓部に入ると、周りの方が優しく太鼓を教えてくださり、私の人間性も認めてくれました。そこから、自分が部を代表する存在になるという気持ちで頑張れるようになりました。

企業や団体の方と打ち合わせをすると、「お客さんの笑顔を見たいから呼びました」と言ってくださる方が多いです。人を喜ばせたいという優しさを持つ方に呼んでいただき、それにきちんと応えると、自分たちも、観客の方も、依頼してくださった方も喜べる時間になります。

だからこそ、受けた優しさは演奏で返すものだと思っています。一打ごとに思いを込めて、手を抜かずに演奏することが、私にとっての恩返しです。

 

 

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。

 

いつも応援してくださり、ありがとうございます。皆さんの応援が、私たちの演奏の何よりの励みです。

引退公演「流風和奏」は毎年入場者が増えていて、収容人数を上回るほど多くの方に来場いただき、立ち見が出るほどでした。地域の関係者の方や、他の団体で太鼓をやっている方々も見に来てくださり、多くの方に認めていただけたことがとてもうれしいです。

ぜひ一度、現地で私たちの演奏を見に来てください。映像では伝わらない迫力を感じてもらえるはずです。

そして、和太鼓に興味がある学生の方へ。私は未経験で、仲間がほしいという気持ちだけで入部しました。それでも今は部長を務めています。私たちの部は学年を越えて話しやすい、和気あいあいとした雰囲気です。少しでも気になったら、まず体験に来てみてください。