株式会社Wellt

株式会社Welltは2024年4月に創業した会社です。「ウェルネス×〇〇を溶け合わせ、心身ともに満たされる価値を創造」しています。代表取締役の内田直生さんに、詳しい事業内容やこの事業に取り組むにあたっての思い、今後の展開などについてうかがいました。

 

 

 

――起業のきっかけを教えてください。

 

大学を卒業後に理学療法士として病院に就職しましたが、もともと「個人でやっていきたい」という思いを持っていました。1年勤めたあとに独立し、個人事業主として8年間、人の健康や病気・けがの予防というテーマでさまざまなクライアント様に向き合ってきました。

8年間個人で仕事を受けていたのですが、大きいアーティストの事務所のトレーナーとしての専属契約が決まり、自らも「ウェルネス」を旗印として立ててやっていかないと、ビジネス的にも太刀打ちできないと感じ、24年4月に「Wellt」を設立しました。

社名はWellnessとmelt(とろける)をかけ合わせた造語になります。Meltにはやわらぐ、うっとりさせる、時代に溶け込む、といった意味を込めました。

25年8月時点では社員は私1人で、プロジェクトによってさまざまなプロフェッショナルを業務委託としてアサインする「ギルド型組織」として運営しています。

 

――「ウェルネス」というとさまざまな意味があるかと思いますが、御社の考える「ウェルネス」とはどのようなものでしょうか。

 

ざっくりと言ってしまうと、どの瞬間もウェルネスになりえる、広義の意味を持った言葉です。

WHO(世界保健機構)が定義する「ウェルビーイング」には、「身体的、精神的、社会的に満たされた状態であること」とありますが、私も非常にこの状態が大切だと考えています。私自身が理学療法士であるため、身体的な面に重きを置かれがちなところもありますが、身体面(フィジカル)のみならず、メンタル、ソーシャルにおいてのウェルネスのすべてを考えていきたいと思っています。

 

――「ソーシャルにおいてのウェルネス」とはどんなものがありますか。

 

多くの人に身近なものとして例を上げると「働き方」があります。人それぞれ、自分が心地よい働き方というのはあると思います。例えば思いっきり働きたい、ハードワークをしたい人だったら、ハードワークしたいことはリスペクト、尊重した上で、「どうしたらハードワーク出来る」環境を作ることが大事です。

 

僕は『五体不満足』の乙武洋匡さんが、義足を履いて歩くプロジェクトにも関わりました。彼はたまたま生まれつき手足がないだけで、車椅子で移動されています。仮に二足歩行で歩きたいと彼が思った時、歩けないのは社会構造の責任ではないかと。歩ける義足、歩ける道路など、そこを歩ける環境にしてあげることも、まさにソーシャルウェルネスの考え方なのではないかと思います。

これを考えていくと、産業衛生や社会福祉の領域ともクロスすることが多々あります。当社のクライアント様だと、オフィスの内装や高機能ワークチェアの販売をされている会社さんもいらっしゃいますが、これもソーシャルウェルネスの領域になります。

 

――「ウェルネス」とは、それぞれがいい状態であるための全般的なことということですね。

 

そのとおりです。一人ひとり、自分にとっての“凪”の状態はそれぞれです。最小単位である1人から、世界まで、全員が自分の中での「これ」が見つかる状態を少しでも作っていくことがWelltのビジョンになります。

 

――現在展開している主なサービスについて教えてください。

 

現在は主に「ウェルネスプロデュース事業」「トレーナー事業」「コミュニティ事業」の3つを展開しています。特に力を入れているのが「ウェルネスプロデュース事業」と「トレーナー事業」です。

「ウェルネスプロデュース事業」は、Welltが持つウェルネスの専門知識とビジネス開発の知見を融合させ、企業の中に入って事業の創出、成長、収益性の向上を支援するサービスです。

例えば、世の中にはすでにウェルネスを作ろうとしている企業がたくさんあります。しかし、いいものを持っていてもなかなか消費者に届けられていないということも多い。そこで弊社が課題をヒアリングして、問題解決に適した専門家をアサインします。そもそもどんな層をターゲットにするかという企画策定から、カスタマーサクセス、ブランディングなどにも入っていきます。

また、医師や理学療法士などウェルネスに関わる専門家もたくさんいます。しかしそのような方は、まだまだビジネスサイドには少ないのが現状です。当社は多くの専門家とのつながりがあり、ここにビジネスチャンスがあると考えています。

 

「トレーナー事業」では、企業向けの福利厚生として、トレーナーの派遣を行うこともあります。またアーティストの事務所と契約してツアーへの帯同、通常時のボディケアやトレーニングなども行っています。

トレーナーは弊社の独自審査をクリアした方のみをアサインしています。理学療法士、柔道整復師、鍼灸師、管理栄養士、公認心理師などの資格を持っている方もおり、日本全国での対応が可能です。

 

――貴社の社風や文化、働くうえで大切にしていることは何ですか?

 

現在は社員が私1人、その他がプロフェッショナルな専門家の集まりというコミュニティ的組織だからこそ、価値観の共有は非常に大切だと考えています。

働くうえで大事にしている価値観(バリュー)は、「自由」「創造」「熱狂」「成果」「言葉」の5つです。また、オーナーシップ・積極性をもって仕事にあたる姿勢、「仕事の速さ>量>質」という考え方を持って取り組んでいます。

高い専門性を持つ人であればあるほど、どうしても質を求め、作り込みに時間をかけすぎる方が多いです。ですが実際にビジネスをしていくと、作ったものを顧客にぶつけてみないとわからないということが多々あります。早く顧客にぶつけて、返ってくるフィードバックでさらに精度高くサービスを磨いていく。「まずは1回やってみようよ!」という考えを持って仕事に取り組んでほしいと思っています。

 

 

――ウェルネスをメインに取り組んでいく中で、感じている課題などはありますか。

 

私は、ウェルネス業界の他の企業のことを「競合」とは思っていません。人の健康をテーマにしているのに、競合しているからこそ過度に嘘をついたり、売りたくないものを売ったりしている現状があることが、非常にもったいないと感じています。

特に医療の業界は特殊な世界で、情報が分断されがちです。本当に見るべきはエンドユーザーであり、ソーシャルウェルネスを実現していくことが最も重要です。Welltはシナプスのように潤滑剤になり、良いものと良いものをつなげていく、溶け合わせていく役割ができればと考えています。

 

――今後の展開について教えてください。

 

まだ創業間もない企業ですので、なんでもやっていきたいと思っています。ありがたいことにたくさんの案件をいただいており、まだまだ仲間を増やしていきたいと考えています。

まだ学生の新卒採用をする段階ではありませんが、当社でイベントプロデュース事業も行っており、スポーツや健康に興味のある学生にイベントスタッフという形で参画してもらえたらと考えています。

 

――最後に、学生に向けてのメッセージをお願いします。

 

それぞれ現在いろんな思いを持って活動したり、やりたいことを考えていると思うんですが、興味があったり少しでも「やってみたいな」と思ったら、早くやってみる、聞いてみる、体験してみたほうがいいと思います。

現代はネットが発達し、スマホの中だけで完結したような、わかった気持ちになってしまうことも多いと思うんです。ですが私は、自分で体験した一次情報に勝るものはないと考えています。その部分を意識してもらえると、よりよい経験や活動ができるのではないかなと思っています。どんどん動いてみてください。

 

内田直生

株式会社Wellt代表取締役 理学療法士

総合病院、整形外科クリニックのリハビリテーション科での勤務を経て独立。病院時代は15,000人以上のクライアントを担当。その後、独立し、子どもから大人、ビジネスパーソンからアーティストまで多岐にわたる運動指導・企業の健康サポート・講師活動を行う。登録会員数78万人のライブ動画学習サービスSchooでのシリーズ授業をはじめ、セミナー実績は300回を超える。ARゆるスポーツ 監修。また、書籍『五体不満足』の乙武洋匡氏が義足をつけて歩く「OTOTAKE PROJECT」に専属理学療法士(ソニーコンピュータサイエンス研究所、非常勤研究員。)として参画。